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ニチアサの話がしたい vol,269


■今週のゼッツ

・Eliminate the enemy.

 初のパワーアップ形態「仮面ライダーゼッツ イズマプラズマ」登場回となった今週のゼッツCase14「神鳴る」。前回、巨大隕石型のナイトメアから人類を救うためにグラビティカプセムの力で発生させたブラックホールに自らも飲み込まれ、自身の夢の中に迷い込んでしまったセブン / 莫。不気味で幻想的な夢の演出、莫が悪夢を見始めるきっかけとなった幼少期の記憶からの脱出やノクスの悪夢への潜入と、次々に舞台が移り変わってゆく展開はまさに「夢」っぽく、やはりメイン監督である上堀内寿也さんが撮る回は、「ゼッツの原液」の味がする~!と思わずニンマリしてしまった。

 無限の夢の中で眠り続ける莫の頬をつねり「おやすみ、セブン」と起こしたのはねむだった。ねむの衣裳は1話で着ていた真っ赤なドレス。懐かしさと共に、なぜ今再びこのドレスに?と思ったが、星也の夢に出てきたねむが宇宙センターのガイド役としてギャラクシーなコスチュームで存在していたように、この「エージェント映画のマドンナさながらの真っ赤なドレス」は、さしずめ「莫の夢用のコスチューム」と言ったところなのだろう。また、このシーンでは莫をねむがお姫様抱っこしているのも面白い。体格差を考えたら現実ではそうそうあり得ない構図だが、不思議と莫を抱えている姿にそこまで不自然さが無いのは、9話でリカバリーカプセムを使ってゼッツを死の危機から救ったりと、ねむがここのところ頼れるセブンの相棒としても活躍してきたからだろうか。それにしても、2話でゼッツルームの天井から落下した際にもゼロにお姫様抱っこをされていたし、「無敵のエージェント」のわりに存外「THEヒロイン」仕草が似合ってしまうのが莫という役の、そして演者の今井竜太郎さんが醸し出す、そこはかとない「守ってあげたくなる感」の賜物かもしれない。

 そんな中、ゼロから下った次の指令は「Eliminate the enemy.」日本語字幕では「敵を抹殺せよ」と略されていたが、「Eliminate」には「根本から完全に、もう二度と存在しないように消し去る」「不要なものや有害なものを排除する」と言ったようなニュアンスがあり、「Defeat(打ち負かす)」や「Beat(やっつける)」と言った表現よりも冷徹で厳しい単語だ。ねむが「エリミネイト……」と復唱するカットもあったように、ゼロは(そして脚本の高橋悠也先生は)敢えて「Eliminate」という強い言葉を使っていることが窺える。

・落雷と令和の「天才塾」

 突如足場が崩れたりと、夢が安定していないのは莫自身が悪夢を叶える力であるカプセムを使ってこれからもCODEの元でエージェント:セブン、そして仮面ライダーゼッツとして戦い続けるかを自分自身の心が己に問いかけているからだと悟る莫。物語はここから「ねえ、聞いてもいい?セブンが初めて見た悪夢……」というねむの言葉に導かれる形で、莫の幼少期への記憶と移り変わってゆく。

 雷鳴轟く、とある雨の日の下校途中。小学生だった莫は不幸にも雷に打たれ、この日を境に悪夢を見るようになったという。ちなみに、第1話で莫が落雷に直撃するも奇跡的に無事だったことが新聞記事になっているカットインがあったが、新聞の見出しには「下校中の中学生、落雷被害」とあるので、今回の悪夢を見るきっかけとなった落雷被害とは無関係のようだ。ま、紛らわしい!また、これまでも莫の部屋に並べてあるスパイ映画のDVDには、よくレンタル落ち商品らしき半額シールが付いていたが、このシーンで莫少年が大事に抱えている「エージェント・エージェント」という本も古本なのか「200円」の値札が貼られており、小学生の莫が少ないお小遣いをやりくりして(もしくは両親不在のため家計が厳しく……?)集めていたんだなあという背景が見えて切ない気持ちになる。

 莫が見始めた悪夢の舞台は奇妙な学習塾。特級クラスに昇格した莫少年は、そこで謎のマーブル模様が映し出されたタブレットを前にヘッドフォンを着けて眠りにつくという不思議な授業を受けていた。そして何を隠そう、このクラスを受け持っていた教師こそ、コードナンバー:フォーとして活動していた頃のノクス / 小鷹政賢だったのだ!主人公とライバルキャラの関係性が「かつて夢の中で通っていた塾の先生とその生徒」って珍しすぎるだろ!という感じだが、昭和の仮面ライダーでは「通えば天才になれる。テストで100点が取れる」などと言って子供や親を唆し、悪の組織の一員となるよう洗脳すると言ったような話がよくあるので、昭和ライダー好きな筆者は「これが令和の『天才塾』……!!」と1人で密かに興奮してしまった。

 その頃、ノクスは廃墟となった学習塾で、自分自身の悪夢に棲み続ける「闇」、「シャドウナイトメア」と呼ばれるノクスナイトによく似た敵と戦っていた。光もまばらな薄暗い室内で、ランチャーモードにしたブレイカムバスターをブッ放し続けるスーツアクター永徳さんのスパイナーのごとき鋭い視線がカッコいい。が、シャドウナイトメアは「お前が(闇を)恐れている限り、我は永遠に消えぬ」と不吉な言葉を残し再び姿を消してしまう。今週初めて映った、点滴を受けながら眠り続ける現実世界の小鷹もどこか悔しげに首を左右に動かしていたが、ノクスにもノクスで抱えている問題があるというか、立ち向かわなければならない敵がいるようだ。

・手を伸ばす、光を掴む

  塾での夢が突如途切れ、再び落雷事故直前の現場に戻ってきてしまった莫は、ノクスによって「不都合な真実」として塾での重要な記憶をイレイス(消去)されていたことに気付く。個人的にハッとしたのは、落雷に怯えてその場にしゃがみこんでしまった莫少年の元へ走り、「大丈夫、怖くない」と頭を抱き抱えるようにして守ろうとするねむの姿だ。きっとこのまま放っておけば、再び莫少年は落雷被害に遭ってしまう。もちろん、莫はその後一命を取り留め、無事に大人になっていることもねむは分かっているのだが、それでもこうして目の前で1人の少年に不幸が迫まってくるのをただ見ているなんて彼女にはできず、莫少年と共に落雷に打たれる覚悟で彼を抱きしめに走ったねむの優しさと勇気に胸打たれる。宇宙船 vol190』のインタビューで「ねむは『誰かのために頑張りたい』っていう優しい気持ちがすごく強い子でもあるんです」と、演者の堀口真帆さんが言った一言をふと思い出した。

 そんな小さな傘の中で震える2つの背中を見つつ、莫は「自分の悪夢の始末くらい、自分で付けたい」と決意し、「そのためなら、悪夢を叶える力でも何でも、使ってやるよ!」と、2人をを押し退けて自ら落雷地点へ立つ。この時、赤、緑、紫、青と、これまで使ってきたカプセムの色がカットごとに画面にフィルタリングされる演出がオシャレだし、どことなく「内側に棲むナイトメアがカプセム越しに莫の選択を見つめている」ようにも見えるのが恐ろしくていい。迷いのない瞳でヴォイドカプセムを空に掲げる莫。そこに一閃の雷が落ち、自身の悪夢の始まりごとカプセムに吸収させると、莫は自分自身の力で新たなカプセム、「プラズマカプセム」を生み出すことに成功させる。1話で「お前は現実で生きるのが怖いのだ」と囁いてくるガンナイトメアに「勝手に決めんなよ……俺の心は、俺が一番分かってる!」と返して消えかけた電球を掴んで再点灯させる演出があったが、(偶然なのか監督の意図なのか脚本の指示なのかは分からないが)万津莫という人間はいつだって活路を切り拓く時には「莫が自分で手を伸ばし、光を掴む」のだなと感慨深くなってしまった。

・消された「深い闇」

 かつての自分の悪夢を乗り越えたことで自分自身の夢から脱出した莫は、真実を知るノクスに会うために今度は彼の夢に潜入。この辺りのスピーディーな展開は『頭文字D』もビックリの凄いドライブ感なのだが、確かに「莫とねむはこの後どうやってノクスの夢に入ったか」とかいちいち言葉で説明してると冗長になるのでこのぶっちぎり方が最善なのだろうと思う。(ちなみに、このシーンがノクスの夢の中だというのは、ねむの衣裳がノクスが悪夢の世界の部屋で寝かせている彼女と同じ白いブラウスとスカートのセットアップに変わっていたことと、夢の舞台が1話で莫がガンナイトメアと戦っていた時と同じ「夢の中の塾」の前だったことをここでは一応の根拠とするが、確証は無い)

 ノクスと交戦し、イナズマプラズマの力で彼を変身解除まで追い込んだ莫は、真相を話すようにノクスを問い詰める。芸歴15年を迎えるノクス役 古川雄輝さんの胸ぐらを新人である今井さんが掴み、感情をむき出しにして詰問するという、私が今井さんの立場だったら前日は緊張で眠れなくなりそうな緊迫感のあるシーンだが、莫の必死さと今井さんの懸命さはいい感じでシンクロし、またそれを「消されたのは……深い闇だ」と、相変わらずポエジーな言葉でかわしつつ(筆者は最近、こういうノクスの中二病語翻訳機を通して喋ってんのか?みたいな話し方にツボってるので大喜びしてしまった。こういう台詞はちょっとでも照れがあると途端にダサくなるものだが、古川さんが常に全力でやってくれるのもいい)「俺たちはやつら(CODE)の陰謀によって、人生を悪夢そのものに変えられた……自分の身は自分で守れ」と、莫を冷たく突き放しながらも、ある意味でCODEの策略に知らぬうちに巻き込まれてしまった莫に対するエール、あるいは自分の二の舞にならぬよう警鐘を鳴らしているようにも聞こえなくない一言を残して去っていく古川さんの芝居の巧さは流石という感じで、莫とノクスの今後の関係性について色々と想像が広がる凄く良いシーンになっていたと思う。先生と生徒、先輩と後輩、抹殺対象とその実行者。さまざまな関わりの中で、莫はいかにして「Eliminate the enemy.」というミッションを遂行させるのだろうか?

 一方、現実世界では莫がプラズマカプセムを作り出したことにより突如空が夜のように暗くなるという現象が起き、(その直前、車の中からクラクションで自分を呼ぶ富士見に「口で言えや……!」と直球の文句を吐き捨てるなすかに笑ってしまった。しっかり口が悪い南雲なすか、好きだ)心優しい兄を人殺しの道具として扱うゼロに美浪は怒りを露わにし、ゼロを平手打ちする。むろん、ゼロのボディは遠隔操作されているだけのロボットなので傷一つつかず、むしろ美浪の方が手を痛めてしまうのだが、それでも気丈に「私の兄はお人よしで……人助けを優先する人です!」とゼロを睨みつける南の横顔の向こうに、唯一の家族である莫との強い絆が見えてグッとくる。そんな想いのこもったビンタを浴びても、微塵も動揺せず「これも人助けだ。大義のためならダーティな任務も請け負う。それが彼の愛したエージェントの世界だ」と、まるで彼がこうなることは運命だったのだ、お気の毒に、とでもいうように美浪の方にポンと手を置いてみせるゼロの憎たらしさと冷酷さもまたいい。また、完全なる余談だが筆者は超ロングスリーパーで、起こされなければ普通に14時間とか平気で寝るので、美浪ちゃんが「もう16時間眠ったままです!」と激昂するシーンで「うっかりやりかねん」と思ってしまったのはここだけの話だ。

◾️今週のスーアクさん

・神鳴る閃光、イナズマプラズマ!

 TVの前で「うおおおお~~~!!!かっっっけ~~~!!!」と思わず声を上げてしまったゼッツ初のパワーアップフォーム、イナズマプラズマ。その姿はまず変身シーンからして鮮烈だった。ゼッツドライバーにプラズマカプセムをセットし、勢いよく回転させると全身から雷が放出。それを黒い靄をまとったモノクロのゼッツがスローモーションの中で追いかけ、次々と眩しい稲光をその身に受けながら変身が完了。全身を覆うメタリックイエローのカラーリングが何とも鮮やかだ。スローの解除と共に爆速でノクスナイトを吹っ飛ばしながら駆け抜けていき、止まった後でやっと複眼に黄色と緑に光る髄液が満ちていく、メリハリのあるスピード演出も効いている。

 もちろん、見た目だけでなく戦い方も斬新だ。「音を超えろ、光を超えろ!」という印象的な莫の台詞のとおり、イナズマプラズマの特徴は「超高速」。宙を舞った角缶が地面に着く、そのわずか数秒にも満たない間にノクスナイトにパンチやキックを叩き込み、相手はほとんど何をされたのかも分からぬうちに攻撃を喰らいまくっているという寸法だ。『カブト』のクロックアップや『W』の仮面ライダーアクセル トライアル、近年では『リバイス』のアルティメットフォームや『ガヴ』のマスターガヴなど、スピードに特化したライダーは様々おり、それぞれの時代の映像技術や監督のセンスで「速さ」の演出が異なるのが魅力だが、イナズマプラズマも先ほども挙げたようなスローモーションや早回し、カットインなどを効果的に使い、文字通り「目にも止まらぬ速さ」を表現しているのが面白い。

 目視できぬほど速いイナズマプラズマに対抗するため、自らの左右にある消火栓を壊し、吹き上がる水飛沫の揺らぎでゼッツの位置を見定めようとするノクス。細かい水飛沫が銀色のスーツに飛び散り、まさに「水も滴る良いノクス」だ。ノクスナイトは首元まで全て銀色なので、永徳さんが台詞を喋る時に喉仏がベコベコ動くのも本当にたまらない。同じことを『ゼロワン』のサウザーの時も、『ガヴ』のヴラムの時も力説した気がするが、こういうスーツアクターさんの身体性が感じられる映像を見る度に、スーツオタクの筆者は「やっぱりスーツには生身の人が入ってナンボだな!!」などと強く思ってしまう。

 ここまで観て、超高速の肉弾戦がイナズマプラズマの最大の武器かと思わせつつ、後半にイナズマブラスターなる弓形の専用ガジェットが登場したのも驚きだ。弓柄の左右には刃があり、近距離では剣として使える「近・遠距離両用」なのもアツい。『ガヴ』のニエルブの弓も双剣に分割できる2WAYタイプだったが、弓アクション界隈(弓アクション界隈って何?)での流行りなのだろうか。ガジェット自体には弦が存在せず、技を発動させると雷の弦がスパークしながら出現するというマジカルなエフェクトもカッコいい。

 必殺技プラズマサンダーはノクスナイトを破るほどの威力を持った一撃であったが、強い力にはそれ相応の代償が伴うのがヒーローの掟。イナズマプラズマから変身を解除した莫の体にはかなりの負担がありそうだった。闇を纏い、悪夢を抱えながら、深層心理を駆け巡るエージェントたちはどこへ向かうのか。年内放送ラストの次週、イナズマプラズマの更なるパワーアップ形態、プラズマブースターの登場を楽しみに待ちたい。

■今週のゴジュウジャー

・可愛く愚かな、母の愛

 今週の『ゴジュウジャー』第42話「永遠LIVE!リクオニストの花束を」。ブーケ嬢三部作最終章とも呼ぶべき今作は、紛うことなき「神回」だったと思う。それはブーケ役まるぴさん、陸王役鈴木秀脩さんの魂のこもった熱演のみならず、ここまで時間をかけて大切に2人の関係性を紡いできた脚本の井上亜樹子さんや各監督陣の愛情、ファンを含めた全員の「2人には笑顔でいてほしい」という願いが混じり合って作り上げられた感動であり、これも国内の実写ドラマとしては今やNHK大河ドラマと仮面ライダー、そしてスーパー戦隊だけになってしまった「1年番組」というコンテンツが持つ豊かさのひとつだなとしみじみ感じ入ってしまった。

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