ニチアサの話がしたい vol,274
◾️先週と今週のゼッツ
・Defend the comrades.(仲間を防衛せよ)
それこそ『ガヴ』の辛木田絆斗のように、ライターの仕事一本で食っていけるほど売れっ子とかでは全くないのだが(というか仮面ライダーをやりながら収入源はライター業のみという絆斗が凄すぎるんや)何の偶然か複数の原稿の締切が同じ時期に集中してしまったため、先週vol,273では『ゼッツ』の感想文まで手が回らなかった。別にこの連載は誰に頼まれているわけでもなく完全に私が趣味でやっているものなので、書かなかったからと言って誰かに怒られるわけでも減給されるわけでも、祟りが起きて村の唯一の水源の湖が干上がるわけでもないのだが、もし楽しみにしていた方がいたとしたらゴメンナサイ。代わりと言ってはなんだが、今回は先週のCase18「撃つ」と、今週のCase19「択ぶ」をまとめて「デスゲーム編」の感想文として書き残していきたいと思う。『ゼッツ』はこれまでも基本的に「事件発生編」と「解決編」の2話で1エピソードという形式を取ってきたが、特に今回は前後編の全てのピースを集めて初めて「実は先週と今週の放送は宮本紅覇 / コードナンバー:シックス登場回だった」ということが分かる仕掛けの構造だったため、このタイミングで書くのも良いのではないかと思う。
夢の舞台はバスケットの名門高校、私立全治学園。全国制覇を目指し、日々練習に励むなすかとその親友、宮本紅覇。紅覇を演じるのは『キングオージャー』でリタ・カニスカを演じた俳優の平川結月さんであり、『ゼッツ』としては初のスーパー戦隊シリーズからのOG出演である。なすか役の小貫莉奈さんも平川さんもバスケット経験者ということで、冒頭ではドローンカメラなどを使って撮影されたお二人の鮮やかなプレーが印象的だ。前作『ガヴ』でもラキアを演じた庄司浩平さんの特技を活かしたバスケ回があったが、2年連続で俳優陣のボール捌きが見られるとは思わなかった。なすかと紅覇は共に切磋琢磨してきた仲間であり、一緒に全国制覇を目指そうと意気込むが、デスゲームナイトメアの出現により学園は突如として戦場と化けしてしまう。ゼロの代理として司令官となったコードナンバー:スリーから下ったミッションは「Defend the comrades.(仲間を防衛せよ)」。ここから物語は緊迫したデスゲームを追いつつ、防衛すべき「仲間」とは一体誰にとっての誰のことを指すのか?というミステリーが展開されていく。
・学校襲撃デスゲームの恐怖
一人一人にランダムに武器が与えられ、生徒たちが生き残りを賭けて戦う「学生×デスゲーム」と聞くと、咄嗟に映画『バトル・ロワイヤル』的なシチュエーションなのかと思ったら、同作で言えば北野武演じる教師キタノ的なポジションのように見えたデスゲームナイトメア自らが「私を倒せなければ生徒全員始末する」と宣言し、次々と生徒たちを手にかけていくのを見て思わず「お、お前が殺るんか!」とツッコんでしまったのだが、まあ冷静に考えればニチアサで高校生同士の殺し合いを描くわけにもいかないだろう。漫画『寄生獣』でもあったが、学校という閉鎖空間の中で襲いかかってくる化け物から逃げ惑う今回のようなパターンもまさに「悪夢」っぽくてそれはそれでめちゃくちゃ怖い。ところでこのデスゲーム・ナイトメア、声を声優の佐藤せつじさんが担当しておられるのだが、もうこの佐藤さんのお声が本当に素敵だった。佐藤さんは映画『デッド・プール』シリーズのウィーゼル役で個人的にはお馴染みの声優さんだったが、「細かいルールは無いです」などと気怠く言い放ち、家庭科室で震えながら身を縮ませる女生徒二人に背後から「隠れいてば助かるとでも思ったか?」と囁きかけるシーンなどはゾッとするほど恐ろしいのに、別の意味で「キャー!」と声を上げたくなるほどセクシーで、ファンとしては眼福ならぬ耳福な2週でもあった。佐藤さん、素晴らしいお芝居をありがとうございました……!!
生徒たちを手当たり次第に蹂躙していくデスゲーム・ナイトメアを止めるため、莫は仮面ライダーゼッツ テクノロムストリームに変身。久々の登場となったが、大気の力を操りながら徒手空拳を繰り出し、軽やかにガンアクションもこなしていくテクノロムストリームはやっぱりカッコいいな~!と改めてテンションが上がる。特に、戦いに混じった仮面ライダーノクスと学校の屋上で交戦中、落下地点が見えない位置からゼッツとノクスが連続で高所落ちするシーンなどは「えっ!」と身を乗り出してしまったほどで、全体を通してもアクション監督 渡辺淳さんのアイディアが随所に冴えるバトルシーンだった。生き延びたデスゲーム・ナイトメアと共に夢から帰る際、学校の背景をバサリと舞台の幕のように捲り上げて去っていく仮面ライダーノクス役 永徳さんの優雅で力強い仕草も思わず拝みたくなるカッコ良さだった。
・ドリームラーニングという「改造」
ドラマパートではやはり紅覇周りがアツい。高校時代のバスケ部が出てきたことから、なすかかと思われていた夢主が紅覇であることが18話ラストで発覚。さらにCODEによって消された記憶が蘇り、紅覇は自分がエージェント:シックスだったことを思い出す。つまり、紅覇は莫のエージェント「仲間」。そうなるとミッションの「Defend the comrades.(仲間を防衛せよ)」の意味もこの辺りからまた少し違う色合いで見えてくるのが面白い。なすかの親友役とはいえ、紅覇役に平川さんがキャスティングされたのも、ただの前後編のゲストにしてはやたら豪華な配役だと思ったが、今後も引き続き活躍するエージェント役となれば納得である。記憶を取り戻した後の紅覇はエージェントとしての能力も戻っているようで、平川さんも本格的なガンアクションにも挑戦しており大変カッコ良かったが、頭のどこかで「紅覇!今だ!王鎧武装しろ!!」と、思ってしまったのは筆者だけではないと思う。
一方で、今週激烈にしんどかったのは、紅覇も莫もかつて夢の中でエージェント養成施設に通わされ、「ドリームラーニング」なる特殊洗脳でエージェントに憧れるように仕向けられていた事実が明らかになったことだ。いや、確かに常々おかしいと思ってはいたのだ。「主人公はエージェントが好き」という莫の設定は、特にエージェント映画が小さい子供に大ブームとかでもない昨今かなり珍しいと思ったし、しかもその好きになった動機が何故かずっと語られないことにも違和感は感じていた。例えば(なぜか今のところ万津家に父と母は登場していないが)映画好きだった両親との思い出と紐づけられていているとか、小さい頃に実は一度莫自身が夢主になっており、当時のエージェントに救われたが、それを本人が忘れ難い夢をして記憶しているとか、そういうきっかけのひとつでもあれば莫自身の掘り下げになってもいいのでは?などと思ったりもしていたのだが、洗脳で植え付けられた感情なら、そりゃきっかけも何もあるわけねえわ!と、天を仰いでしまった。
それにしても、元々エージェントに憧れを持つ子供たちを選んでドリームラーニングを受けさせたのではなく、ドリームラーニングを受けたから莫はエージェントが好きになったという順番はかえすがえす本当に残酷だと思う。子どもの頃から自分の真ん中にあるものだと思ってた「大好き」が、第三者の手によって仕組まれた気持ちに過ぎなかったというのは、自分のアイデンティティすら揺らいでしまうほどショックなことではないだろうか。無論、この洗脳こそが『ゼッツ』における「仮面ライダーの改造手術」に当たるものなので、その表現を弱めることはできないのは重々承知なのだが、「例え自分の脳が改造されていたとしても、この力を使って悪夢に苦しむ夢主を救いたい」と、仮面ライダー然とした正義感で立ち上がれる莫の強さに頼もしさを感じる一方、何かの拍子に彼の心がポッキリ折れてしまうのではないかと、ついいつい不安になってしまう。
しんどいと言えば、莫だけでなくねむに隠された秘密も相当だった。蝶のイヤリングを外して見えたのは、自身の深層心理の花畑で邪悪に笑うベビー・ナイトメア。その姿を見たねむは、自分はみんなの夢のナビゲーターなどではなく、夢主を苦しめるナイトメアの生みの親なのではと悟ってしまう。(ちなみに、ベビー・ナイトメアは『どきんちょ!ネムリン』に登場する妖精ネムリンがモチーフなのではという噂がまことしやかに囁かれているが、確かによく見るとネムリンしか見えん……)まだどういう目的でザ・レディたちがねむの肉体を夢の世界で眠らせ続けているのかは分かっていないが、誰かの夢の中でしか生きられないなら、せめて夢の中で出会う人が望む役割を精一杯演じ、笑顔になってもらおうと頑張ってきたねむにとってそれがどれだけ辛いことかは想像に難くない。ただ、みんなに元気でいてほしいと純粋に願っているだけの莫が、ねむが、一体何をしたって言うんだよ!悠也先生ェ!
・なすかと紅覇の新しい「仲間」のかたち
ザ・レディは元エージェントである紅覇を始末する予定だったようだが、CODEへの懸念を抱きつつも夢主救出のために諦めず立ち向かい続ける莫を目の当たりにしたノクスは彼と紅覇を結果的に見逃すことに。それに対し、ザ・レディが「まだ仲間意識が残っていたのね」と溢すことで、最後の最後で「Defend the comrades.(仲間を防衛せよ)」というミッションを(本人にその気がないとしても)ある意味ノクスも達成していたことが分かるのがいい。
というか薄々思っていたが、なんだかんだ言って独断で動くことの多いノクスは警察にしろザ・レディーの組織にしろ、そもそも人に使われるのに向いてなさすぎではないだろうか?何なら「CODEは裏があるから信用できない。俺たちで利用されたエージェントと夢主を助けるためだけに活動しよう」とでも言って莫と紅覇を引き抜いて独立したほうがよくない?莫の悪夢を引き摺り出そうとカウンセラーという立場を利用し悪趣味な方法で近づくザ・レディにもわりとマジでドン引きしてたし、もういっそ起業だよ!ノクス!などと思ってしまうのは筆者だけだろうか?まあノクスはそんな建設的なことを言わず、どんな状況でもずっと「永遠に眠れ……もう悪夢にうなされることもない……」などと倒置法ポエムを謳ってるからこそ面白みが滲み出てくるキャラなのかもしれないが……。
エージェントに戻るため、再びなすかの前から居なくなることを決意した紅覇。しかし、その別れ方は高校時代とは違い、今まで撮り溜めたブラックケースの写真をカメラごと「警視庁公安部怪事課 南雲なすか警部補」に託してから去るというものだった。そんな紅覇のやり方に、かつての親友としてだけではなく、ブラックケースに立ち向かう「仲間」のひとりとしてなすかを認識してことが伝わってきてグッとくる。傷つかないよう危険から互いを守り合うのも仲間だが、同じ目標に向かってどんな危険にも一緒に飛び込んでいけるのも仲間の在り方のひとつだろう。大人になり、それぞれの夢が叶ったり叶わなかったりする中で「仲間」の意味も形も変わっていくし、なすかと紅覇のようにその絆が一度途切れることもある。けれど、二人の「仲間」としての新しい関係性はきっとまたここから始まるのだろう。「私も戦います。怪事課の捜査官として」。そう真っ直ぐ前を見つめるなすかの眼差しが冬空に美しかった。
■今週のゴジュウジャー
・アイドル&神の抱き合わせ戦略
先週の角乃VS禽次郎に続いて決着を付けることになったのは竜儀と陸王。前回も感じたことだが、「最初はライバル同士だったが、苦楽を分かち合った我々はいまや一つのチーム!争いは辞めてみんなで厄災に立ち向かおう!」などと耳障りのいい言葉でうやむやにせず、しっかり戦隊内での指環争奪戦を描き切り、むしろ確固たる勝敗を付けさせることで、逆説的に勝敗だけでは語り尽くせない彼らだけの友情の在り方を鮮やかに映し出していくところに『ゴジュウジャー』という作品に真摯さとキャラクターに対する愛情深さを感じずにはいられない。とは言え、真面目だけではないのもまた『ゴジュウジャー』のいいところ。実力が完全に互角の二人はマトモな戦いでは勝負がつかない。そこで竜儀は、「アイドルナンバーワンに返り咲く」という陸王を別の方法で願いを叶えるため、彼のプロデュースを買って出る、というのが今週第47話「GO FIGHT 陸王!百の夜が明けるとき」の導入だ。「イエローがブルーをアイドルプロデュースする話」という字面だけ見ると、夏のギャグ回みたいな雰囲気なんだよな……実際のところは残り3話なんだけど……。
竜儀のアイドルプロデュースパートの見どころは何と言ってもテガソードだろう。「この世の神との抱き合わせ戦略」に竜儀のトンチキな発案に巻き込まれたテガソードが等身大の姿になり「野生のカン」の新たなPVに出演するのだが、それがなぜか浜辺で陸王と追いかけっこをしたり、ハートのストローを差したドリンクを一緒に飲んだり、なぜか延々と陸王とイチャつきまくっている映像なのが本当に意味不明でバカウケしてしまった。もうこれただテガソードのスーツアクターの藤田洋平さんと陸王役の鈴木秀脩さんのお出掛けVlogじゃねーかよ!PVの合間に「お前がナンバーワン……」「陸王ちゅわんって呼んでいいか?」などど、いちいちイイ声で合いの手を囁いてくる声優の梶裕貴さんの遊び心も効いている。ちなみに公式サイトのオフショットではテガソード様が完全に海に突っ込んでいる写真があり、藤田さんのオテンバっぷりに笑いつつ、その後、スーツの修復や乾燥、砂出し作業などに追われたであろうキャラクター管理チームの皆さんのご苦労を思うとちょっぴり背筋が寒くなってしまった。ロボスーツで海に凸らない!!
さらに、こんなアホなことをやりつつ、最終回に向けて話も進めなければいけないのでロボ墓場のシーンではテガジューンとグーデバーンと共に「レクス、奴は厄災の頂点に立つ者だ……」などとごくごく真剣に話始めたのも「うわぁ!いきなり落ち着くな!」すぎて笑ってしまった。テガソードは基本的には真面目なキャラクターだからこそ、たまにする奇行のおかしさが際立つのが、ある意味すごくおいしいキャラクターだよなとしみじみ思う。
・シャイで不器用で繊細な陸王の素顔
そんな竜儀のやり方に意を唱え、地道にチラシ配りから始めたのは我らがリクオリスト代表のブーケ。陸王とどれだけ距離が近くなっても、まかり間違っても彼を独り占めなどせず、常に「陸王様の魅力をもっとたくさんの人に知ってもらいたい」というスタンスなのが本当に推せる子である。自身が可愛すぎて逆にブーケにファンができてしまうなどのアクシデントに翻弄されつつ、「信仰対象の祭壇づくり」というこの世でオタクと信奉者でしか共通しないだろう趣味を発見してしまった二人は、なぜか互いを認め合い、陸王のために新曲を共作するほどのチームワークを発揮していく。(しかもその新曲「Never ending shine」が、まためちゃくちゃ良い曲なのがウケる。もうコンビでプロデュース業をしろ!)また、公式サイトでも触れられていたが、祭壇の頭頂部に座らせられた陸王が「これはさすがに恥ずかしい……」と一瞬たじろぐも「いや、アイドルたるのも恥ずかしがる方が恥ずかしい!」と振り切ってファンサをするシーンが陸王らしくていい。最初に登場した時はそれこそナルシシズムの強い自分勝手なイケメンという感じの陸王だが、実はメンバーの中で最も常識人で思いやりがあるのが彼で、人並みにシャイなところもあるが、ファンのためにその羞恥心をかなぐり捨て完璧なアイドルを演じてくれている、という知られざる陸王の努力は一年間放送を見てきた視聴者には言うまでもなく伝わっていることだろう。その誠実さやお人好しさ、何でもそつなくこなしそうで意外に不器用で繊細な一面こそ、百夜陸王というキャラクターのすごく魅力的な部分だと筆者も思う。
そんな中、陸王の復活ライブの開催が決まるが、もう一度スポットライトを浴びるということは、いつまた足元を掬われてファンに去られてしまうかも分からない状況に再び身を置くということもある。アイドルで居続ける限り付き纏い続けるその苦しい現実から逃れようと、自分はテガソードに願いを託したのかもしれないと、誰にも語ったことのない本音を竜儀とブーケに打ち明ける陸王。確かに陸王の「アイドルとして返り咲く」という願いは、神の力を借りずとも叶えられるものなのでは?と前々から薄々思ってはいたが、こうやって陸王自身の口から事の顛末を聞くとなんだかこちらの胸も痛い。
・いざ掴め!ナンバーワン!
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