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それでも新しいリズムが始まろうとしていた

モフモフくんが猫ボラさん宅の家猫になって、庭にあった2つの犬小屋ハウスはひとつになった。
いつも2つ並べていたごはん茶碗もひとつになって、窓の外から並んで家の中を覗いていた2匹の猫も一匹になった。
2つあった景色はみんな1つになった。
いつまでもフラフラして帰ってこないハチワレくんを「どこにいるんだろうね」とモフモフくんに話しかけながら一緒に待っていたけれど、それもひとりで心配しながら待たなければならなくなった。
ハチワレくんと一緒にゴミ捨てに行って帰ると出迎えてくれていたモフモフくんの姿はない。
小さな猫一匹だけれど、いなくなったその空間はあまりにも大きかった。

モフモフくんがいた頃と同じように、犬小屋ハウスと接した窓のシャッターは完全には閉めず、外からはわからない程度に開けていた。
モフモフくんがいた頃と同じように、「おやすみね、また明日ね。」と声をかけてシャッターを降ろすけれど、わずかに開いている隙間から見えるハチワレくんはさびしそうで、不安そうだった。

モフモフくんがいなくなった庭に新参猫が現れるようになって、明け方、新参猫と闘うフー!ヴー!ファー!シャー!ギャー!ハチワレくんの叫び声で飛び起きることが2回、3回続いた。
ハチワレくんは立ち向かうけれど、ケンカは弱かった。
猫が本当に負けたときは、その場所を追い出されることを意味する。ハチワレくんの居場所を守らなければ。夜の間だけ家の中に入れることにした。

まずは家猫たちを2階の部屋へ隔離してから、窓を開けてハチワレくんに「どうぞ。入っていいよ。」と声をかける。
ハチワレくんは、入ってもいいの?というような顔でこちらを見ながら、そうっと入ってきた。
シャッターを完全に降ろして閉めた。
あの台風の夜以来、2回目の家の中だ。
落ち着かなさそうに、リビングをウロウロしながら私たちを見た。
「どうぞ。どこでも好きなところにいていいよ。朝になったら外に出してあげるからね。おやすみね。」とハチワレくんに声をかけて、人間は二階に上がって、それぞれの部屋に入った。

私の部屋は家猫サバトラくんの部屋。サバトラくんは一緒に布団を被って私を枕にして寝る。部屋の扉の向こうに、なにやら気配がする。ハチワレくんが2階に上がってきたようだ。
サバトラくんが、いつもはない気配を察知した。
「大丈夫。ハチワレくんだよ。お外にいつもいるでしょ。ハチワレくん、かわいそうだからね。大丈夫だから。」撫でながらサバトラくんに話しかけた。

しばらくすると「ミャッ、ミャッ」ハチワレくんの声とガリガリと扉を開けようとする音が響いた。
そのまま黙って反応しないでいると、ハチワレくんが階段を降りる足音が聞こえ、下から「ミャー!」大きな声が響いた。私たちを呼んでいるのか、ハチワレくんの声は響き続けた。
あれはなに!?と驚いたサバトラくんがベッドから起き出した。
仕方がないので、私もベッドから起き上がり、サバトラくんに「大丈夫だから待っててね。」と声をかけてから、ハチワレくんの様子を見に行った。

一階に降りるとハチワレくんが勝手口のドアを開けようとカリカリ両手を動かしていた。
「ハチワレくん!」と声をかけると、今度は窓の方に行き、窓の端で同じようにカリカリ両手を動かした。
「お外、怖いのよ!朝になったら出してあげるから!」と言ってはみるが、猫にわかるわけがないのか、いいから出してよ!と言っているのか、ミャー!ミャー!カリカリ両手を動かしてた。
人間にも言ったらわかる子とわからない子がいるが、猫も変わらない。
仕方がないのでドアを開けると、ハチワレくんは薄暗い庭先へ飛び出して、どこかへ飛んで行った。

数時間後の朝、何事もなかったように、いつものとおり犬小屋ハウスの屋根の上にハチワレくんはいた。
ごはんくださいという顔で見ていた。
新築だった家の壁にはハチワレくんカリカリ後が残り、勝手口のドアのパッキンも剥がれていた。

家族が怒る中、家猫たちの、特にサバトラくんのために床の拭き掃除をした。
サバトラくんは赤ちゃんの頃、ウィルスに感染して死にかけていて、動物病院から、他の猫たちより感染しやすいから気をつけてあげてくださいと言われていた。ハチワレくんをばい菌扱いする気は毛頭ないし、気休めでしかないかもしれないが、除菌シートで床を掃除してから家猫たちを部屋から出した。

モフモフくんがいなくなって、気持ちはなんともやるせなく、すっきりできなかった。それでも新しいリズムが始まろうとしていた。

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きありがとうございます。

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