浦和のエリザベート開幕
「あんたに美味しいものを食べさせてあげたい」
心友の米粉ちゃんが、息子の付き添い登校で毎日生まれたての子鹿と化している私を元気づけようと、浦和の自宅に招いてくれた。
米粉ちゃんは、料理が上手い。
化粧水をあらよっペーンッペーンッって雑につけるけど、料理が上手い。
レシートの裏に「あんた、お誕生日おめでとう」って渡されたことがあるけど、料理がめちゃくちゃ上手いのだ。
米粉ちゃんというくらいだから、彼女が作る米粉のクッキーはめちゃくちゃ美味しい。
そして彼女は今、麹料理にハマっており、時間があれば、ケーキとパンを焼いている。
「お母さーーーーん」
毎日ヘロヘロになっている料理が大の苦手な私は、米粉ちゃんのことを時々そう呼ぶ。
彼女が作る料理たちの写メがよく送られてくるのだが、米粉ちゃんの作る料理はどれもこれも美味しそうで、見ているだけで幸せな気持ちになってくる。
まじでお母さんになってほしい。
「生まれたての子鹿に美味しい料理を食べさせてあげたいの会」には、その昔芝居仲間であったツキコとカエデの2人も呼ぶことになった。
米粉ちゃん家に行く日が近づいてくると、作る予定の料理のラインナップが私たち3人に送られてきた。
一応米粉のケーキはスフレチーズケーキ、ガトーショコラ、クランブルチーズケーキを焼く予定で、ランチにローストビーフとスープとオーブンで焼くポテトチップスと、レーズンパンを焼くね。
お土産用の米粉のクッキーを仕込みまで作っておくので、みんなで作ろう。
あとぶっつけ本番でフランスパンも焼こうかと思ってる。
米粉よ、アータは一体何者なのよ。
これはもうお腹すっからかんで行くしかない。
**
当日。
私はイチゴとデコポンを、ツキコは飲み物を、カエデはサラダを持参した。
米粉ちゃんの家に着くと、ちょうどフランスパンが焼き上がったとのことで、米粉ちゃんがキッチンで出来立てホヤホヤのフランスパンを切ってくれた。

「初めて作ったぁぁぁぁーーーー食べて食べてぇぇーーーー」
パクッ
・・・・お店の味やん!
出来立てのフランスパンはふわふわでちょっと塩っけがあってもうバターとかそんなのいらなーいって感じでめちゃくちゃ美味しかった。
美味しかったからお調子に乗って3切も食べた。
米粉ちゃんもツキコもカエデも、料理が上手い。
「私、サラダ盛り付けるね!お皿あるぅ〜?」
「ツキコはこのじゃがいもをスライサーでスライスしてくれる?」
「りょうかーい!」
テキパキ動いていく3人。
私は・・・フランスパンかじりながら・・・
全力で応援した。
米粉ちゃんが、素敵なものを切り始めた。
なんとなんと・・
ローストビーフだ!

美味しそう美味しそう美味しそう!!!!!
もう美味しそう以外の何ものでもない!
これが美味しくなければ何を美味しいというのだ!!!
駄菓子菓子、全部薄く切るの大変そうやな・・。

米粉よ、がんばれ!
私は全力で応援した。
私の全力応援が3人に届いたのか、着々と料理が仕上がっていき・・
お待ちかねのランチターーーイム!!

かんぱーーいっ!

「ほら、あんた、たくさん食べや」
・・・
お母さーーーーーーん
泣いちゃう。
めっちゃ美味しい。
優しい味。
「あ、塩麹で作った鶏ハム食べるー?」
ヨーグルトメーカーで塩麹作りにハマっちゃってる米粉ちゃん。
これまためちゃくちゃ柔らかくてジューシー。
「スープおかわりする?」
私たちのご飯の進み具合を見て、時折洗い物も進めながら、テキパキ動く米粉ちゃん。
「あ、ポテト焼き上がった!」

ツキコがスライスしたじゃがいもをいつの間にかオーブンに入れていた米粉ちゃん。
できる女や。
次に出てきたのは、レーズンパン。

トーストされたレーズンパンは、もう、これは、・・・もう!!!!!!
美味しすぎてほっぺた落ちまくって大変だった。
たらふく食べたあとは、米粉のクッキー作り。
生地まで米粉ちゃんが仕込んでおいてくれたので、切って丸くして周りにグラニュー糖をつけるという作業をみんなでやった。

私たち4人はみな、時期は違えど同じミュージカル学院に通っていて、私の立ち上げた劇団で一緒に芝居をつくったことがある仲間だ。
今も、ずっとずっと仲が良い。
4人の共通点はそう・・・
ミュージカルが好き
ということだ。
カエデがおもむろにスマホでミュージカルナンバーをかけ出した。
『エリザベート』


かかってしまったエリザベートが。
止まらない。
カエデがもう、止まらない。
大のエリザベート好きな彼女は、完璧に台詞も歌詞も頭に入っている。
宝塚版と東宝版の歌詞の微妙な違いとかまで把握しているほどだ。
3年前に一緒に舞台を観に行った時は、エリザベートを意識した服装で登場した。

思い出すのは・・・ある芝居の打ち上げでカラオケに行った時のこと。
カエデが選んだ曲はもちろんエリザベート。
♪私だけに
カエデにスイッチが入る。
靴を脱ぎ、ソファーの上にゆっくり立ち上がる。
エリザベート降臨
ああ、、、なんて神々しいんだ!!!
身振り手振り、こうなると誰も彼女を止められない。
感情を歌に乗せて、どんどん盛り上がっていくエリザベート。
ソファーの上を歩くが、なんせソファーなもんで、足元がふにゃふにゃグラグラする。
フラフラじゃないかエリザベート!!
がんばれ!
ヨレヨレしながら懸命に声高らかに歌い続けるエリザベート。
とその時!エリザベートに不運が。
グキッ
足を捻ってしまったのである。
「あ、痛っ!!!!!!」
エリザベートが足をおさせて悶えている。
痛がるエリザベート。
受付で氷をもらい、冷やす。
後日、病院に行くと、エリザベートの足首は捻挫していた。
「足首捻挫したエリザベート」このエピソードは私たちの中で伝説になっている。
ウィーーーーーーーン
ん?なんの音だ?
米粉ちゃんが、今度はホイップを作り出した。

止まらない。
米粉が、止まらない。
最後に用意してくれたのは、ケーキの・・・
3種盛り!

豪華すぎるやろぅぅ。
余ったケーキと、焼きたての米粉クッキーはタッパーに詰めてくれた。
「あんた、パンも持って帰り」

・・・
お母さーーーーーーん
なんやろ、ひとり暮らしの娘が久しぶりに実家に遊びに来て、色々母親が持たせてくれる時のあの心情になった。
さて、そろそろ帰る時間だ。
おや?あそこに素敵な階段があるではないか。

おもむろに動き出す・・・・カエデ。
カチッ
カエデにスイッチが入った。
It's show time!

そう、「いい階段」があると、突如始まる宝塚ショー。それが例え外であろうと中であろうと、「いい階段」がある限り、彼女は、踊り出す。
浦和のエリザベート開幕

エリザベート!
足元!とにかく足元に気をつけて!!!
目が合う。
あ・・こっちくるな。
私の方に・・向かってるな。
「さぁ!ご一緒に!」
誘われる私。
躊躇するも、諦めないエリザベート。
仕方ない。久々にスイッチ入れるか。
カチッ
「さぁ、エリザベート」

「共に、行こうではないか」

・・・久しぶりに即興とはいえ楽しかったんですけど。
ツキコよ、写真におさめてくれてありがとう。
米粉ちゃん、「いい階段」だったよ。
楽しい1日だった。
私たちが一緒に芝居をつくっていたのはもう・・18年も前のことだ。
人生の中で1番「熱い時代」を過ごしてきた仲間というのは深い絆で結ばれている。
住んでいるところもバラバラで、それぞれが家庭を持ち、今はそれぞれの人生を歩んでいるけれど、こうやって久しぶりにあっても、すぐに戻れる。
そんな仲間がいて幸せだ。
心からありがとう。
米粉ちゃんの優しい料理と、仲間たちとの絆で心もお腹もたっぷり満たされた。
あ、そうそう。
米粉ちゃんオススメのポテトのオーブン焼きね。「めちゃくちゃ簡単だよ〜〜!」ってレシピ教えてくれて、ああ、これなら料理苦手な私でもできるじゃないか!ってことで、作ってみたんすよ。
こちら、米粉ちゃんが作ったポテト。

こちら、私。

違うな。何かが・・・違うな。

うっす・・・
ペラッペラやな。
厚みがないやん全然。
スライサーの問題か?
でも、味は美味しかったし、子供たちパクパク食べてくれたしね。
結果オーライってことで。
それではみなさま。
♪ごぉきぃげんよぉぉぉららら〜ん(エリザベートな感じでよろしく)
