ランダムなパズルピース

「源氏物語の柏木は、豊饒の海の松枝清顕に似ている」
ロンドン-東京便の航宙機の中で、美しいエメラルド色の大気光が揺らめく成層圏を窓から眺めながら彼はふと思った。
「柏木の早逝、薫はその生まれ変わりとも取れる。衰弱の描写も通じるところがあったような」
それまでの思考にも彼の仕事にも何ら関連のない、昔に読んだ時期も十数年異なる物語だが、いつのまにか嵌っていたランダムなパズルピースとして脈絡なく頭に浮かんだ、その小さな神秘を彼はしばらく楽しんだ。


いいなと思ったら応援しよう!