MAW 袋井・磐田 にしたな まとめ Keijiro Suzuki / 鈴木啓二朗
10月24日(金)から始まったMAW 袋井・磐田での旅人としての滞在が、昨日10月30日(木)に終了しました。その前日、10月29日(水)の夕方には茶会、意見交換会、送別会が開催されました。6泊7日という短期間は多くの発見や出会い、気づきや学びなど、とても目まぐるしくエキサイティングな日々になりました。実際のところ、振り返ってまとめられるほど、頭の中が整理できていませんが、この段階で少なくとも備忘録のように書き記してみたいと思います。
滞在前
私は愛知県名古屋市で生まれ育ちましたので、静岡県に関してはかなり親しみがある方だと思っていましたが、改めて袋井市や磐田市の場所、特産、地形、文化、産業については知識が乏しいことに気づきました。土地勘も人的なネットワークもありませんでした。なので、インターネットでの検索やホストの森下さん(お茶の栽培、加工販売を手掛ける「にしたな株式会社」)やコーディネーションをしてくださった岡部さん(日本茶プロデューサー)とのオンライン・ミーティングから現地のことを知るくらいしか把握できていませんでした。地域や関係者から大きなテーマとして、日本茶が軸になってくるのは当然のことでしたが、それでも自分なりの興味や目的もありましたので、「湧き水」や「磐座」をキーワードに、現在住んでいる山口市移住後にしったスコットランドのパトリック・ゲデスの「Valley Section」という考え方を参考に山から平地そして海へといった高低差を楽しもうを考えていました。そういうこともあり宿泊場所は毎日違うところを選びました。
宿泊場所
1日目 くれたけイン プレミアム 袋井駅前
2日目 磐田パークホテル
3日目 和みの宿 藍咲
4日目 リバウッドリゾート
5日目 丸源旅館
6日目 ホテル観世
7日目 チェックアウト
旅人達
同地域に配属された旅人には静岡市拠点でフルーティスト古川はるなさんと福岡県出身で新潟県長岡拠点で鍛金作家の光延咲良さん。
現代美術作家/アートマネージャーの私としては、分野も拠点も全く違うお二人のおかげで、地域を見る視点の幅がかなり広がりました。特に音楽分野について無知な私にとっては、古川さんの視点、知見、用語、感性など、とても新鮮で、滞在中の自分の視点を広げてくださったと思います。
また、金属製の茶器や福岡の地域文化についてよく知られている光延さんからは工芸や海についての彼女の造詣や関心と私の知見も重なるところがあり、旅先のポイントを選定する際にとても参考になりました。
滞在中はこういった共通の興味もあり、LINEでメッセージを取り合うことはできる状態ではありましたが、同じ目的地に全ての旅人が行ったところもありました。各々の目的もあり、みなさん車で参加していたこともあり、広範囲にリサーチを進めていきました。
県内と県外他地域の旅人の組み合わせはとてもありがたかったです。
旅程
私のリサーチに関しては、最終的な訪問先やアクティビティーは以下の通りです。
1日目 10月24日(金)
柳井市役所(市役所職員さんから地域に関するプレゼン)、さわやか(炭焼きハンバーグランチ)、BIRDS coworking space、袋井茶文化資料館、袋井市月見の里学遊館(施設見学)、にしたな(お茶一服、工場見学)、料理千(歓迎会)、くれたけイン プレミアム 袋井駅前(宿泊)
2日目 10月25日(土)
法多山尊永寺、袋井市郷土資料館、エコパアリーナ(World Cup 2002開催時に設置されたパブリックアート見学)、どまんなかお茶屋、さわやかアリーナ袋井市総合体育館(施設見学)、可睡斎(出世六の字穴)、油山寺、袋井温泉 和の湯(やわらぎのゆ)、磐田パークホテル
(宿泊)
3日目 10月26日(日)
中泉歴史公園(公園美化活動や地域の歴史を住民の方に伺う)、磐田市香りの博物館(香りの調香)、hygge(レストラン)、浜松市秋野不矩美術館、浜名梱包輸送シルクロード・ミュージアム、磐田市新造形創造館(ガラス体験できず…)、和みの宿 藍咲(宿泊)
4日目 10月27日(月)
千寿酒造(地下水について相談)、にしたな茶畑見学、小國神社、奥磐戸神社(小國神社奥之宮)、曲尾の清水(途中工事で到達できず)、日月神社の湧き水(湧き水採取)、天宮神社(なぎの葉入手)、菓匠 あさおか(梅衣、エンガディーナトルテ、栗茶巾購入)リバウッドリゾート(宿泊)
5日目 10月28日(火)
獅子ヶ鼻公園、さわやかアリーナ(ワークアウト&空飛ぶペダル体験)、おせんや食堂(釜揚げしらす定食)、福田漁港、うみてらすDORI、竜洋郷土資料館、磐田市埋蔵文化財センター、YAMAHA Communication Plaza、にしたなサウナ、丸源旅館(宿泊)
6日目 10月29日(水)
福田漁港(しらす漁船出港見学)、千寿酒造(地下水を汲ませていただく)、福田漁港、渚の交流館(生しらす丼!)、浅羽海岸(Drone)、外人墓地、弥之助地蔵、竜洋海洋公園(しおさいの湯、メンテナンスのため温泉入れず)、見付天神、茶会、意見交換会、送別会(てんみにて)、ホテル観世(宿泊)
7日目 10月30日(木)
チェックアウト
地域の印象
Micro Art Workationということで比重をアートの視点にして見てみると、地域のアートやアートコミュニティーの印象を受けるところはあまり感じられませんでした。3日目にようやく磐田市新造形創造館の存在を知って、アートやクリエイティビティーに触れられた実感があります。美術館やギャラリー、芸大など、一般的にわかりやすいものをアートと捉えていくと上述のような印象になってしまいますが、生活者の創造性に目を向ければ至る所にアートはあったと思います。
例えば、袋井市も磐田市も隣の森町もどこも人口の割にお祭りがとても盛んな印象を受けました。お祭りは日常ではないですが、生活者では気づかない審美的なものが詰め込まれた芸術の結晶だと思います。この地域は屋台と呼ばれる山車であったり、囃子であったり、それらに関連する装飾や物語、身体的な動作など。滞在期間中に見ることはできませんでしたが、お話を伺ったり、アーカイブを触れた印象から、そういったことはすぐに伝わってきました。
また、お茶畑もそうですが、稲作、メロンなどの農家さん、シラス漁業の漁師さん、土木や輸送、YAMAHAをはじめ産業の盛んな地域でもあり、ものづくりや農作業も含めチームワークが重要な人の繋がりを感じました。
これは広げて解釈していくと、ジュビロ磐田のようなサッカーチームであったり、ラグビーやバスケのチームであったりと、スポーツや身体的な活動をを愛する住民を象徴しているようにも思いました。実際に、磐田市の宣言の中には文化交流ではなく、スポーツ交流推進を宣言するものもありました。
また、由緒のある神社仏閣や古墳や遺跡などの存在も現在から過去を捉え、想像を膨らませるにはとても充実した数々なのではないかと思います。それらの地域にある博物館や郷土資料館などの展示からそれぞれの地域の歴史や生活を知ることもできました。
そして、森町に行けば山々の風景、平地であれば田んぼや茶畑と開けた大空、福田海岸や浅羽海岸へ行けば太平洋の広い海といった風景の美しさもこの地域の魅力的なものだと思いました。
私たち旅人の視線を通して地域を顧みる機会によって、地域資源や地域の魅力、また、生活の中に溶け込んだ審美的なものを住民の方と再発見するきっかけが生まれたと思います。
アイデア
滞在期間中に思いついたアイデアがいくつかありますが、訪れたそれぞれの場所や出会ったアイテム、物語を活用し、地域の人々とコラボしつつ、地域についての学びを深めるような映画制作ができたら楽しいだろうなと思いました。お茶、シラス、YAMAHA、サッカーなど、色々とそれぞれの象徴的なシーンや重層的な解釈を要するシーンなどを日常や非日常の音色と重ねたプロセス重視の映画制作です。
茶会&意見交換会
コーディネーターの岡部さんのご提案で即興的に実現した茶会ですが、にしたなさんの茶工場内にそれぞれの旅人が持ち寄った物品でお茶会ができました。私は千寿酒造の仕込み水である地下水、古川さんは森町の梅衣と笛の曲の奉納、光延さんはご自分で持ち寄った鍛金でできた茶托や光延さんの地域で受け継がれてきた茶托の数々。稼働中のお茶工場の機械音をBGMに、岡部さんがホストとなってカジュアルで実験的な茶会が実現しました。これはなかなか面白いもので、今回のこの地域のMAW旅人を象徴するものだと思います。
この体験も含め、主催者のアーツカウンシルしずおかの若菜さんと課長を含め、今回の滞在を振り返りました。
意見交換会でも話しきれないくらい色々なポイントがありましたので、こちらで詳細を書き記すことは難しいのですが、大まかに私からはとても良い企画であったこと、6泊7日は何かプロジェクトを始めるためのリサーチやきっかけになりえたこと、表面的なリサーチまでしか実現できなかったので、もし何か形にするためには第二フェーズ、そして、第三フェーズといったように再訪の機会と深掘りする時間が必要なこと、その際には主催者、地域のホストやコーディネーターの存在が地域住民からの同意を得る際にとても重要なことなどを伝えました。今回の体験や得られた知見などを何か形にするには、今後アーティスト・イン・レジデンスができると最良ではないかともお伝えしました。
課題とまとめ
最後に意見交換会の後半では主催者やホストの視線もお聞きすることができました。主催者、ホスト、旅人と三者三様の目的や目論見があったことも明確に実感できました。実は最後の最後でようやくスタート地点に経った気がしました。滞在期間中、各旅人のこれまでの活動や知見などをもっと知りたかったのですが、それぞれがリサーチに足繁く出かけて行ったこと、ホストのにしたなさんのお茶の収穫や加工の作業が繁忙期(かつ天候に左右される)であったこと、またコーディネーターの岡部さんもご自分の仕事がいそがしかったことなど、今回の期間中ではこぼれ落ちてしまった印象です。とはいえ、私自身がレジデンス・コーディネーターをしてきた経験から、事前にプログラムを組みすぎたり、受け入れ側によるご厚意が時にはゲスト(旅人)をある方向に誘導しすぎてしまったりと思いがけない発見の機会を逃してしまう可能性もあるので、このあたりのバランスは難しいところと実感しています。
とはいえ、主催者のアーツカウンシルしずおかの課長さんもおっしゃられていましたが、まずは地域をしってもらうという目的はしっかりと果たせたのではないでしょうか。そして、三者三様の視点や感性で得られた情報もそれぞれの発信の仕方で各旅人の周辺コミュニティーへ伝わっても行っていることと思います。
今回の参加はとても良い体験となりました。今後もご縁があることを切望しております!
^_^
