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トリプル開運日に、金運の神様まで歩く

大安、一粒万倍日、天赦日。開運日が三つ重なった日に、金運の神様のところまで歩いてきた。ご利益があったのかどうかは、まだわからない。わかっているのは、帰り道でさっそくお金を使ってしまったことだけである。まずはその顛末から。


——というのが漫画版のあらましだが、実際の道のりも書いておく。

久しぶりにマラニックに出た。午前中なら涼しいだろうと思っていたら、普通に暑かった。ただ風はあった。走りやすい、と言えなくもない。もっとも、マラニックと名乗ってはいるが、中身はほぼ歩きである。走っている時間より、立ち止まって写真を撮っている時間の方が長いかもしれない。

耳にはいつも通りオーディブル。『本好きの下剋上』の二十九巻。ローゼマインが戦の準備に突き進んでいるところで、こちらは坂を上る準備をしていた。向こうは神々まで敵に回す勢いだが、こちらは石段が相手である。

途中、神崎神社に寄った。長崎のパワースポットで、金運の神様としても知られている。しかも今日は大安、一粒万倍日、天赦日が重なったトリプル開運日らしい。その日に金運の神様のところへ歩いて行けたのだから、これはもう当たりの日と考えていいのではないか。

石段は苔むしていて、手すりの赤いペンキは半分剥げていた。上りきると、小さな赤い鳥居と、白い狐が向かい合っている祠がある。賽銭箱の代わりなのか、石の窪みに小銭が積んであった。雨ざらしの十円玉が、いい色になっている。私も小銭を置いて、手を合わせた。金運の神様に何をお願いするのが正解なのか、よくわからないまま拝んだ。


晴れてる時の神崎神社

神社からは海が見えて、対岸に長崎のモアイ像が並んでいるのが見えた。道端から見ると、モアイは後ろ姿しか見せてくれない。ところがここからだと、五体そろって正面を向いている。モアイの顔を見るには、海をひとつ挟む必要があるのだった。向こうは向こうで、ずっとこちらの神社の方を向いて立っていることになる。何か関係があるのかは知らない。ちなみに漫画のモアイはずいぶん南国の顔をしているが、実物はこの通り、曇り空の下にいる。

耳の中では、物語が戦に向かって加速していく。次の三十巻の配信は十一月の予定と出ている。四ヶ月も待つのか、と思うところだが、実は私は待っていない。Kindle版で完結まで読んでしまっているのである。つまり、この先どうなるかを全部知っている。知っているのに、聴いている。

結末を知っている物語を、なぜ聴くのか。自分でも時々考える。たぶん、読むのと聴くのとでは、身体の使う場所が違うのだ。文字で読んだときは一気に駆け抜けた場面を、朗読は逃がしてくれない。一文ずつ、声の速さでしか進まない。知っている話のはずなのに、坂の途中で足が止まることがある。

帰り道、セブンでアイスコーヒーを買った。最近この流れが定着しつつある。金運の神様に手を合わせた日の、最初の出費がセブンのアイスコーヒーというのは、我ながらスケールが小さい。買ってから、一粒万倍日は使ったお金も万倍になるという話を思い出して、少し青ざめた。青ざめたが、考えてみれば万倍になって返ってくる説もあるのだ。だったらこの百円ちょっとは、悪くない投資である。都合のいい方を信じることにした。


氷が溶けきる前に飲んでしまいたくて、帰りの坂は少し早足になった。物語はまだ、耳の中で続いている。

*漫画は新宇佐美式六号で描きました。

#エッセイ #漫画 #長崎パワースポット #マラニック #神社巡り #一粒万倍日 #天赦日


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