それは突然やってくる猫も人間も変わりゆく暮らし
モフモフくんとハチワレくんが庭に現れてからおよそ1年、結局、モフモフくんは猫ボラさん宅の家猫になった。
1年前の12月の初め、本格的な冬を前に段ボールハウスを作った。1年後にはモフモフくんがいないなんて思ってもみなかった。
ハチワレくんは帰ってこない夜が増えたけれど朝には帰ってきて、ルーチンワークのゴミ捨ては欠かさずに一緒に行って、朝ごはんを食べるとどこかへ出掛け、夕方ごはんには帰ってきた。
帰ってくる度にモフモフくんの犬小屋ハウスを覗いて中に入って出てきては、やっぱりいないという顔をして私たちを見た。
どこにも行かない夜は猫ボラさん宅の方角をジッと見つめて耳を澄ましていた。
モフモフくんのためと思ったけれど、ハチワレくんの様子を見ていると胸が痛かった。
そしてこの年のクリスマス、アパートサバトラくんは虹の橋を渡った。
雨に濡れたところに気温が急に下がった。衰弱したアパートサバトラくんを猫ボラさんは慌てて保護したけれど、回復できなかった。そんな風には見えなかったが、アパートサバトラくんも高齢猫の年齢だった。結局、アパートサバトラくんがモフモフくんの犬小屋ハウスを使うことはなかった。
年末、年越し前にハチワレくんにはかわいそうだったが、庭で犬を飼っている知り合いにモフモフくんの犬小屋ハウスを譲渡した。
アパートごはんもこの辺りの地域猫もハチワレくんと前髪のようなハチワレ猫でおんなのコのマエガミハッチャンの2匹になった。
ハチワレくんもアパートごはんの御相伴に預かっているのかと思っていたが、ハチワレくんはアパートごはんには行っていないかった。
モフモフくんが猫ボラさん宅に入って1月半、猫ボラさんから、まだ毎晩泣き続けていることを聞いた。猫の聴力はすごい。ハチワレくんにはモフモフくんの声が聞こえていて、ずっとモフモフくんの声がする近く、といっても猫ボラさん宅の付近は、猫ボラさんがお世話しているフワフワ猫くんがボス猫で、ハチワレくんは近寄れない。だからきっと縄張りの境界線ギリギリのところに居たのだろう。モフモフくんの声は聞こえるのに帰ってこない、どこにもいない、なぜ帰ってきてくれないのか、彼には理解できなかった。
猫ボラさんに、モフモフくんに会わせてほしいと伝えたが、里心出されると困るし、モフモフくんもかわいそうだから会わせられないと断られた。
人間もモフモフくんに会えないことを初めて知らされた。もっともハチワレくんが会えないのに、自分たちだけモフモフくんに会おうなんていう方が都合のいい話だった。モフモフくんにしたら、人間よりハチワレくんに会いたかったはずだから。絶対に。
ハチワレくんも人間も、そんなつもりもないまま、モフモフくんとお別れすることになった。それはモフモフくんにしてもおなじだったといまでも思っている。
縁もゆかりも無い土地で始まった新しい暮らしは、こうしてまた形を変えようとしていた。
とりたてて特別なものはないけれど、家猫2匹と外猫2匹と暮らすしあわせな時間は終わりを告げた。
しあわせが壊れるときはいつだって突然でやってくる。
そして2回目のお正月を迎える。
ハチワレくんは相変わらずだったけれど、ある日の明け方、ヴー!ファー!ギャー!猫の声で飛び起きた。
「ハチワレくん!」2階から階段を駆け下りて扉を開けた。
新参猫だ。
ハチワレくんは身体が大きいが、残念なことにケンカが弱い。いままではモフモフくんがいた。
前に新参猫が現れたときは、モフモフくんが追い払った。
きっといままでずっとハチワレくんはモフモフくんと一緒で、モフモフくんが面倒をみてきたのだと思う。
我が家に現れたときも一緒だった。大食いで食いしん坊なハチワレくんのためにモフモフくんはごはんを残し続けていた。新参猫が現れたときもモフモフくんが追い払った。それなのに、そのモフモフくんがいない。
ハチワレくんをひとりにさせてしまった。ボス猫モフモフくんがいなくなったので、いままで近寄れなかった猫たちがやってくる。猫の勢力体勢が変わろうとしていた。ハチワレくんがいままでどおりココにいられるように、絶対にハチワレくんを守ってあげなければ。モフモフくんの代わりに。
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