ZINEフェス横浜で、息子が握手をした日
「Yotaに、一生懸命ポストカードを売るオジサンたちの姿を見にきてほしい」
木の子さんが、そう言った。
2月15日に、横浜・大さん橋で『ZINEフェス横浜』が開催された。
コニシ木の子さんとマイトンさんのブースに、
Yotaのポストカードも並べてもらえることになった。
いつもYotaの表現を「最高です」とおもしろがってくれる木の子さんと、ついに対面する時がきた。
珍しく行く気満々のYota。
行く直前に、「やっぱり行かない」と言われ続けてきた日々を思い出す。
だから、頭の片隅に「行けないかもしれない」を置いておく。
心の平和を守るために──
駄菓子菓子。
今のYotaは違った。

ルンルンで家を出たかと思うと、駅ではエスカレーターを使わずに全て階段を駆け上がる。

はぁ、はぁ、はぁ......
私も必死で追いかけるが、追いつかない。
ああ、太ももが笑うぜ。
日本大通り駅は、よく降りる駅だ。
なぜなら......
夫婦で大好きな、BLUE BLUEがあるから!

フェスの開始時間まで余裕があったので、ちょっとだけ、店内を見て回る。
ハァ〜ン
この、お香の香りがたまらなく幸せなのよぅ。
「今日は、息子さんとなんですね」
話しかけてくれたのは、いつも店に行くと、丁度いい距離感で接客してくれるお気に入りのお兄さんだった。
相変わらず、とんでもなくオサレだ。
店員さんが覚えてくれるって、嬉しいもんだな。
心がホクホクになりながら、大さん橋へ向かう。
Yotaは初めて行くところが大の苦手だけど、大さん橋は小さい頃からよく訪れていた場所なので、安心して向かうことができた。
当時の思い出話なんかしながら、手を繋いで歩く。
きゅーん。
息子とデート。
きゅーーーーーーーーーーーん。
大さん橋に着いても、フェスの場所は奥の方だったので、かなり歩かなくてはならなかった。
Yotaは大さん橋の構造に興味津々の様子で楽しそうに歩く。
あんなに長い距離を歩くことが苦手だったのに......
成長したなぁ。
***
私自身、ZINEフェスに行くのは初めてだったので、ワクワクだった。
ズラズラーっといろんなブースが並ぶ。
すごい熱気だ。
前を通ると、「見てってくださーい」と声がかかる。
みんなニコニコ楽しそうだ。
──ブースの前に立っている木の子さんを発見!
「Yotaくん、木の子さんいたよ!あそこ!木の子さーん、やっほ〜!」
ブースにいるマイトンさんにも手を振る。
なんのはなしですかブースが、見事に完成していた。

「Yotaー!!!!よく来たなぁ!会いたかったよ」
握手を求めてくる木の子さん。
突然の陽気なオジサンを前に、緊張でガチガチのYota。
木の子さんの記事で、「私は、握手を大切にしている」と書かれていたことが印象に残っている。
子どもだから、なんて空気はひとつもなくて、
まっすぐ握手をしてくれた。
それが、たまらなく嬉しかった。
「Yota〜、いつもありがとなぁ、たくさん作品見せてくれて」
ああ、嬉しい。
木の子さんとYotaが、目の前で握手をしている。
学校に行けなくなって、「行かない」ことを選んだ。
世界は、急に小さくなった。
ずっと、私だけがYotaの世界を見てきた。
その世界を、ここまで連れてきてくれた人と、
今、Yotaが握手をしている。
(あー、書きながら涙出てきたなぁ)
私は、この記念すべき瞬間を写真におさめようとスマホを構えた。
「写真撮りましょう!ほらほら〜Yota、こっち見てー!」
カシャッ

Yotaの指がギュンッてなっている、ギュンッて。
「ほら、Yotaのポストカード、並んでるよ〜」
「・・・・・・」
「どう?オジサンどう?こーんな面白いオジサンが世の中にはいるんだよ〜」
「・・・・・・」
木の子さんが、ぱあっと手を広げてみせた。
オジサン全開で。
かたまるYota。
木の子さん、まだです、まだ、心の扉が開くには、時間がかかりそうです。
ネバーギブアップ!
さっそく、グッズたちを拝見。
ブースにはマイトンさんが。
私がGETしたのは......
レザークラフト作家である蒼広樹さんのキーホルダー

あわい雪さんの栞

そして、お2人の「人生」が詰まったZINE!

チラッ

サイン書いてある〜笑。
きっと、めっちゃ考えたんだろうな。
お2人の「ありがとう」が伝わってくる。
マイトンさんがノート片手に一生懸命会計をしている。
その様子がポスターの隙間から見える。

この隙間からマイトンさんが面白くて、私のツボに入ってしまった。
「◯◯円です」

「mikaさ〜ん!たくさん売れたよぉ〜」

ああ、隙間イトンさんが、たまらなく可愛い。
その後ろで、ポストカードを慣れない手つきで袋に入れる木の子さん。
可愛い。
2人の、紐短めサコッシュ姿が可愛い。
──私は気がつくと、Yotaそっちのけで、可愛いオジサンたちの虜になっていた。
その後も、隙間イトンさんがテキパキ商品を用意して手渡し、会計している。
「俺、あんなん絶対無理だよ〜、あとで店1人になるけど、できる気がしねぇよ〜」
お客さん対応でブースの外に出ていた木の子さんが、ビクビクしていた。
***
お目当てだったグッズを買ったので、Yotaといったんブースを離れた。
出入り自由なのがありがたい。
デッキの上を歩く。
天気が良くて、気持ちがいい。
そこで、Yotaからびっくり発言があった。
「今日、木の子さんとランチすると思ってた」
なんということでしょう。
ZINEフェスのこと説明したはずなのに、全く伝わってなかった。
「だから、“なんのはなし?なんのはなし?”って、ずっと思ってた」
しれっと「なんのはなしですか」を会話にぶっ込んでくるなんて、
さすが路地裏最年少アーティストYotaである。
「もっと木の子さんと居たかった」
「戻る?」
小さく頷くYota。
一言も喋らないし、ずっとかたまっていたので、このまま帰ると思ったのに。
Yotaはあの場所に、戻りたいと言ったのだ。
「木の子さんと話せばいいのに」
「・・・・・・」
「せっかくノート持ってきたし、サインでももらう?」
「お母さんが言って」
「えー、Yotaくんが自分で言えばぁ」
「恥ずかしい」
「じゃあ、お母さんが言ってあげるから、Yotaくんがノート渡して」
「わかった」
実は、木の子さんの前で絵を描くと張り切ってノートを持参していた。
ガチガチの本人、そんな余裕なし。
「おぉ〜、Yota、また来たのか、嬉しいよ」
「木の子さん、Yotaがサイン欲しいそうです」
ノートを差し出すYota。
「YotaのYは大文字小文字?」
ゆっくりペンを走らせる。
この日のために考えたサインは、まだ板についていない。
ひと文字ずつ、確かめるように書いている。

「どう?どう?可愛くない?」
Yotaにサインを見せ、可愛さアピールをする木の子さん。
「......あんまり?」
フッと笑うYota。
おおお!!!ついに!Yotaから笑顔が出たぞ!
心の中でガッツポーズ。
マイトンさんにもサインをもらった。

「僕は、シンプルなんです」
スッと、隙間から手渡してくれた。
ハンコも押してくれた。


「どう?可愛いでしょ。もう全部可愛くなっちゃうんだよ、オジサンくらいになると」
木の子さんの、全力可愛さアピールが止まらない。

「いつか、Yotaのサインもくれよ」
最後に優しくYotaに声をかけてくれて、もう一度握手をして別れた。
***
Yotaとカフェに入り、遅めのランチ。
お腹が空いていたのか、カツカレーをすごい勢いで食べている。
「木の子さん、どうだった?可愛かった?」
「......ううん、普通だった」
オジサンの可愛さ伝わらず。
カツカレーを美味しそうに食べているYotaを見ながら思う。
──人生って、何が起こるかわからないな。
Yotaが不登校にならなければ、私はきっとnoteをやっていなかった。
このおもしろい世界も知らなかったし、
この素敵な出会いもなかった。
もちろん、現実は正直、辛いことだらけだ。
でも......
起きてしまったことを、面白くするかどうかは、自分次第だ。
結局Yotaはひとことも喋らず、終始ガチガチだったけど、目の前の一生懸命なオジサンたちを、ずっと見ていた。
彼は、何を感じていたのだろう。
木の子さんとマイトンさんは、とにかく幸せそうな顔をしていた。
その意味が、今はまだわからないかもしれない。
でも、もう少し大人になったら、きっと気づく日がくる。
くだらないことを全力で楽しめる人は、だいたい、人生を楽しんでいる。
Yotaには、おもしろい大人たちと、たくさん出会ってほしい。
そしていつか、このオジサンたちみたいに、「なんのはなしですか?」って笑いながら、
人生を面白がれる人になってくれたら嬉しい。
「なんのはなしですか」という言葉の力を、改めて感じた。
その言葉のまわりに、人が集まり、自由に表現して、遊んでいる。
その中に、Motto氏(夫)のデザインがあって、Yotaのポストカードがある。
ああ、楽しいなと思う。
この言葉に救われた人は、きっとたくさんいる。
私も、そのひとりだ。
帰りの電車で、Yotaがポツリと言った。
「ポストカード嬉しかった」
いつも息子の本音は、ポツリに隠されている。

***
木の子さん、マイトンさん、お2人の物語大切に読ませていただきます。
Yotaに素晴らしい経験をさせてくださって、ありがとうございました。
可愛いオジサンの姿が、脳裏に焼き付いて離れません。

Yotaの物語を連れて帰ってくれたみなさま、ありがとうございました。

