泥だらけの太陽:13 春の手前
次の日。
ナナ先輩が一人でクラスにやってきた。
げ。
反射的に隠れようとした瞬間、
「ミキカー! 呼んでるよー!」
やっぱり私を探していた。
必死に笑顔を作って、
「こんにちは!」と挨拶をする。
「ねぇー笑
ほんと何も言わないね笑
そろそろ怒るよ?笑」
「すみませんすみません笑」
ナナ先輩は楽しそうに笑っていた。
「うちのがさ、箱見つけたんだって。
食べ終わってるのに、“捨てるのもったいない”って言ってたらしいよ笑 すごい嬉しかったみたい。」
思わず顔が熱くなる。
「えー、よかったですー。ケイタくんって、あんまり表情変わらないから分かんなくて笑」
「“付き合わないの?”って聞いたらさ、
“このチョコはそゆんじゃないと思います。ミキカはモテるだろうから”って言ってた。」
「えー、モテないですよ笑」
「そうだよね笑
ミキカ、顔は可愛いけど、サバ子だからモテないよって彼氏に言っといた笑」
「あはは笑」
笑いながらも、ドキドキが止まらなかった。
「ナナ先輩が色々教えてくれるから嬉しいです。
でも、自分でもどうしたらいいのか分かんなくて。」
そう言うと、ナナ先輩は少しだけ優しい顔をした。
「悩むよね。
ミキカ、こう見えて意外と真面目だしさ。」
「あはは笑」
「ケイタくんはほんとに野球1番に考える子みたいだから。でも、後悔はしたくないしね。今の関係が壊れたら、って思うよね。でもミキカのことは信用してるみたいだから自信は持って!」
「ありがとうございます。」
ナナ先輩、ありがとう。
ケイタの気持ちを少しだけ知れた気がして、
嬉しかった。
私はケイタにメールを送った。
「チョコ、ケイタにしかあげてないからね!」
送ったあと、
なんか重かったかな、と少しだけ後悔する。
でも、すぐに返信が来た。
「ありがとう!美味しかった!」
また胸がいっぱいになった。
それからというもの、
ケイタとは前より少しだけ距離が縮まった気がした。
相変わらず、メールとたまにの電話。
でも、
「おはよう」と「おやすみ」は、
毎日欠かさず送ってくれるようになっていた。
それが、今の私の一番の安心だった。
そして。
あっという間に三月。
ナナ先輩が卒業した。
寂しい。
「実家から通うしすぐ近くにいるんだから、いつでも連絡してよ!」
ナナ先輩は、
彼氏が大学野球をやるため遠距離になるらしい。
「大丈夫さ!
全然心配してない!」
そう言い切るナナ先輩を見て、
強い絆ってこういうことなのかな、と思った。
ケイタとも、
変わらない関係が続いていた。
それが心地良くもあったし、
この関係を壊したくない。と強く思ってしまって踏み出せないでいた。
踏み出す勇気もなかった。
