初めて仲良くなりたいと思ったママ友の話
人付き合いに苦手意識のある私は、友達作りというものが大の苦手である。
基本的に人に対しては受け身で、自分から誘うことはまずない。今までも「来るもの拒まず、去るもの追わず」のスタンスでずっと生きてきた。
そんな私が、珍しく自分から仲良くなりたいと思った人──Kちゃんママと知り合ったのは、長女が幼稚園の年少の時だった。
Kちゃんママの第一印象は、大人しくて控えめだけど、他のママ達とコミュニケーションを取ろうと努力している頑張り屋な人。
私はその頃、まだ園での付き合いは殆どなくママ友もいなかったから、そんなKちゃんママを見て密かに感心していた。
園の行事やランチ会などで顔を合わせても話す機会はなかったのだが、ある日、スーパーで「あの、〇〇ちゃん(長女の名前)ママですよね」と話し掛けてきてくれた。意外と積極的な人なんだと少し驚いたことを覚えている。
そして長女が年長になり、子供同士が仲良くなったことがキッカケで連絡を取るようになった。
子供同士が遊ぶ約束をしてくるので、お互いの家で親同伴でよく遊んだが、私はKちゃんの家にお邪魔するのが好きだった。
素敵なおうちに、綺麗に整頓された部屋。インテリアなども私好みで、居心地が良い空間だった。更にKちゃんママがいつも淹れてくれるルイボスティーやコーヒーが、やたら美味しく感じられた。
Kちゃんママは私より年上だったけど、話した感じも若くて年齢差を全く感じなかった。
ある時から、私は敬語を少しずつやめてタメ口で話すようにしてみたら、Kちゃんママもタメ口で話してくれるようになった。
私は当時まだ仕事をしていなかったので、Kちゃんママは数少ない専業主婦仲間。その点でも話が合った。
何より、Kちゃんママは私に似ているのだ。今まで会ってきた誰よりも。生き別れのお姉さんだと言われても違和感がないくらいだった。
そして音楽好きだったり、過去にデザイン関係の仕事をしていたことなど共通点があり、会話のテンポもゆっくりで私に似ているからか、話していて心地がよかった。
そんなある日、なんとKちゃん家族と一緒にディズニーランドに行く話になった。
我が家がもともと予定していて「娘が同じ日に行きたいって言うんだけど、行ってもいい?」と聞かれ、私は二つ返事でOKしたのだ。うちの子も友達と行った方が楽しいだろうし、Kちゃんママともっと仲良くなれるチャンスだと思った。
だが、当日はお互いに下の子がまだ手がかかり、それぞれ行きたい場所が違うこともあって、ろくに会話ができずに一日が終わってしまった。
無念さが残っていた私は、ディズニーの帰り際に勇気を出して「Kちゃんママ」ではなく「〇〇さん」と名前呼びをしたのだった。
コミュ力のあるママにとっては取るに足らないことかもしれないが、私にとっては大きな一歩だった。
しかし、それから暫くして、長女はKちゃんと仲違いしてしまい、全く遊ばなくなってしまった。
そうなると自然とKちゃんママとも会う機会がなくなり、『やっぱりママ友は所詮ママ友なのかな…』と思った。
◆
つい最近、何年か振りに長女が他の友達も含めてKちゃんと遊ぶことになり、Kちゃんママと久しぶりに話をする機会があった。
以前と何も変わらないKちゃんママが懐かしく、また繋がれたことが嬉しかった。
ママ友から普通の友達になることなんて、稀なケースかもしれないし、ママ友はママ友と割り切っている人もきっと多いだろう。
それに、人との距離感までも似ている私とKちゃんママの間には、目に見えない壁がある。
未だにKちゃんママからは私の名前を呼んでもらったことはないし、そもそもKちゃんママが誰かを名前呼びしているのを聞いたことがなく、希望は薄いのかもしれない。
それでも、いつか名前で呼んでもらえる日が来るといいなぁと、ほんのり期待してしまっている私だった。
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