時給1100円と、鮨の向こうに見えた世界

高校を卒業して、3月。私は人生で初めてのバイトを始めた。
場所は、ちょっと背伸びしたような高級寿司屋。
最初の給料日は、なんだか不思議な気持ちだった。あ、私、ついに自分でお金を稼いだんだ、って。子どもの頃にもらったお小遣いやお年玉と違って、「自分の時間と労力」と引き換えに得たお金。財布に入れた瞬間、その重みが少し違って感じた。

けど、働いていると、もっと不思議な気持ちになる。
お店には、いつも決まって来るお金持ちのおじさんがいた。腕時計ひとつで私の大学の学費が全部払えちゃう!ってレベルの人。その隣には、モデルみたいに綺麗な若い女性。二人で笑いながら、特上の握りを注文する。「この人たち、一体どんな世界に住んでるんだろう?」って、つい思ってしまう。

その人たちの会話や空気感を見てると、自分がいる場所とはまるで別世界。
「階層」って言葉が、ふっと頭をよぎった。そんなこと、考えたこともなかったのに。

スマホを開けば、InstagramにはPR投稿で何万も稼ぐ同世代。企業から送られてきたコスメを片手に、笑顔でポーズをとってる。その写真1枚のギャラが、私のバイト数日分だったりする。

時給1100円で働く意味って、なんなんだろう?
もちろん、無意味なんて思ってない。むしろ、自分で稼いだそのお金には、手触りがある気がして好き。でも、世の中にはこんなにたくさん「別の稼ぎ方」があるんだ、ってことを初めて実感した。

そんな私が、初任給で買おうと思ったのは、シャネルのネイル。
特別高いものじゃないけど、ずっと憧れていたブランドだった。
いつもだったら「高いからやめよう」って思っていたけど、この時は違った。「私が働いて得たお金で買う、自分への小さなごほうび」だから。実際に塗ってみたら、指先を眺めるだけでちょっと気分が上がった。高級寿司屋で見たような煌びやかさとは、比べ物にならないかもしれない。
でも私は、自分のペースで、ちゃんとお金と向き合ってみたいと思った。
きっと、どんな稼ぎ方にもそれぞれの意味がある。SNSで映えるやり方も、鮨を運ぶ働き方も。

私にとっての「はじめてのお金」は、そんな風に社会のいろんな面を見せてくれた。そしてちょっとだけ、自分のことが好きになれるきっかけにもなった。


#はじめてのお金

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