トマト味に染まった私と牛乳色に染まる君
コンビニでプリッツを探している君をみた時、
私は不思議な気持ちになった。
そこにプリッツがあるのに、君はまだ怪訝そうな顔でそれを探している。
「ねえ、プリッツならそこにあるよ」
「違うんだよ。俺が探してるのは、サラダ味じゃなくて。トマト味。」
え、プリッツといえば、あの緑の箱のサラダ味じゃなくって?
そう心の中で思ったのを、私は今でも覚えている。
そんな私も今ではすっかりプリッツは、トマト味派である。
トマト味が置いてないコンビニには、
「ちっち、君は何にもわかってないな」
と物申したくなるくらいだ。
思えば、そうやって徐々に君に染まっていった私だった。
嫌なことは嫌って飲み込まずにちゃんと言うこと。
面白くなかったこと、美味しくなかったものに、過度にお世辞を言わないこと。
勢いでどこかへ行ってみようと、突然出かけること。
正直者だと思っていた私は、本音を言うことで何かを傷つけるのは怖くて、意外と心の奥に本音をしまっていた。
そんなことに気付かされたのは、君と付き合ってからだった。
今まで付き合ってきた人とは、ケンカをすることもあまりなかった。
それでも長く続いたのは、私がぐっと本音を隠して我慢していたからだった。
苦しくなっていきなり自分から別れを告げたり、相手に舐められたのか酷い裏切りをされていたりしたこともあった。
君とはケンカをたくさんした。
口が少し悪くて、眠くなると不機嫌になる君。
泣かされたこともたくさんある。
君は私より正直者だ。
私の嫌なところを、ハッキリと伝えてくる。
美味しくなかった料理を食べたあとのように。
それが悲しくて、悔しくて泣いた。
でも、私にも定期的に聞いてくる。
「俺の最近の嫌なところある?」
そうやって、本音を隠そうとする私と真正面から向き合ってくれる。
少しくらい傷つけてもいいし、傷ついたっていい。
それは私たちが長く一緒にいるための彼なりの方法だって分かってからは、そう思えるようになった。
いきなりどかんと大怪我をするより、日頃から小さなすり傷をつくって、それを治していく方が遥かにいいんだ。
そうやって彼と付き合って来たから、すごく仲良しな二人だと思う。
あなたと出会えて、夫婦になれてよかったね、そうやってお互い言い合う。
お互いがソウルメイトかどうかなんて、私は占い師ではないから分からないけど、そうであった
らいいのにな。これからもずっと一緒にいれたら。
いや、ずっと一緒にいるために頑張るんだ。そう思う。
そんな君と結婚して、最近気づいたことがある。
買い物係の君は、やたらと牛乳を買うようになった。一日一パックのペースで牛乳がなくなっていく。
「いやー、こんなに牛乳を好きになるとは。これは、みーの影響だね」
そっか。
染まっていったのは、私だけじゃなかった。
牛乳が好きになった君。
旅行好きになったこと。
夜に本を少しだけ読むようになったこと。
そうやって、君も私色に染まっている。
トマト味に染まった私と、牛乳色に染まる君。
そうやってお互いを染めあって、これからも一緒に生きていこう。
