みんなで動かない(毎週ショートショートnote)
高田さんちのカメのムウさんは、じつは地球を守っている。
それを知っているのはムウさんと、侵略に来た異星人たちだけだ。
同居猫のココアも、生垣に鼻先を突っ込んでくる隣家のマックスも、もちろん高田さんの奥さんも知らない。
今日も洗濯物がたなびくウッドデッキで甲羅干しをしながら、ムウさんは侵略者を監視している。
異星人たちは高田さんちの庭木のふりをしているのだ。
ムウさんは年寄りなので耳が遠いが、彼らの声はなぜか頭の中で聞こえる。
それによると、彼らは遠い遠い星から地球侵略の斥候として送り込まれたらしい。地球人をじっと観察していても怪しまれないように、植物に擬態することにしたとか、なんとか。
彼らは毎日、母星へ報告を送っている。それもムウさんには聞こえている。
『本日もくだんの地球生物に反応なく、ほぼ一日中動かなかった』
『我々の潜伏に気づいていながら、攻撃して来る気配はない』
『とは言え、友好的な態度もない』
『つまり何を考えているかわからない』
『引き続き偵察を続ける』
『なお地球人が厚手のものを洗濯すると、たいてい急に雨が降る』
初夏の風に揺れる葉擦れの音を甲羅で感じながら、今日もムウさんはウッドデッキで地球を守っている。
たらはかに(田原にか)さんの「毎週ショートショートnote」参加作品です。
『本作品はamazon kindleで出版される410字の毎週ショートショート~一周年記念~ へ掲載される事についてたらはかにさんと合意済です』
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