繊細っ子と、予防接種
9歳になったYotaが越えなければならない試練。
そう、それは──日本脳炎の予防接種。
繊細っ子を持つ親にとって、予防接種は「当日なんとかなる」では、まずなんともならない。
準備と覚悟が必要なビッグイベントなのだ。
カレンダーと心拍数が、同時に削られていく。
繊細っ子はとにかく連れ出すのがものすごく大変だ。
相手が病院となると時間が決まっているので、それはそれはもう......ね?そこの繊細っ子ママさん!
Yotaが小さい頃はこんな感じだった。
まずは本番の1ヶ月ほど前から「来月予防接種受けるからね〜」と軽くジャブを打つ。
それから2週間くらい前に「この日に予防接種だからね〜」と今度は日程を伝える。
そして1週間前、3日前に「この日だからね〜」と念押し。
前日は「明日予防接種で、◯時からだから◯時に出るよ〜」と時間まで伝えておく。
⇨※これぞおかんスヌーズ機能(命名ayamo)
当日、だいたい行く間際に「行きたくない」と一波乱あるので、事前にこっそり購入しておいたおもちゃのトミカを車の中に隠しておき、「どこにあるかな〜ウヒヒッ」と、車の中に誘導する作戦だ。
ここでの最大のポイントは、いかに楽しくウキウキ連れ出すか!にかかっている。
繊細っ子はどこに地雷があるかわからないから、毎回心臓バクバクだ。
なんてったって相手は予防接種。
──ミスは許されない。
特に厄介なのは、予約時間が決まっていることだ。
彼らは「決められる」ことが大の苦手だ。
でも、病院は待ってはくれない。
だから、ゴネることを見越して、出発する1時間ほど前から「行くよ〜」と声がけを開始する。
予防接種が無事に終わったら終わったで待っているのは、そう......ご褒美トミカだ。
しかも、Yotaはいつも黒い箱のプレミアムトミカを選びやがる。
そして、そのあとは、ご褒美アイス。
スーパーに売ってるアイスじゃないよ。
サーティワンアイスだよ。
しかもよ?我が家には弟がいるのよ。
もれなく弟の分もご褒美を用意しなくちゃいけないのよ。
つまり、すべて×2なわけなのよ。
相手がインフルエンザ予防接種だったらよ?
これがアータ、2回分なわけなのよ。
インフルエンザワクチンは自費なのよ。
どんだけお金かかるねん!
ハァハァハァ、長年のチリツモを吐き出させてもらったぜ。
......でも、仕方ない。
これがあるから頑張れる。
これがあるから1歩が出る。
あの手この手のシミレーションと根回し、そして莫大なご褒美予算に、よく頑張ったよなぁ......と自分でも思う(遠い目)。
駄菓子菓子。
──9歳のYotaは違った。
「今ね、明日の予防接種に向けて、自分の腕を爪でつねってトレーニングしてた」
なんということでしょう。
彼の腕にはくっきり爪の跡が。
当日だって、もう隠しトミカなんていらない。
相棒の白くまのぬいぐるみポーラちゃんをギュッと抱きながら、すんなり車に乗り込む。
ご褒美はミスドのポンデリングで十分さ。
帰りの車の中で、彼はポツリと呟いた。
「あのさ予防接種、......思ったより痛かったわ」
バックミラー越しのYotaは、いつの間にか「越える側」になっていた。
私は、その成長を静かに受けとり、前を向いた。
──ポーラちゃんを抱っこしてるけどね。
