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ニチアサの話がしたい vol,272


■今週のゼッツ

・ゼロだけがいない世界

 今週の『仮面ライダーゼッツ』Case17「逐う」。筆者を含めてだが、ゼロファンにとっては実にほろ苦すぎる一話であった。前回ノクスナイトにメモリを奪われ、ボディーを破壊されてしまったゼロ。それはブラックケースとなり、現実のゼッツルームのコードゼロイダーまでもが大破させられてしまう。あくまでバイクのパーツというのは分かっているのだが、ゼロの面影を残すカラーリングの部品が無惨にもバラバラになっているのを見ると否が応でも胸が塞いでしまう。「Track the missing.(失踪者を追跡せよ)」という毎週お馴染みのミッションの提示も、ゼロがいないのでタイプライターの音も、ゼロによる読み上げもないまま無音で淡々と画面に記されるのが何とも物悲しい。莫はリカバリーカプセムでゼロの修復を試み、見事復元させることに成功するが、「カプセムは夢を叶える力だから。ねっ!ゼロ!」と声を掛けても返事は来ず、取り戻せたのはあくまでバイクだけで、莫の、そして私たちの「司令官ゼロ」は帰ってこないというのが本当に切ない。先週の次回予告の段階でコードゼロイダーが映っていたし、何だかんだ言ってゼロはゼッツのバイクなのだから登場しなくなることはないだろうとどこかタカを括っていた部分があったが、「バイクとしては復活します。けどメモリは奪われたのでゼロとしての人格は消えます」の方がゼロというキャラクターの不在の存在を感じてずっとずっと悲しい。自分の夢を叶えてくれた恩人であり、共にミッションを遂行してきた相棒であり、仕事の上司であり、自分を駒として利用する組織の一員でもあったゼロとの関係性は一言では言い表わせないからこそ、その喪失にただ単純に「なんでだよ!」と泣き喚くことも「いい気味だ!」と笑うこともできない、複雑な莫の表情がまた荒涼とした寂寞感を誘う。「莫、大丈夫?」と心配そうに顔を覗き込む美浪に「夢の中なら無敵だから!」と精いっぱいの笑顔を向ける兄としての強がりがいじらしかった。

 司令官としてのゼロには本当にもう二度と会えないのか。「生け取りに」というザ・レディーの命に背いてでも彼のボディを破壊させなければ気が収まらなかったほどノクスに強い復讐心を抱かせたCODEにはどんな闇が隠されているのか。それはまだ誰にも分からないが、共に歩んできたパートナーの意志を引き継ぐように「行くぞ、ゼロ」と声を掛けてバイクを発進させた莫の「前に進むしかない」という思いを今は何よりも大切にしたい。スタータースイッチを押してもうんともすんとも言わなかったコードゼロイダーが動いたのは、決してブーストカプセムの物理的な力だけではなく、「これからもゼロと一緒に走っていきたい」という莫の新しい「夢」がそこに込められていたからだと信じたい。「信じれば、夢は叶うんだよ」。あの日、ゼロがそう言ってくれたように。

・ノクスと花の魔女

 ゼロを失ってしまった莫だが、入れ替わるようにゼッツルームへ行き来し始めた美浪が今度は莫のエージェント業のサポーターとして成長していくのもいい。4年前、ねむが謎の女医に攫われるところを目撃したのを言い出せなかったと打ち明ける春に、莫が思わず怒りそうになるのを美浪が制止し、「4年間隠していたのに、どうして話してくれたんですか?」と、春の心境の変化に寄り添って話を進めていくのを見ると、莫は殊ねむのことになると余裕がなくなるからこそ、きっとこのミッションは莫1人だけでは上手くいかなかっただろうなとつくづく思わされた。仕事ではダンボール先輩を見守り、プライベートでは兄を懸命に支える美浪。あらゆる面で「しごでき」な彼女だからこそ、与えるばかりの存在ではなく、彼女自身の望みや日常が見られるドラマにも期待したいという思いもある。美浪ちゃん、たまにはワガママ言っていいんだよ……!

 一方ザ・レディの狙いはCODEの居所を掴むことであり、そのためにノクスはねむのファンである北里春の「ねむちゃんが悪いやつらに攫われてしまっていたらどうしよう」という悪夢をウルフナイトメアを使って叶えさせ、ゼッツがねむ救出に向かうのを見計らってゼロを誘き寄せメモリを奪取させる作戦を遂行したのだった。もし万が一ゼッツがミッションに失敗し、ブラックケースが発生し現実のねむさえも死亡してしまっては、彼女の悪夢を叶えようとしている彼らにとっては元も子もないので、確かにノクスの言うとおり「危険な賭け」ではあったわけだが、だからこそそうなる前にザ・レディは「後始末」としてノクスにウルフナイトメア討伐を依頼したということだろう。ただ、これはザ・レディとノクスの思惑を映像を通して覗き見ている我々だから分かることであり、莫としては急に襲ってきたかと思えば今度はナイトメアを倒してくれたり、「小鷹さん本当に行動が読めないな……!」という感じだったんだろうなと思うとなんだか頬ましい。ノクスもノクスで自分を悪夢から救ってくれた莫に対しては少なからず恩義を感じているようで、「司令官なき今、なぜまだミッションを続ける?」「CODEに従うつもりなら攻撃対象とみなす」「お前の諦めの悪さがいずれ大きな災いを招く……」と、相変わらずノクスらしい語り口ではあるものの、これも要するに「利用されているだけだと分かっているのにまだCODEにいるあなたが心配です」「できればあなたとは戦いたくない」「あなたは無茶をするので余計なことに巻き込まれないか心配です」ということなのだろうなと思うし、小鷹の根幹にあるのはやはり元警官らしい正義感と優しさなのだなということが伝わってくる。

 また、今週はザ・レディが春やノクスに対して行ったように、人の心を操ったり読んだりできる能力を持っていることも明らかになった。ザ・レディ役の美村里江さんの静けさと華やかさを併せ持つ美しさや蠱惑的な声、優美な指遣いはまさに「魔女」といった雰囲気で思わず見惚れてしまう。ねむを攫う際は「小野川桜子」という偽名を使っていたようだが、街中で目眩がした莫を助けた際は「安堂小百合」と書かれた名刺を渡しており、そのどちらもに花の名前が使われていることから、同じく花の名前であるねむとの関連性を疑う声も少なくない。ザ・レディが現実でも莫に接触してきた理由は何なのか。謎は深まるばかりである。

・イナズマプラズマvsノクスナイト!

 アクション面では全編を通してイナズマプラズマの活躍が目覚ましく、オープニングアクトとなったウルフナイトメアとの1対1から見応えがあった。ウルフナイトメアを演じているのはクレジットを見る限り伊藤茂騎さんではないかと思っているが(違ったらすいません)ゼッツの攻撃をすり抜けるような鮮やかなパルクール技の数々は「さすが伊藤さん!」と拍手喝采である。

 東映特撮でお馴染みのダムで行われた後半のイナズマプラズマvsノクスナイト戦がこれまためちゃくちゃカッコいい。高速の雷と神出鬼没の影、どちらも触れられない力を扱っているフォームだからこそ、当たると思った攻撃が当たらず、逆に思わぬ方向からの一手で攻防が逆転するようなオフビートで意外性のあるアクションに眼が離せなかった。特に影を自在に操れるノクスナイトは、ゼッツの影から出現して足を掴んで引きずり倒したり、陰影を伸ばして「影の」イナズマプラズマを掴むことで実際の武器もゼッツの手から引き離すことができるなど、なかなかにチートな能力を持っていて面白い。クライマックスで見せたライダーキックも、ウルフナイトメアを四方から影で包囲、彼の影を足で滑らせて自分に引き寄せ、助走なしの回し蹴り一発で仕留めるという形で、スーツアクターを務める永徳さんの無駄な無い動きが猛烈にカッコ良かった。

 一度は消化されたはずなのに、ねむが意外とツルッと出てきたのには「ねむちゃん、体めっちゃ丈夫じゃん!」とちょっと笑ってしまったが、「自分が攫われる世界観の夢に抵抗できなくてごめん」と目を伏せる姿には、これが「夢の少女」たる彼女の辛いとこだよなとしんみりしてしまった。誰かの夢の中でしか生きられないけれど、では完全に自由にできるかと言われればそんなことはなく、自分の処遇を決めるのはあくまでも自分ではなく夢主というのは、籠の中の小鳥以上にどこまでも「囚われの身」だ。ねむちゃんが本当の意味で自由を手にし、自分の好きな服を着て、自分の好きな場所へ出かけ、好きなように生きられる未来が、どうかいつか、叶えられてほしい。

■今週のゴジュウジャー

・主役は全力の3レッド

 今週の『ゴジュウジャー』第45話「揃う指輪!全力レッドは仲間のために」の主役は一体どのレッドだったのだろう。一見するとヒーローの先輩として気さくに、そして力強く後輩たちに道を示したサスケだったような気もするし、表面的な折り目正しさに囚われていた自らの浅慮を省み、真のレッドとして一歩前に踏み出したオリガレッドだったような気もするし、最終的には「所詮自分はこの世のはぐれ者」だと無気力だった自分がここまで戦ってこられた理由の仲間たちの姿に見い出した吠だったような気もする。多分、そのどれもが正解で、敢えて結論を出すならばサブタイの通り「全力で生きる」レッドが3人とも主人公だったのだろう。その歩んできた道のりや性格や目的も全く違う3人のレッドそれぞれの個性を引き立たせつつ、オリジナルかそうでないかの垣根を飛び越え、「だから、スーパー戦隊って面白いよね」というシリーズの終幕にふさわしい、じんわりと温かな余韻を残す素晴らしい一話であった。ちょうど先日Vシネクスト『ナンバーワン戦隊ゴジュウジャーVSブンブンジャー』が発表されたばかりだが、後輩戦隊が実質的にいないことになるゴジュウジャーは、来年のVシネクストとしてこのオリガレッドとの話をやってもよかったんじゃないの!?と思うくらいの完成度の高さだったが、吠の「スーパー戦隊としてのレッド性」を外部から物語るエピソードは、クライマックスを目前に控える本編中でやるからこそ『ゴジュウジャー』という番組にとっていいのだ、という気持ちもすごくよく分かる。

・妖怪ナンバーワンバトル開幕!

 ビダルの猛攻に為す術もなく敗れ、意気消沈するゴジュウジャー一行。そこへ現れたサスケは、自分は30年ぶりに復活した妖怪大魔王を倒した後に(ここで『第三部・中年奮闘編』に触れてくれるの神……!)旅の途中で出会ったオリガレッドに頼まれて後輩の様子を見に来たといきさつを語りつつ、カクレンジャー指輪を賭けて「妖怪ナンバーワンバトル」を開催。いきなりの無茶振りに彼らがどう対応するかを見定めることに。結果的に、1人だけ恥ずかしがってしまう吠を何だかんだ言いつつ全員でフォローしつつ、全力で勝負に挑むゴジュウジャーたちの団結力を見て「やっぱちゃんとしたレッドを中心とした戦隊じゃねえか」と太鼓判を押すに至るのだが、このナンバーワンバトル(というか妖怪仮装大会)の様子がいい意味でアホくさくて最高だ。

 角乃はろくろ首、熊手は雪女、陸王は化け猫、禽次郎は子泣き爺、竜儀は河童、吠は一旦木綿のコスチュームを纏うが、これがちゃんと『ガクレンジャー』に登場したロクロクビ、ユキオンナ、バケネコ、カッパ、イッタンモメンの踏襲したデザインになっていたのが『カクレンジャー』の妖怪ファンとしては非常に嬉しい。これを読んでいるヤングの中には『カクレンジャー』未見の方の中も多いと思うが、『カクレンジャー』の妖怪軍団はデザイナーの篠原保さんらが「もし現代に妖怪がいたら?」というコンセプトのもと、ストリートカルチャーやアメコミの文脈を盛り込んだ形でデザインしており、そのオシャレさはシリーズ随一だと筆者は思っているので是非履修の際はそこもチェックしてほしい。禽ちゃんの子泣き爺だけはなぜか独自路線なのも爆笑だ。元々肌着を着ている予定だったが、演者の松本仁さんの肉体美を生かそうとなぜか脱がされたという逸話も面白い。坂本監督回と言えば「なぜ今脱いだ!?」というタイミングでガタイのいい俳優が無駄に裸になるという脱衣芸も十八番のひとつだが、今年は禽次郎がその枠に(しかも小泣き爺で)なるとは思わなかった。

 また、その様子をオリガミ空間(マジ謎空間!)で見ていたオリガレッドがテガソードと出会うシーンがあるが、ユニバース大戦で勝利を収めたテガソードに対し、オリガレッドがちょっとオタクっぽくなるのも良かった。「ヒーローとしての正しさにこだわるヒーロー」がヒーローオタク気質というところにブラクユーモアを感じつつ、憧れの人を前にちょっと挙動がおかしくなるオリガレッド役、橋渡竜馬さんのお芝居はとても可愛らしく、ささやかな場面だか彼の掘り下げとしても効いていたと思う。

・だから、スーパー戦隊は面白い。

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