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ニチアサの話がしたい vol,270


■今週のゼッツ

・闇に呑まれたエージェント:フォー

 サブタイトルの通り、永遠に続くかと思われた暗闇に一筋の光が差し、周囲を明るく照らすような、そんな優しい暖かさと救いを感じる一話であった今週の『仮面ライダーゼッツ』Case15「照らす」。クリスマス前、そして年内放送ラスト回ということもあり、これまでのエピソードで使ってきたカプセムを使っての連続フォームチェンジに、新パワーアップフォーム「プラズマブラスター」のお披露目とキャラクターパートも充実。エンディングでは俳優の美村里江さん演じる新キャラクター「ザ・レディ」の登場というサプライズもあり、何だかゼッツチームから「年始からの放送がますます楽しみになる」という一足早いクリスマスプレゼントを貰ったような気分であった。ノクス役が古川雄輝さんだと知った時も「あの映画や舞台で引っ張りだこの古川さんが一年ライダーに出てくれるの!?」と相当驚いたが、新敵幹部役に美村里江さんというのも豪華すぎる人選でビックリである。こういうビッグネームのレギュラー登板も『ゼッツ』がチャレンジしていることのひとつなのだろうなと感じる。

 14、15話はゲストキャラがいなかったので物語の縦軸が進んだように見えるが、ある意味では「ノクス編」とも言うべき前後編だったのかもしれない。
 
自らの闇に囚われ続けるノクス / 小鷹賢政。その悪夢の舞台はまだ自分がCODEに属するエージェント:フォーとして活動していた頃に遡る。ベルトが破損し絶体絶命のピンチになったノクスは司令官ゼロに援護を要請するが、ゼロはそれを「No back up. Finish it alone.(援護はできない。1人で解決しろ)」と冷たく却下し、迫り来るナイトメアから彼を見殺しにしていたのだ。ノクスが組織に失望するのも無理はない、何とも無常な仕打ちである。また、このシーンで白シャツにハーネスというエージェント姿のノクスが初公開となったわけだが、これは莫が想像した「最も理想的なエージェントとしてのコーディネート」ではなく、CODEで一律に決められていた服装だったというのもちょっと驚きだった。ちなみに、このエージェント服含めてノクスの衣裳はこの話の中だけでも4回(!)も変わるが(エージェント服、ノクス通常衣裳、現実のノクスの白衣裳、ザ・レディの元に居た時の黒衣裳)そのどれもが演者の古川雄輝さんにまた大変お似合いで、古川さんのスタイルの良さや着こなしのおシャレさを公式が完全に理解して最大限活用している感じや、ノクスというキャラクターがヴィジュアル要員としても手厚く推されていることが伝わってきて何だか嬉しかった。夢の世界観に合わせた毎回個性的なねむのスタイリングもそうだが、是非一年の終わりにはスタイルブックなどで網羅的に衣裳を拝見したいものだ。

・遂行するのは「俺のミッション」

 組織には組織の大義があり、それは時に人命よりも優先されることがあると、2人分の紅茶を入れながらまるで宥めるように莫に言い含めるゼロ。10、11話の名画ミッションの際、内部に隠された国家機密奪還を最重要任務とするゼロと、既に現実の体にまで腐食が始まっていた渥美の命を重んじた莫との間で既にプライオリティーの付け方に誤差が生じていたこともあってか、ゼロにそう言われても「そんなのありえないだろ!この組織どうなってんだよ!」などとブチギレたりすることもなく、逆に「所詮、俺たちエージェントは命令に従うただの数字だよな」と何かを諦めたような声で呟くと、「だけど俺はな、苦しむ人々や魅力的なヒロインを守って、スマートにカッコよく悪に立ち向かう、そんなエージェントに憧れた……俺は、俺のミッションを遂行する」と、「使えるものは遠慮なく使わさせてもらう」とばかりに完全に割り切った態度でドロッパーから次々とカプセムを捻り出す莫に、メンタル面での成長をまざまざと感じさせられる。「エージェントの使命は白黒では割り切れないグレーな仕事だ」というゼロの台詞があったが、ある意味でこの瞬間、莫はゼロが言ったのとは違う意味で「グレーなエージェントという海の泳ぎ方」を知ったのかもしれない。

 一方、前回ノクスの悪夢で自分は何をすべきか定まっていなかったねむだが、莫との戦いの中で彼の中にも恐れがあることを知った彼女は、ノクスが潜むロッジに向かい対話を試みる。ロッジの寝室の壁に寄りかかり、迫り来る暗闇に背を向け縮こまるノクス。その表情はいつも冷静で凛々しい彼とはまるで違う、幼ささえ漂う怯え切った面持ちで、このギャップに心臓をドスッと射抜かれた視聴者も多いのではないだろうか?
 
ノクスにどうしてここにいるのかと問われ、「そういう世界観だから……かな?」と応えるねむ。いつも努めて明るく「そういう世界観だから~!」と冗談めかして言っているお決まりの台詞なだけに、こうして寂しそうに微笑まれると、その後の「私は夢にしか居られない」という言葉も含め、彼女が置かれている現状がいかに残酷で哀しく、だからこそ今の自分にノクスが言えることは「でもあなたは違う。ここに居るべき人じゃない」なのだと決めたねむの思いやり深さが沁みた。

・明けない夜はない

 自分にとって「抹殺すべき敵」は誰なのかを悟った莫は再びノクスの悪夢へ侵入し、彼に「俺の敵はあんたじゃない」と告げる。「悪夢は憎めど……夢主に罪はない!」と。これまでエージェント:セブンとして様々なミッションを遂行してきた莫だが、いつだって大切にしてきたのは夢主の心と命が救われることであり、願いはたったひとつ、「いい夢見られますように」なのだ。そう考えると、莫がこの答えに行き着くのはある種当然ではないだろうか。ノクスがどれほど自分を妨害してくる人物であれ、悪夢に苦しんでる時点で莫にとっては「救出対象」なのだ。莫の言葉を聞いたノクスは一瞬意外そうに瞬きをしてみせるが、次の瞬間、周囲には「目覚めなどない……永遠に夢に閉じ込めてやろう!」と不気味な声が響き、2人の元にひたひたと暗闇が忍び寄る気配が。思わず身をすくませるノクスに莫は「ノクス!」と名を呼ぶと、力強く語りかけ始める。「誰にだって怖いものはある……俺にもあった。でもな……明けない夜はない。いつか光が差して、朝が来るんだ」と。この時の、莫役 今井龍太郎さんの輝くほどにまっすぐな眼差しと、もう半ば諦めかけながらも探し続けた一筋の光が突如目の前に現れ、それを「信じられない」とでもいうように眩しそうに見つめるノクス役古川雄輝さんの表情の対比が素晴らしかった。
 
夢というモチーフ上、夜が舞台となることが多い『ゼッツ』において、この「明けない夜はない。いつか光が差して、朝が来るんだ」という莫の台詞は、作品全体が繰り返す「救済」のテーマになってくるのではないかと、そんな風に思わせられるほどにヒロイックで切なく、どこか神々しくも感じられる美しいワンシーンだった。

 ドライバーにプラズマカプセムを装填し、仮面ライダーゼッツ イナズマプラズマに変身した莫は稲妻よりも速い先行攻撃で強烈な一撃をシャドウナイトメアにお見舞い。黒い靄となってあちこちに移動するシャドウナイトメアを、左手に持ったイナズマブライスターの射撃で確実に仕留めつつ、怪人態となれば右手に握ったブレイカムゼッツァーソードモードで切り込む、二刀流のゼッツの立ち回りが見ものだ。また、先週から登場しているシャドウナイトメアも、スーツアクターさんの高い身体能力が生かされたキレのある動きで目を引く。全身に無数の目玉が張り付いているスーツは百目タイタン様(筆者が好きな『ストロカンガー』の敵幹部)好きの筆者とてはかなりグッとくるデザインだ。

 さらに注目したいのはここからだ。ノクスをナイトメアの攻撃から守るためゼッツはまずエスプリムバリアに姿を変え、その後、パラダイムグラビティ、フィジカムインパクト、そして再度イナズマプラズマと、まるで放送開始からここまでの戦いをプレイバックするかのような連続フォームチェンジが展開されるのだ。アツい。アツすぎる!もうこんなの怒涛のヒットソングメドレー、いや、紅白歌合戦ではないか!!そして極め付けはイナズマプラズマのパワーアップフォームとなる プラズマブースターの登場。手足とマフラーに付いた虹色に尖ったモジュールはゼッツのマスクの両頬にも付き、どこか髭を思わせる印象なのがまた面白い。まさに高速の落雷のごとく、キックが決まる瞬間にゼッツの体が一瞬見えなくなるという粋な演出と共にシャドウナイトメアは爆散。莫のミッションは見事コンプリートとなる。

 「ひとつだけ答えろ。なぜ俺に忠告を続けた?」戦いの後、莫はそうノクスに問う。どうやら我々視聴者同様、莫自身もノクスが自分にカプセムやCODEの裏側を明かしていたのは彼の良心からだったからだと気付いていたようだ。それにノクスは「組織は憎めど、エージェントに罪はない」と、先ほどの莫の台詞を引用して返しつつ、「セブンを守るために……」そうねむに嬉しそうに言われると、照れ隠しなのか「何も知らない愚かなエージェントにただ呆れていただけだ」と急に踵を返す、そんなシャイなところももはやちょっと「可愛い」と言いたくなってしまうのは筆者だけだろうか。これもクールライダー翻訳機を通せば「あなたが何も知らないようだったので大変心配していました。これからも色々と大変だと思いますが頑張って下さい」って意味なんでしょうか!?ノクス先生~!!

・恐怖への決別とカームマインドリング

 と、ついついテンションが上がってしまうが、ここで歩きながらノクスがこれまで右手の薬指に着けていたスイングリングを外し、道に捨て去ったシーンについて注目したい。これは公式サイトいわく、上堀内監督が考案した「ノクスがナイトメアに囚われていた今までの自分と決別するための演出」だそうだが、よくよく見返してみると、初めてリカバリーカプセムの力を見た時や、自分を襲い続ける暗闇に怯えている時などもノクスはこの指輪を触る仕草をしており、モチーフが外側ではなく手の内側にあるという特殊な構造も含め、この指輪は装飾品ではなく、暗闇の恐怖に耐えながら戦いを続けてきたノクスにとってのカームマインドリングであったのかもしれないな、などと思ったりもした。

 目を覚ました莫は明け放しのクローゼットを見て、美浪が己のエージェント業について知ってしまったことに気づく。美浪はそれに反対することはなく、むしろ兄を引き続き心配しつつも応援してくれる風だったが、ゼロが莫に言った「妹にあまり心配かけるなよ」は、莫に対するちょっとした親切心かと思いきや、「こちらがその気になればいつでもお前の家族を始末できるんだからな」という意味にも聞こえて震え上がってしまった。秘密を知ってしまった美浪は果たして最後まで無事でいられるのか。ゼロもCODEもこえーよ!!でもゼロはそんな冷酷なとこも好き!たまらん!

 さて、ノクスとも和解し、来週からは仲間として共闘するのか? と、思いきや、先述した通り彼は「ザ・レディ」と呼ばれる女性が率いる、CODEが存在しない自由な世界を目指す謎の組織に所属していることが明らかになる。小鷹さん、ブラック企業に「この組織クソだな!」と愛想をつかせて退職届だけ置いて失踪したものの、なんやかんやあって同業種のまた胡散臭い企業に転職しちゃってるのが何とも生粋のワーカホリックっぽくてマジで心配である。ザ・レディが住まう悪夢の部屋は紫の蝶が舞い踊り、花々が咲き乱れる庭園、あるいは魔女の家のような場所で、セットの作り込みが細部に渡りとても美しかった。無論、荘子の「胡蝶の夢」を誦じながら大きな野望を語る、美村さん演じるザ・レディの存在感も圧倒的だ。放送終了後に解禁された新章ビジュアルには仮面ライダーになったノクスと、これまで存在が伏せられていた「3」「5」「6」のエージェントの姿も見える。登場キャラクターが増えていけば多人数ライダーがお得意の脚本の高橋悠也先生の筆もますますのってくるだろうし、年明け以降の新章への期待は膨らむばかりだ。あ~~~!!『ゼッツ』バリ面白くなりそう~~~~!!!今後が楽しみすぎる~~~~!!!

■今週のゴジュウジャー

・ゴジュウ流クリスマス回!

 昨年の『ブンブンジャー』のクリスマス回は「この世界のあまねく人々の元にサンタはやって来る」という「これぞスーパー戦隊!」と言いたくなるような夢にあふれたエピソードだったが、今週の『ゴジュウジャー』43話「決戦クオン!天使からの贈り物」は、クリスマス回と言えどあくまで『ゴジュウジャー』流。クオンと吠の最終決戦とテガジューンの行く末を並行して描きつつ、クオンはもう一度吠の兄として、テガジューンはテガソードとグーデバーンと共に家族として「生まれ直す」という本作のテーマど真ん中を行くドラマが紡がれ、同時にそれが「愛する家族と一緒にいられることが一番の贈り物」というオー・ヘンリーもビックリな王道のクリスマスストーリーとしても仕上がっているところに脚本家の井上亜樹子先生の手腕を感じて痺れる。もちろん、それは「ロボがロボに手編みのマフラーを編む」とか「吠を庇って死んだかと思われたクオンがベリアロク、あるいは白虎真剣ばりの喋る剣となって蘇る」というとびきり「変」な結末も含めて『ゴジュウジャー』流ということなのだが……。あんなオチ、予想できるわけないだろ!

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