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へちょんへちょんの特別なモスバーガー

日曜日。
昼前に「今からちょっと行くから」
と、母から電話があり、その30分後に、
母が小さな茶色の紙袋を持って、
嬉しそうに現れた。
モスバーガーの袋だ。

「boy(16歳息子)ちゃん、棚ぼた棚ぼた」

と、二階で寝ていたboyを大きな声で呼ぶ。
降りてきたboyは、はい、と渡された紙袋を
開けて、

「おおお、すげ、モスバーガー」

と言った。
ちょっと面食らってはいた。
なぜなら。中には二つの、完全に冷めきった
べチョンベチョンでへちょんへちょんの
ハンバーガーが2つ、入っていたのだ。

だけどモスバーガーをみて、
おおお
となるのは、近くにモスバーガーがないから
である。7.8年くらい前までは、
車で30分行った所に、一店舗あったのだが、
潰れたのだ。

そういえば、父母は、前日の土曜日、
となりの県に日帰り旅行に行くと言っていた。
これは、土曜日に、となりの県で買った
モスバーガー。お土産なのだ。

ハンバーガー、という食べ物は、
食べたいね、ってなって、買ったら、
すぐにその店内で食べるか、
テイクアウトにするにしても、遅くても
その1時間後には家で食べ終わっている
ようなもんで、
何時間も後に食べるものではないような
きがする。
だから、県外で前日に買ったモスバーガーに
ちょっとびっくりしてしまったのだ。

だけど、これは特別なモスバーガーなのだ、
という事をわたしは知っている。
父母がこれを買った店は、わたしの
妹がアルバイトしていたモスバーガーなのだ。

隣の県の大学に、妹は進学した。
うちはまじでお金が無いにも関わらず、
わたしも、妹も、大学に進学した。
仕送りをもらっていなかったから、
わたしは大学に通いながら、よく働いた。
たぶん妹もそうだったと思う。

妹が20歳の頃、わたしは30歳で、
子育てに大変な頃だったから、
妹がどんな学生生活を送っていたかは
よく知らないし、遊びに行ったこともないけど
母から、
妹はモスバーガーで、社員みたいな働きっぷりで、卒業したらそのまま就職してほしいと
言われているらしい
と聞いていた。

モスバーガーの店舗展開をよく知らないが、
フランチャイズみたいな、コンビニみたいな
感じなのだろうか。
妹の働いていた店は、割とご年配のご夫婦が
切り盛りするお店だった。母はよく、

モスバーガーのご夫婦に、
めちゃくちゃお世話になっているんだ

と言い、妹の所に行ったら必ず挨拶に行き、
また地元から、特産品などを送っていた。
モス夫婦は、働きながら勉強している妹を、
実の子供みたいに、
可愛がってくれていたんだと思う。

妹が卒業した後も、母は、たびたび、
特産品を送っていたようだった。
そして今でも関係が続いている。
どんだけ義理堅いのだ。
妹はもう36歳だぞ。

母から、土曜日に父母とモス夫婦との
4人で撮った写真が送られてきたので、

偉いね、ずっと関係を続けてて

と返すと、

当の本人(妹)はなしのつぶてで、困ったもんだ

と、返ってきた。
当たり前と言えば当たり前だ。
15年も経ち、妹は家族を持って、遠い場所に
住んでいるのだから。

そういえば、父母は昔、
わたしのバイト先にも挨拶に来てくれた。
そして店のマスターに、
特産品を送ってくれていた。
いつもお世話になってます、と、
ペコペコと頭を下げる父母を思い出す。

わたしも親になり、子どもが初めて
アルバイトをして、人さまからお金を頂く
ようになった時、何かひとつ、親としての
仕事を終えたような、
ああ、やっとここまで来ましたか、
というような気持ちになった。

自分が働いて、お金をもらったときより、
自分の子どもが働いて、お金をもらったとき
のほうが、ずしっときた。
ちゃんとやれているのだろうか。
迷惑かけてないだろうか。
って、いつもちょっと心配している。
親ってそういうもんなんだな。

わたしも来月、babyちゃん(18歳娘)
のバイト先に挨拶に行こうかな。
おいしい果物でも持って。




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