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ニチアサの話がしたい vol,271


■今週のゼッツ

・新春の悪夢は「推しの失踪」

 新年明けましておめでとうございます。などと常識派ぶって書き出してみたものの、毎年言っているが自分は本当に正月に興味が無く、今年などは風呂に入っているうちに年を越していたという体たらくである。仕事と趣味が高じて、若い頃から恥ずかしげもないほどどっぷりアメリカかぶれな父の影響で、我が家では長年正月よりもクリスマスを大々的にやっているというのもあるし、特撮オタクの私としては1月1日なんかよりも新しいライダーやスーパー戦隊が始まる9月や2月のほうがよっぽど「新年」を感じるし、年末年始問わず締切に追われている漫画家の柴田亜美先生がエッセイ漫画の中で繰り返し「1月なんか12月の続き」と恨めしそうに描くのを読んでいると、やっぱり大晦日の23:40に感じるのは「そろそろ年明けだな!」ではなく「そろそろ風呂でも入るか~」なのである。ありがたいことにお仕事の方も(それはもう、抱えてる案件の数を改まって数えたくないほどには……)忙しくさせていただいているので、いつまでこの週刊連載が続けられるかどうかも分からないのだが、この連載が無くなるとまず誰よりも私自身が言いたいことを言える場所がなくなって困るので、できるだけ徹夜しないように気をつけつつ、今年も『ニチアサの話がしたい』にお付き合い頂ければ幸いである。

 さて、話を『ゼッツ』に移そう。新年一発目の今週Case17「奔る」は、ねむの新春ファンミーティング会場からスタート。番組史上初のキャラクターソング「ねむねむNEMOTION」をBGMに、莫がクールでスマートな「コードナンバー:セブン」の姿のままピンクのペンラを両手に持ってオタ芸を繰り出すちぐはぐっぷりが面白い。また、完全に余談だが、今井さんは年末に『てれびくん2・3月号』の付録「仮面ライダーゼッツ超ゼツすごろく」を親戚全員でやるもビリになり、さらに年始から鳥刺しにあたって腹を壊すという結構散々な正月休みだったらしく、なんて可哀想な……と思いつつちょっとその不運っぷりがいかにも莫らしくてちょっと笑ってしまった。さすが、万津莫役にこの世でただひとり選ばれた逸材である。

 しかし、ファンイベントはねむが姿を消してしまったことにより急遽中止。現実で失踪中のねむは夢の中でも探されることとなってしまう。夢主はねむのファンである北里春。春はねむが失踪したVIP専門の病院で働く看護師であり、彼女は自分たち病院スタッフの不手際でねむが居なくなってしまったのではと4年間ずっと苦しんでいたという。この連載を長く読んでくださっている方には改めて説明する必要もないと思うが、私もちょうど4年前に突然推しが居なくなってしまった経験があるので、正直今回のストーリーは、おおよそ制作側が意図していない部分で勝手に胸が痛んでしまった。去った事情があるのは重々承知なのだが、やはり「この人だけは自分の未来に居てほしい」と願ったその人が、ある日理由も告げずに忽然と、まるで最初から居なかったかのように姿を消してしまうことの衝撃や、そこから延々と続く「自分に何かできることは無かったのか」と「いや、あるはずもなかった」との間を往復しつつひらすら自分の無力感に打ちのめされながら、推しの居ない日常を送るというのは、想像以上にこたえるものだ。ご多聞に漏れず私自身がそうであったように、春もそりゃ悪夢のひとつやふたつも見るというものだ。

・「寂しさ」を纏う、司令官の背中

 一方、現実のゼッツルームでは富士見となすかが美浪特製のお雑煮に舌鼓を打っていた。その様子があまりにナチュラルすぎて年末に富士見と莫が仲違いしたままだったことが完全に頭から抜けてしまい、富士見がなすかに促されて気まずそうに謝り始めてから初めて「あ~!そういえばそうだったね!?」となってしまったのは私だけだろうか。なすかと美浪がそれぞれ富士見と莫を「ちゃんとしなさい」とばかりにバシバシ蹴ったり叩いたりするのは「不器用な男の手綱を握ってやってるのは結局オンナなのよ」というような、いわゆる「さす九」っぽいジェンダーロールを感じて個人的にはあんまり気持ちよく笑えないシーンだったが、まあ何にせよ、美浪も加わり怪事課と万津家が強固なワンチームとなったのは喜ばしいことである。病院での潜入調査に莫と美浪が連れ立って行くシーンなどは、「兄妹スパイ」っぽさもあって大変可愛らしかった。

 ドラマパートとしては、命令に背き、独断でノクスを救った莫を組織の裏切り者としつつ、その責任を取る代わりにCODEの秘密を教えてほしいという莫の真摯な申し出を受け入れる司令官ゼロのシーンが、筆者がゼロ推しという贔屓目を抜きにしても印象深い。かつては「ブルルルル~」などとエンジン音を声に出しつつ四つん這いになるゼロに跨り、「いや、アンタに乗ってどうすんだよ!」とノリツッコミまでしていたくらい微笑ましい関係だった莫とゼロが、それぞれの大義と正義の間ですれ違い、冷え切った仲になってしまったのは1話から『ゼッツ』を観ていた視聴者としてはやはり心苦しいもので、その哀愁や莫に対する親心めいたものが、ゼッツルームで佇むゼロの背中からも漂っているように見えてしまった。無論、ストーリー上でもゼロのボディーはあくまで遠隔操作されているロボットなわけだし、撮影で使用されているゼロのロボスーツやマスクも喜怒哀楽で色や表情が変わったりはしないのだが、それでも「なんだかゼロ、さびしそう……?」と思えるのは、ひとえにスーツアクター永徳さんの表現力の賜物ではないだろうか。莫にもう一度チャンスを与えることを決め、その信頼の証のように引き出しから大事そうに取り出したゼッツフォンを莫に手渡し、「バイクも人生も同じだな、どちらも前も進んで行くしかない」と、ちょっと困ったように、あるいはちょっといたずらっぽく微笑んで(繰り返しになるが、そう微笑んでいるようにしか見えないのだ!永徳さん凄すぎる……!)莫の肩にポンと手をやるゼロのオトナなユーモアにあふれた優しさに本当にたまらない気持ちにさせられる。カッコいい……!!ゼロ、カッコいいよ~~!!それに対し、莫が微笑みと共に漏らした「アンタらしいジョークだな」というセリフが、先述した四つん這いになってバイクを真似た時に言ったゼロの「just a witty joke.(ウィットに富んだジョークさ)」と時を越えて繋がり、2人の信頼関係が修復されたことを示す、粋なシナリオ運びである。

・ノクスvsゼロ!

 Bパートの見どころとしてまず挙げたいのは、童話『赤ずきん』に倣って狼のナイトメアの腹の中に収められてしまったねむをゼッツが追うバイクチェイスシーンだろう。バイクに乗りながらのゼッツへの変身や、横並び、あるいはすれ違いざまの攻防など、体を震わせるような生っぽいバイクの走行音も含めて、新年に相応しい何とも華やかなシークエンスである。『ゼッツ』はこれまでも挑戦的なバイクアクションを何度か撮っており、その度に言っているような気がするが、バイクに乗ってる仮面ライダーって何でこんなにカッコいいんだろうね!?

 そしてクライマックスは因縁深いノクスとゼロの一騎打ち。この連載でも常々「ノクスとゼロが戦うことになったら永徳さんが2倍に増えて私が助かる!」などとふざけたことを言っていたのだが、まさか年明け一発目の放送でそんな私の妄想めいた願望が叶うとは思わず、リビングで思いっきり変な声を出してしまったのはここだけの話だ。もちろん、実際に永徳さんが2倍になったわけではなく(当たり前だ)公式サイトいわく、ノクスナイトvsゼロ戦でゼロのスーツアクトを務めてくださったのはJAE53期の梶山翔太郎さんとのこと。個人的には『ブンブンジャー』41話で「怪人スーツのまま器用にサッカーボールを転がす」という超絶技巧を繰り出したサッカーボールグルマー役が記憶に新しいアクターさんだ。その時も動きにキレがある方だなとは思ったが、今回のゼロ役も本当に素敵だった。「君は君の仕事をしろ」とゼッツにナイトメアを追わせ、自らブレイカムゼッツァーをスラリと引き抜く鋭い眼差し。ガツン!と大きくノクスナイトと鍔迫り合うと、クルリと剣の角度を変え、ブレイカムゼッツァーの刀身でカプセムを回すテクニシャンな一面。鮮やかな動きで一、二、三度と切り結び、ノクスナイトの胸元からナイトインヴォーガーを弾き飛ばすまでの一連は、「普段あれだけカッコいいゼロが戦うのだから、それはそれは気品に満ち溢れ、そして誰よりも強くカッコいいのだろう」というファンの期待どおりの……、いやそれを大きく上回る素晴らしいお芝居であった。

・仮面ライダーノクス、覚醒!

 さらに、今週最後の目玉はノクスがシャドウカプセムと新たなドライバーを使い変身した、仮面ライダーノクスのお披露目である。もうこれは一も二もなく「カッコいい!」の一言であろう。左右非対称のデザイン、悪夢に囚われていたノクスナイトが「覚醒」したのを示すかのように複眼を覆っていたアンテナが「開眼」する演出など、今回の変身に至るまでにノクスナイトという擬似ライダーを挟んだことによって、よりその存在が魅力的に見える文脈を持っているのもイカしている。

 ノクスは自身の影から剣を引き摺り出すと、それを振るって一方的にゼロを叩きのめし始める。ここからゼロは一転して劣勢となるわけだが、地面を這い、体からバチバチと火花を放ち、目をチカチカさせて嬲られていくゼロの姿は悲惨でありながらなぜか無性に艶っぽくもあり、ぐらっと倒錯的な感情に陥ったのは決して、決して筆者だけではないだろう。(だよね!?みんな正直になれ!!1人にするな!!)
 
その後、ブーストカプセムを使って「ウルトラダイナマイト」のごとく全身を発火させながら仕掛けた最後の攻撃がノクスのイレイス能力によって無効化。そのまま強烈なパンチで胸からコアを引き抜かれ、弾着に火花を激しく散らしつつ、2階のバルコニーから真っ逆さまに背落ちしたシーンは今週のハイライトであろう。しかもただの俯瞰映像だけでなく、カメラも一緒に高所から落ちている映像も一緒に流れており、合成で消しているのか何なのか、落ちてきたゼロを受け止めるマットも見えないし、「一体どうやって撮ってるの!?」と思わず身を乗り出して観入ってしまった。葉山廉一郎監督は毎回ドラマティックな絵作りが印象的だが、今回もかなり心揺さぶられてしまった。新年早々推しが爆発したのはショック極まりないし、「永徳さんのキャラが永徳さんのキャラと戦って永徳さんのキャラが勝って永徳さんのキャラが負けたの永徳さんのファンとしてどんな顔したらええんだ!?」という混乱もあったが、「これぞ仮面ライダー!」と唸りたくなるような、こんなにも激しく美しい散り方ならば、敢えて拍手を送りたい気分にもなってくるから不思議だ。(もちろん、まだゼロ復活のチャンスを諦めているわけではないが……)
 莫の中に一度は夜明けの光を見出したはずのノクスは再び彼と争うことになるのか。遠隔操作のボディーを失った「司令官」はどう動くのか、そして「赤ずきん」ねむの運命は……。次週Case18「逐う」を座して待ちたい。

■今週のゴジュウジャー

・折リジナル戦隊オリガレッド!

 新番組『超宇宙刑事ギャバン インフィニティ』の初回放送日が2月15日と発表され、現在放送中の『ゴジュウジャー』は今週の第44話「僕こそレッド!折リジナル戦隊、見参!」を含めて残り6回であることが明らかになった。
 
忠誠を誓ってきた女王や、仲間の幹部たちが次々と人間界で次の一歩を踏み出す中、誰よりも部下想いであるからこそノーワンワールドを離れられなくなってしまったファイヤキャンドルや、未だ影を潜めている「厄災」クラディスとの対決、指環争奪戦の行方など、畳むべき風呂敷内にあるトピックスをざっと思い浮かべてみても余裕で6話分くらいは要るのでは!?と素人考えでは思ってしまうが、そのうちの貴重な2話を使い語られるのは、昨年一般公募した「きみが考える『スーパー戦隊』レッド」で見事ナンバーワン賞に選ばれた『折リジナル戦隊オリガレンジャー』のオリガレッドとのコラボ回なのだから驚きだ。しかも、これがまたいわゆる「公募企画モノの賑やかしゲスト回」に収まらず、オリガレッドを「折り紙モチーフだけに折り目正しい、やや真面目すぎる性格の青年」として描くことで、不良じみたレッドの吠との交流を通し、双方の未熟さや魅力、果ては「スーパー戦隊が目指し、望まれた『正しさ』とは何だったのか」という50年に渡るシリーズを締めくくる総括的な部分にも踏み込んでいるところが、さすがスーパー戦隊脚本の名手、荒川稔久先生の一作という感じだ。公式サイトいわく、最後に残ったセンタイリングがカクレンジャーだったのは、玩具の発売時期などによる全くの偶然だったというが、折り鶴の戦隊ヒーローがリーダーの資質を問うというメインストーリーの中で、シリーズ初となる女性リーダー「鶴姫」を中心にチームが編成されたカクレンジャーが登場するというのは、特撮オタクにしか伝わらない例えで申し訳ないが、『オーズ』のメダル争奪面の末、シナリオ的に偶然プトティラのメダルが3枚主人公の映司の手元に残ったくらいの奇跡ではないだろうか。

・2人のレッド、2つの「正しさ」

 戦いの末、剣の姿になった兄を懐に忍ばせ、(守刀のような神秘的なニュアンスで書いてしまったが、実際のところはどちらかと言うと『プリキュア』の妖精枠に近いのがウケる。味方になったお兄ちゃんがラクレスじゃなくてプリキュアの妖精になることあるんだ)今日も今日とてバイトに励む吠。様子を見に来た禽次郎と共に、ブーケが新たな従業員として加わったテガソードの里に戻る途中、巨大な折り鶴の中から突如姿を現したオリガレッド。なんと今回のエピソードのためだけに音楽の沢田完先生が書き下ろしてくださったという絢爛で力強いテーマソングと「真っ赤な太陽燃えてる限り、必ず眩しい朝が来る!夢と希望の明日を願う。折ジナル戦隊、オリガレッド!」という「進め!ゴレンジャー」の歌詞を彷彿とさせる名乗り上げが初っ端からアツい。

 最初に目を惹くのはやはりオリガレッドのデザインだろう。レインボー造型の皆さんが細かいところは手を入れてるとは思うが、弱冠10歳のLucaくんのデザインがいかに秀逸なものであるか、三次元化されることで殊更よく伝わってくる気がする。バランスの取れた色彩感覚、見せたい部分を際立たせつつ遊び心のあるモチーフを散りばめる美的センス、松浦プロデューサーも「Lucaくんの才覚と情熱に、ただただ平伏してしまいました」と公式サイトに記していたが、私も感心しきりであった。オリガレンジャーは『ゴジュウジャー』世界とは異なる世界で「オリジナル」のスーパー戦隊として活躍しているという設定なだけあって、見た目の完成度だけでも「これが2月から始まる新戦隊です!」と言われても全く違和感ないレベルだが、それはキャラクター設定も同様だ。ただ品行方正なだけでなく、「どうせ君は、折り紙もロクに折れない男だろ?」などと初対面の吠に対して上から目線の煽りをかましてくる人間的な未熟さが垣間見えるのも、往年の戦隊ファンからしたら「この性格がこれから一年でどう化けるかな~」という期待ポイントにしか見えない、というところも「スーパー戦隊レッドあるある」として芸が細かい。

 今回メガホンを取った坂本浩一監督がこだわったという、少年たちの喧嘩を上手く仲裁できないオリガレッドと吠のシーンも物凄く良かった。折り目の正しさを大切にするオリガレッドだが、現実の対人関係はそう綺麗事ばかりではない。子供同士とはいえ、目の前で生々しく感情のぶつけ合う人たちに対してどう接していいかまるで分からなくなってしまうオリガレッドの人間らしい一面と、泥臭いスラムを生き抜いて培った抜群の機転と優しさと、ほんの少しの自己犠牲精神であっという間に場を収める吠の、悪性と善性を併せ持つ彼ならではのヒロイックさが際立つこの場面は、2人のレッドの深掘りシーンとして機能しつつ、「スーパー戦隊のレッドに必要なリーダー性やカリスマ性とは一体何なのか」という普遍的な問いにまで昇華しているのが見事だ。これだけしっかりしたヒーローを作ってもらえると、「我々が観ることはできないとしても、別の世界のどこかで51作目のスーパー戦隊『オリガレンジャー』は存在しているのだな」と思えて、シリーズ終了の報に沈んでいた気持ちも少しだけ軽くなる気がした。ただ、それと「『折リジナル戦隊 オリガレンジャー』をこのまま一年間観たい」という気持ちも両立すると思うわけで……やってくれよ……『オリガレンジャー』一年やってくれよ!!

・この世界は「正しい」レッドを求めてる?

 オリガレッドは「全てのスーパー戦隊に正しくあってほしいと願う全レッドの代表」であるとし、この世界のリーダーたるレッドとしてキングオージャー指輪の持ち主である堤なつめに巡り合うが、堤は指輪の力に頼らず自らの夢を叶えることを決め、吠がレッドにふさわしい男になったらキングオージャー指輪を渡してほしいと頼まれたという。2話で吠から返してもらったハンバーガー代250円分の、六文銭にはひとつ足りない5枚の50円玉を紐に通して肌身離さず持ち歩き、「遠野さん……いずれ、時がくれば戦おう……」と、再登場を匂わしに匂わせまくっていた堤なつめが、ここに来てナレ退場とは思いもよらず「えええ!!」と声を上げつつ、オリガレッドの「全てのスーパー戦隊に正しくあってほしいと願う」という言葉には思わず「皮肉だなあ~」と苦笑してしまった。

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