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子どもが「やった!」と叫んだ。それだけで、金曜日が全部まるくなった。

金曜の夕方って、なんであんなに静かに崩れていくんだろう。

月曜から少しずつ積み重なってきたものが、夕方4時ごろにふっと限界に達する。外は明るいのに、体の中だけ夜みたいな感じ。子どもたちはまだ元気で、夕ごはんを何にするか考えなきゃいけなくて、でも冷蔵庫を開ける気力もない。

昨日がちょうどそうだった。

パートから帰ってきて、鞄を置いた瞬間に止まった。「さあごはん作ろう」って気持ちが、どこにも見つからなかった。何か作らなきゃとは思う。でも何を作るかを考えることすらしんどくて、ぼーっと冷凍庫を開けた。

あった。冷凍ぎょうざ。

先週まとめ買いしておいたやつ。それと、炊いてあったごはんと、キャベツを少し出して。それだけ。

フライパンに油を引いて、ぎょうざを並べた。ジュワッていう音と、にんにくのにおいが台所に広がった。

そのとき、ちょっとだけ「手抜きだな」って思った。

以前の私だったら、ここで罪悪感がセットでついてきた。「ちゃんと作ってあげなきゃ」「野菜も入れなきゃ」「疲れてるのはわかるけど、でも」って、頭の中に誰かの声が勝手に流れてきた。

声の主はたぶん、あるべきお母さんの姿みたいなもの。実在しない誰か。

でも昨日は、そのあとに子どもが来た。

台所に来て、フライパンをのぞいて、「やった!ぎょうざだ!」って叫んだ。

……本当に叫んだのよ。

目が輝いてた。「ぎょうざ好きなの知ってた?」って言ってきた。うん、知ってた。でも昨日、その声を聞いた瞬間に初めてちゃんと確認した気がした。

その「やった!」を聞いたとき、なんか全部まるくなった。

ぎゅっとしていた胸のあたりが、するっとほどけた。さっきまで気にしていた「手抜きだな」って気持ちが、どこかに行った。


罪悪感って、誰のためにあったんだろう。

子どもはぎょうざが食べられて嬉しかった。私は疲れた体でごはんを出せた。フライパンの中でぎょうざがぷくぷく焼ける音がしていた。それが昨日の夕方の全部で、何も足りないものはなかった。

「手抜き」って、ちょっと不思議な言葉だと思う。

誰かに採点されてる前提の言葉じゃないですか。「ちゃんとやってない」「本来はこうすべきだったのに」って、誰かの評価を前提にした言葉。でも昨日の台所に、採点者は誰もいなかった。

料理に手間をかけることが愛情、みたいな話を、いつか誰かに刷り込まれた気がする。それが正しいとも間違いとも言わないけど、少なくとも昨日の子どもは、ぎょうざで全力で喜んでた。

「手を抜いた」んじゃなくて、「今日できることをした」。

その違いが、昨日の夕方に、やっとわかった気がした。


食事のことで罪悪感を持ちやすい人、きっと多いと思う。

私もずっとそうだった。「食べてしまった」「また手抜きにした」「ちゃんとできなかった」って。罪悪感と一緒に食べる食事って、体に入るものが違う気がして。食べながら後悔してるから、ちゃんと味がしない。

ダイエットをゆるく続けてきて気づいたことの一つが、「罪悪感は判断を狂わせる」ってことだった。

食事のことを罪悪感と一緒に考え始めると、ちょっと食べすぎただけで「もう今日はダメだ」ってなる。そして「ダメな今日」をどうにかしようとして、変なことをしてしまう。明日から絞ろうとか、今夜は食べないでおこうとか。

そういう思考のループが、続かない原因だったと思う。

冷凍ぎょうざを、罪悪感と一緒に食べるか。子どもの「やった!」と一緒に食べるか。

カロリーは同じなんですけど、後者の方が絶対においしい。昨日のぎょうざ、ほんとにおいしかった。食卓で子どもが「もう一個食べていい?」って聞いてきて、「いいよ」って言えた。その会話が、よかった。


夕ごはんが終わって、夫が帰ってきた。

「今日はぎょうざにした」って言ったら、「いいじゃん」って言った。

子どもが「めちゃくちゃおいしかった!」って横から叫んで告げ口した。

「楽してごめん」って言いかけたんですよね、私。でも子どもの声が聞こえた瞬間に、やめた。

楽してごめん、じゃない。

今日の私にできることをして、家族がごはんを食べて喜んだ。それでいい。

子どもたちを寝かしつけて、台所を片づけながら思った。今日は疲れたけど、ちゃんと終わった感じがする。「ちゃんと」って言葉、さっきと違う意味で使っているな、とも思った。


疲れた金曜日の夕方は、生き残っただけで十分だと思う。

料理を手作りしたかどうかより、子どもが「おいしかった」って言えたかの方が大事だった。

罪悪感を手放した瞬間って、特別なことが起きるわけじゃない。昨日みたいに、「やった!」の声が聞こえて、「あ、これでいいんだ」ってなる。それだけのことが、けっこう大きい。

来週もたぶん、また冷凍ぎょうざに頼ることになると思う。

それでいい。ほんとに。


みかのnoteでは、2年かけてゆるっと-11kgになった記録と、育児の中で気づいたこと、体や食のことを書いています。頑張りすぎないで続けることが、いちばん遠くまで行ける気がしているので、そういう話をこれからも書いていけたらと思っています。

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