ホル玉丼は最後にできる
付け合わせだと思っていた目玉焼きが、実は最後の一手だった。長崎駅のアミュプラザ五階、天神ホルモンでの実食レポです。



長崎駅のアミュプラザ、五階まで上がると鉄板の焼ける匂いがエスカレーターの外まで漏れていた。天神ホルモン。長崎店がいつからここにあるのかは、実のところよくわからない。ただ、ちょうどハラミステーキフェアの最中だったらしく、おすすめメニューがあった。
運ばれてきたのは、ハラミと国産丸腸の定食。黒い鉄皿の上、奥には照りの強い丸腸がころころと並び、手前にはロゼ色のハラミが薄く切られていた。断面に霜のような脂と、黒胡椒の粒が散っている。もやしと青ねぎがちょうど真ん中で仕切りになっていて、盛り付けというより、境界線を引かれたような並びだった。

先に箸をつけたのはハラミ。噛む前から、繊維の向きが目に見えていた。歯を入れると、思っていたより抵抗が少ない。二度目の噛みで繊維がほどけて、脂じゃなくて肉そのものの甘さが奥から出てくる。柔らかいというより、噛むたびに形を変えていく感じ。
丸腸は逆だった。見た目はハラミよりごつごつして硬そうなのに、口に入れた瞬間、輪郭が消えた。噛むというより、圧をかけただけで内側からとろけていく。表面の香ばしさと、中のとろみの落差が大きくて、一口目は少し驚いた。予想していた歯ごたえが、来なかった。

卓上にはステーキだれと、甘辛の味噌だれのボトルがあった。仕切り皿に自分で注ぎ分ける。とろりと落ちる量の加減も、味を決める工程のひとつだった。ハラミにはステーキだれ、それにわさびを少し乗せて。脂の重さの上を、鼻の奥のツンとした刺激が通り抜けていく。丸腸には味噌だれ。甘さがとろけた食感をそのまま包み込んで、輪郭を出さずに終わる。同じ皿の上で、二つの肉がまったく逆の食べ方を要求してくる。もやしは味付けが控えめで、肉の合間に箸を挟むための、いわば呼吸の場所だった。
隣に置かれた目玉焼きは、最初はただの付け合わせに見えた。けれど食べ進めるうちに、これは最後のための布石だったとわかってくる。

皿に残ったハラミと丸腸の欠片、そこに黄身だけを割り入れて、ご飯にのせる。ホル玉丼のできあがり。タレの染みたご飯と黄身が絡んで、最初の一口とはまるで違う重さになった。同じ食材のはずなのに、順番を変えるだけでこんなに味が変わるのかと、少し驚いた。
味噌汁を飲み干して店を出ると、外はまだ真昼の明るさで、アスファルトの熱がそのまま足元から上がってきた。鉄板の熱と外の熱、続けて浴びると、どちらの熱だったか少し分からなくなる。
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