「化粧しなくても可愛い」は褒め言葉だと思っていた–初めて本でメイクを学んだ話
ある日書店に行き、いつものように漫画コーナーに向かおうとすると、なぜかその日は美容系コーナーで足が止まったんです。
目の前にあったのは『メイクがなんとなく変なので友達の美容部員にコツを全部聞いてみた』というタイトルの本でした。
このときは、この本がきっかけで、夫の数年来の悩みを聞くことになるとは思いませんでした。
メイクがなんとなく変なので友達の美容部員にコツを全部聞いてみた
タイトルの通り、この本は、いままで自己流でなんとなくメイクをしていたという著者が、美容に詳しい友達にメイクの基本を教えてもらうという内容です。
ベースの塗り方、ハイライトやチークの効果的な付け方などが「なぜそうするといいのか」という理由付きで、漫画形式で分かりやすく説明されています。
本が気になったとはいえ、自分のメイク方法に悩んでいたわけではありませんでした。
その頃、数年お付き合いをした夫と結婚して約1年経ち、生活に慣れ、心に余裕が出てきて「一応ちゃんと知っておくか」という気持ちにでもなったのだと思います。
大学生の頃から10年ほど化粧をしてきたんだから大丈夫だろうけれど、まぁ参考程度に読んでみるか、と。
さっそく買って夕飯前に読み始めてみたところ、知らないことばかりでした。
例えばハイライトは、光が良くあたる頬の高い位置や鼻の筋などに付ける。光が当たる場所がきれいに見えると、肌全体がきれいに見える。
なるほどなぁ。
絵と同じで、モノや景色の陰影にこだわると。立体的にキレイに見えるんやなぁ。
え、チークは頬骨のあたりに載せる。
頬のお肉の部分に乗せると子供っぽく垢ぬけない印象に、だと。
いままでほっぺにモリモリ乗せてたぞ・・・。
眉の整え方、リップの塗り方、などひとつひとつの「こうするといいよ!」を見ていると、試したくなってしまいました。
そこでさっそく次の日、外出する前に本を横に置き、書かれていた通りにメイクをしてみました。
いきなり全部はできないので、まずはベース、ハイライト、チーク、リップあたりを本に書かれてい?通りに付けてみます。
まず、顔の明るい場所にハイライトを付けてみると「本当だ!なんだかシュッとして見える」。
三十路にもなって年確されることもある自分の童顔が大人っぽく、見た目年齢プラス5歳くらいに見えました。
さらにチークを頬の高い位置にうっすら、ブラシを使ってふわっと乗せてみます。
仕上げに唇の輪郭を少しはっきり見えるようにリップを重ねたら完成。
薄化粧なのにきちんとしている感はあって、普段よりも大人っぽい見た目になりました。
こりゃいいぞ!と思い、リビングにいた夫を「おーーい、来て来て」と洗面台に呼びました。
すると夫は、洗面台に立つ私の顔を見て、叫びました。
「おみどはん!いい!いいやん、美人さんやん~~~!!」
くるしゅうない。
そんなに良きものか。
やってみた甲斐があったな。
私は夫の反応を見て十分満足していましたが、夫はまだ興奮冷めやらず、
「いい!いい!!
化粧しても可愛いやんか。
おみどはん、化粧うまくなったんやなぁ~~。
あぁぁよかった。」
と、握手しかねない勢いでずっと褒め、そのまま崩れ落ちていきました。
うむ。くるしゅうない。
ほんで、「よかった」ってなんや?
「よかったって、何?」と聞くと、床に落ち肉塊となった夫がモゴモゴ言います。
「おみどはんが、ずっと、こう、いままでの感じのお化粧やとどうしようかと・・・」
実は前から、私の化粧が下手過ぎることにびっくりし、悩んでいたのだとか。
ただ「化粧が下手かも」なんていうと傷つけてしまいそう。
いままでずっとその方法でやってきたのを、今さら自分が否定するべきではないのではと。
「いつから思ってたん?」
「初めて会ったときから。」
「最初はどう思ったん?」
「・・・・・・ゴリラの赤ちゃん。」
私と夫はフルリモートワークの会社で出会ったので、初めて対面で出会うまではオンライン会議上、二次元でしか会ったことがありませんでした。
在宅勤務ですっぴんでオンライン会議に出ていた私を画面越しに見て、夫は私のことを「身長160cmくらいの、しゅっとした人」だと思っていたそうです。
それが実際に会ってみると、夫の目の前にいたのは身長150cmのゴリラの赤ちゃんでした。
でも、実はゴリラの赤ちゃんは、頑張っていたのです。
付き合う前の夫と会う前に、精いっぱい自分を可愛く見せたくてせっせと顔に色んなものを塗りたくっていました。
まさかすっぴんよりも、メイクをしているほうが酷くなっているとは夢にも思わずに。
結果的に、無邪気に相手をマッチングアプリの写真詐欺状態に陥れていたのでした。
夫は、一緒に生活するうえで言うべきことは、きちんと言ってくれる人です。
しかしそんな夫でも、女性にとってセンシティブであろう化粧にとっては、結婚しても何も言い出せなかった。
そして「化粧に関しては諦め」、何も言わずにこの数年間一緒にとなりを歩いてくれていたのです。
そういえば初めて「可愛い」と言われたのは、すっぴんを見られた時だったな。
うへへうへへ。
…そのあとも、よく「化粧しなくても可愛い」とよく言われていたな。
「化粧しないほうが可愛い」と言いたいのを夫が我慢していることに気づかずに、「すっぴんが可愛いってこと?!」と無邪気に自分は喜んでいたのか。
夫よ、可能性を信じて猿人類と結婚してくれてありがとう。
著者のおふたり、あの本を書いてくださってありがとうございます。
おかげさまで、私は無事、ヒトに進化できました。
なんとなくチークをほっぺにグリグリモリモリ乗せている方。
大学生のときからメイクの仕方が変わらない方。
あなたのメイクは、きっとあなたに合っています。
ですが、念のため、漫画でさらっとメイクについて学んでみませんか。ね。もっと可愛くなっちゃうかもしれませんよ。
そして、奥様の化粧に悩む、世の男性の皆様。
さりげなく、そして根気強く、書店の美容系エリアの前を奥様と一緒に歩いてみてはいかがでしょうか。
そうしたらいつか、『メイクがなんとなく変なので友達の美容部員にコツを全部聞いてみた』に奥様が気になるそぶりを見せるかもしれません。
そこで、本を薦めたい気持ちをぐっとこらえるのです。
奥様がご自分で本を手に取ったら、きっと明日からあなたの悩みは晴れましょう。
ご武運をお祈りしています。
