バイオ内装材に混ぜ込まれたエシャロット
冬のドイツ、地方都市の湿った石畳。日本から来たとある音楽留学生の前に、聞かされていたアウディではなくレクサスRXが止まった。車から降りた背の高い白髪の青年はハグをしてから「アウディに乗ってたんだけど、鼻がムズムズするのがバイオ内装材に混ぜ込まれたエシャロットのせいだと分かってこれに乗り換えたんだ。型落ちで安かったしね。」居候先の先生のアパートへ向かいながら、今年のコンクール結果への愚痴や、ヴァイオリンの先生をしながら数少なくなった吸血貴族家系の当主として何とか切り盛りしているとかを、暖房の効いた暖かい助手席でボーっとのぼせながら聞く。
