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「助けて」と言えない人は、学びの場でも言えない。医療福祉従事者にグループ学習が必要な理由

「医師に、分からないことを質問できない」

「忙しそうな同僚に、“助けて”と言えない」

「カンファレンスで本音を話せない」

医療福祉の現場では、人間関係について悩む場面がたくさんあります。

そんなとき、本を読んだり、研修を受けたりして、

「分からないときは質問しましょう」
「一人で抱え込まずに相談しましょう」

と学ぶことはできます。

けれど、頭では分かっているのに、実際の場面になると言えない。

そんな経験はありませんか?

それは、あなたの意志が弱いからではありません。

人との関わり方は、知識を得ただけでは、なかなか変わらないからです。

日常の人間関係は、学びの場でも再現される

「日常で困っていることは、セラピーの場でも再現される」

この考え方を大切にしているのが、FAP(機能分析心理療法)という心理療法です。

たとえば、職場で本音を言えない人は、カウンセラーの前でも本音を言えないかもしれません。

頼まれると断れない人は、「無理をしていませんか?」と聞かれても、つい、

「大丈夫です」

と答えてしまうでしょう。

そこでFAPでは、過去の出来事を振り返るだけではなく、今、その場で起きていることに注目します。

「本当は困っているのに、大丈夫と言ってしまった」

その瞬間に気づき、いつもとは違う言葉を選んでみる。

現実の人間関係に近い“生きた場面”の中で、新しい関わり方を練習していくのです。

FAPでは、次の3つが大切にされています。

  • Awareness:今、何が起きているのかに気づく

  • Courage:勇気を出して、いつもとは違う行動をしてみる

  • Love:相手の勇気を、深い思いやりをもって受け止める

本音を話すために必要なのは、話し方のテクニックだけではありません。

「ここなら話しても大丈夫」

そう思える関係性が必要なのです。

グループの中には「小さな職場」が現れる

日本メンタルコーチ協会では、医療福祉従事者の皆さんに、主にグループで学んでいただいています。

なぜなら、医療福祉従事者が抱える悩みの多くは、人との関係の中で起きているからです。

患者さんや利用者さんとの関係。
医師や上司との関係。
同僚や部下との関係。
そして、家族との関係。

一人で本を読んでいるときには現れなかった、その人らしい“関わり方の癖”が、グループの中では自然に現れます。

職場で本音を言えない人は、学びの場でも本音を言えない。

人に頼れない人は、グループの中でも一人で頑張ろうとする。

間違えることが怖い人は、答えが浮かんでも発言をためらう。

だからこそ、その瞬間が大切なのです。

安心できる場で、

「本当は、分からなくて困っています」

「実は、助けてほしいです」

「私は少し違う意見を持っています」

と、いつもとは違う言葉を出してみる。

そして、その言葉を誰かに否定されず、温かく受け止めてもらう。

この小さな体験が、職場で新しい一歩を踏み出す力になります。

私たちのグループ学習には、FAPと共通する「生きた関係の中で学ぶ」という構造があるのです。

「悩んでいるのは私だけじゃなかった」

グループで学ぶことには、もう一つ大きな意味があります。

それは、ほかの人の話を聞き、

「こんなことで悩んでいるのは、私だけじゃなかったんだ」

と気づけることです。

医療福祉従事者は、苦しいときほど自分を責めてしまうことがあります。

「もっと上手に対応できたはず」

「周りはできているのに、私だけできない」

「こんなことでつらいと思う私は、弱いのかもしれない」

しかし、グループの中で同じような悩みを聞くと、それまで自分だけに向けていた厳しい視線が、少しずつやわらいでいきます。

集団心理療法では、これを「普遍性の体験」といいます。

「私だけではなかった」と分かることは、自己批判や共感疲労で傷ついた心を立て直す、大切な力になるのです。

心理的安全性は、知識ではなく「体験」から育つ

私は、安全性にはいくつかの層があると考えています。

まず、体が緊張せずにいられること。

次に、自分の感情を否定せずに受け止められること。

そして、人との関係の中で安心して本音を話せること。

さらに、チームや組織の中で、質問や相談、異なる意見を伝えられること。

こうした安全性は、「心理的安全性とは何か」を学ぶだけでは身につきません。

安心して話し、それを受け止めてもらう。

誰かの本音を聞き、それを否定せずに受け止める。

その体験を重ねることで、少しずつ体に刻まれていきます。

グループ学習は、単に複数人で講義を聞く場ではありません。

安心できる人間関係を、その場で練習する場所なのです。

机の上ではなく、「生きた関係」の中で学ぶ

FAPには「in vivo(イン・ビボ)」という考え方があります。

ラテン語で「生きた現場で」という意味です。

本を読むことも、動画で学ぶことも大切です。

でも、人との関わり方を変えたいなら、実際に誰かと関わりながら学ぶことが必要です。

私たちの体験セミナーでも、知識を一方的にお伝えするだけではありません。

自分の思いを言葉にしたり、ほかの医療福祉従事者の話を聞いたりしながら、

「ここでは、話しても大丈夫」
「私だけではなかった」
「いつもと違う言葉を出せた」

という体験を大切にしています。

研修で学んでも、現場に戻るといつもの自分に戻ってしまう。

もし、そんな経験を繰り返しているなら、次は「人との関係の中で学ぶ」体験をしてみませんか?

今日、職場の誰か一人と、いつもより少しだけ深い話をしてみる。

それが、あなたにとっての“生きた学び”の始まりになるかもしれません。


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