振り返ればそれはキッカケだった
ここに引っ越してきて間もないある朝、一階の庭に面した窓から、家の中をのぞきこむ姿があった。猫だ。
こちらがのぞかれているのに気が付くと、あちらも気付かれたことに気付いて、サッと窓から遠ざかって姿を消した。
翌朝、二階の部屋の窓から庭を見下ろすと二匹の猫がいる。昨日の猫と同じかは定かではない。
その後、この二匹が地域猫だと知る。
建物からすこし離れた、だけど、窓から見える庭の隅にエサを置いた。警戒しながらも二匹ともエサを食べた。
それからエサを置く場所をすこしづつ建物に近づけた。エサの位置が建物にすこしづつ近づくように、2匹の猫との距離も
すこしづつ近づいて、朝晩のごはんを食べて、庭でくつろぐ時間も増えてきた。薄手の羽織りものでも物足りない日が増え、季節は冬を迎えようとしていた。
本格的な寒さが来る前に、2匹の猫たちのための家を用意することにした。入ってくれるかわからないが、寒さがしのげるように、2匹が一緒に入れるくらいの段ボールを土台に、クッション性を高めるように発泡スチロールの板と保温効果のある銀色のシート、さらに、防水できるように、ビニールタイプのテーブルクロス、一冬超えられる程度の強度を目指して。見た目はどうあれ、機能性はなかなかの出来だったと思う。
2匹の猫は、1匹はチンチラみたいにふわふわで長毛のモフモフ猫、もう1匹は、典型的な白黒のハチワレ猫で、見た目は似ても似つかないがとても仲良しで、いつも2匹で現われた。
この頃には、この辺りの地域猫たちのボランティアをしている方から、このコたちが地域猫であることを聞いて、ノミ・ダニの駆虫薬をあげるようになっていた。地域猫として管理されているコたちには、ちゃんとノミ・ダニ対策の薬が与えられていて、この2匹は、うちで朝晩のごはんを食べるようになったので、駆虫薬も一緒に与えるようになったのだ。
我が家にも先住猫が2匹いた。この2匹も野良猫出身だが、地域猫という括りで猫にかかわるのは、このモフモフ猫とハチワレ猫が初めてだった。
後にこのモフモフ猫とハチワレ猫が、猫のしあわせを考えるきっかけとなった。
家猫と野良猫ならぬ地域猫と名付けられた外猫、子猫のときから人に可愛がられた猫と可愛がられたことない猫。
人間の考える猫のしあわせと、猫の考える猫のしあわせ。その正しい答えはきっとない。それでも、考えられずにいられない。
