よわよわ作家とつよつよ編集さん 7
7 担当さんは親友か強敵か
みつき「そういえば、私、今まで自作品の改稿ってあまりやってこなかったなぁ……」
だって、どこを改稿したら良くなるのかって、自分でわからなくないですか?
そう、自作品は本人からは見えにくい。
そんな分析ができてしまうのなら、とっくに人気作家になってるはずですよ……たぶん。
さてさて。
改稿二回目です。先の打ち合わせで言われたことを思い出してみました。さらっと要点を言われたあとで、具体的に「こんな展開はどうでしょう?」ってアドバイスをいただいたんですね。
……ありがたいなぁ、編集さんって。
だって、アイディアまで出してくれるんだよ? 今までそんなこと誰にもお願いできなかったのに。
米田さん「(提案)――というわけで、こういう展開で問題を解消するのはいかがですか?」
みつき「(承諾)いいですね! でもそれだとやはり中盤からの修正が必要なので、そっちをやってからにします。あと最後の部分は、キャラの性格に合うように流れを変えていいですか?」
すごい。感心するしかない担当さんの力……!(拍手)
さすがに膨大な量の作品を見てきた御方だけある。知識量はんぱないです。
そんなやりとりのあとで、パソコンに向かいました。気合いが入ります。
おそらく、過去の受験勉強より真剣にやってます。
今回は、なんとしてでも言われたことはきっちりやらねばなりません。
加筆部分は一気に読めてしまう楽しさ&面白さ、華やかさを添えて。コンセプトに合った展開と台詞とキャラの心情を上手く組み合わせつつ、緩急テンポはリズムよく。なおかつ、すんなり読めて、ワクワクがドキドキに続くお話を――……長いです、ちょっと盛り込みすぎじゃないですか。こんなの混乱するだけですよ、どうしましょうか。
みつき「あ。そうだ。たしかハリポタ展にいったとき、J・K・ローリング先生のプロットを見たんだっけ」
こんな説明ゼリフを実際に言う人がいるかどうかは別として、とても良いことを思い出しました。
ローリング先生のプロットには「表(ひょう)」があったのです。
キャラごとに行が分かれていて、展開を時系列順に並べてあります。これなら、すぐに「このイベントがあったときにキャラがどう動いてどう感じているか」がすぐにわかるんですね。
さっそくそれを真似て、自作品の表を作ります。
後半の展開を変えるにあたり、矛盾するところは後から消しゴムで消してしまいます。
改めて、そちらをじっと見つめると。
みつき「……入れ子の書き方だわ、これ」
そう。小説初心者時代によくやった、入れ子方式です。
あらかじめキャラとイベントが決まっていて、それをどうにか矛盾無く結んで、空白を埋めていく、初心者にやさしい書き方なのです。
となると、重要なのは台詞です。
キャラの台詞ひとつで、望み通りの展開にいけるように、まずは最小限の修正から入ります。
みつき「キャラの過去とキャラの性格からいって……こう言っとけば望む展開に入れるかな?」
試しに書いてみます。そのあと、通しで読んでみます。――大丈夫、矛盾はないしムリやり感もありません。
ただ米田さん曰く、『物語そのものをより面白くなるよう磨いていくことに集中して』とのことだから、キャラの感情の絡みを多くして、それが笑いを誘うような感じにして……。
一連の作業を、何度もこねくり回しながらやりました。
(お気づきかもしれませんが、普通の人が一段階でやれることを、三段階くらいかけてやっています)
それから数日後。
みつき「やった……できた!これで完成っ! 待ってろよ米田ぁあああ――今回ばかりは心の中から誉めさせてやるぜえええ☆」
恩ある担当さんに対しなんて言い草なのか――(そして日本語もおかしい)。ここを読んでいる皆さまはそう思われることでしょう。
しかし作家にとって担当さんという存在は、ときに、親友になったり、強敵になったり、スパダリのヒーローになったり、近所にいる、白ニットが似合うお姉さんになったりするものなのです。――ウソ。他の作家さんの妄想なんか知りません。私だけかもしれません。
もちろん、こんなことは直で話せるはずもないので、このエッセイを担当さんが読んでないことを祈るばかりです。
(※スパダリ=スーパーダーリンの略。なんでもできて、カッコイイ男のこと)
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ドキドキしながらの原稿の再提出です。
中盤から終盤の展開の修正だけではなく、冒頭とラストにもそれぞれ五千字ほど加筆をしています。
お返事を待ちます。
一日目……こない。
二日目……こない。
十日……こない。
三十日……。
……。
みつき「(涙目)やばい……調子に乗りすぎた……かも?」
余談ですがこの待っている時間というのは、地味に自己肯定感が削られます。
待ち時間が長ければ長いほど、こちらでは「放置」と考えてしまう癖があるので、もっとも闇に囚われやすい期間なのではと個人的には思います。
もちろん、担当さんにしてみれば、そんなつもりは微塵もないでしょう。
私にとってはひとりだけの担当さんでも、あちらは何人もの作家さんを抱えて業務をこなしているわけで、段取りや順番があって当然なのです。
1Pみつき「(ぶつぶつ)似ている……。担当さんがチーレム主人公だとしたら、私は負けヒロイン……いや、モブ、いや、冒頭で主人公にひどいことをしたあとで痛い目に合わされるかませ役――」
(※チーレム……でたらめな強さを持つ上に複数の女の子にモテモテな状態。主に小説の男主人公に使う言葉)
2Pみつき「ちょ、しっかりしなよ……たかが一ケ月ちょい、返事が来ないだけじゃん……そんなに病むほどのことじゃないって」
1Pみつき「……改稿、てんでダメだったのかも……あまりにも下手で、もう手をかける時間すらもったいなくなったのかも……」
2Pみつき「そりゃ、他の作家さんの本に力を入れたほうが有意義だしね。わかるわかる。私が担当やってても、新人のみつきなんかすべて後回しだよ。ザコだもの」
なにやら、脳内の自分が、慰めるとみせかけて追い打ちをかけてきます。
ザコ。漢字で書けば雑魚。懸命に生きてる魚に失礼じゃないかという言葉を飲み込みます。
2Pみつき「1Pみつきはこれを機にメンタルコントロールを学んだほうがいいね。これまで深く考えない図太い人間だと思ってたけど……そうでないなら、対策したほうがいいよ。見ていて痛い」
1Pみつき「(作家で図太い人なんかいるのかな?)――それは、初めてのことだからだよ。慣れればこうはならないよ」
2Pみつき「あ、メール返信来たよ」
1Pみつき「きゃあああ~v 米田さまぁああ~~vvv! お待ちしておりましたぁぁ~~~~~v(*^▽^*)!!」
さっそくメールを開きます。
文面には、返信が遅れたことのお詫びと、改稿に関する良さげな反応が書かれていました。
米田さん『初稿よりも全体的に感情が盛り込まれて、かつ楽しさもあり、より面白い内容になっていると思います。ここからは読みやすさのアップや、より盛り上がる演出などを中心に見てまいります。できれば翌月ぐらいに原稿をお戻しできるように進めていきたいと思います』
1Pみつき「ほら! やっぱり忙しかっただけなんだよ。私、無視されてないよ!」
2Pみつき「(間)……そうだね」
さらにそれから二ヶ月後。
米田さん『ただいま頂いた作品の文章等を細かくチェックしている最中で、まだお返しができず……お待たせしてしまい申し訳ありません。遅くても来月上旬にはお渡しできると思いますので、今しばらくお待ち下さいませ。』
うんうん、とうなずきながら読む私。
このときは、「やっぱり忙しいんだなぁ」とか、「編集部って大変そう」とか、「何人も抱えているんだし、オーバーワーク気味なんだろうな」って思いながら目を通していました。
そして、このあと。
思いがけない文面があったのです。
米田さん『もうひとつ用件がありまして、表紙のイラストレーターさんについてなのですが――(略)』
『現在こちらで候補を選定している最中なのですが、もし「この人に描いてもらいたい!」という方がいらっしゃれば教えていただければと思います。挙げていただいた方に絶対描いてもらえるという確約はできないのですが、絵の方向性が近い方を探したりなど、参考にしたいと思っております。
もし絵師さんを挙げられないという場合でも、出版社のほうで選定させていただきますのでご安心下さい』
みつき「(=゚ω゚) はい……?」
え? 希望出せるんですか? 私が……?
ビックリでした。かなりビックリしました。
だって、最初は編集さんが複数選んでくださった方々の中から、一緒に検討する、という話だったような。
それはともかく、イラストレーターさん(以下、尊敬と敬意を込めて「絵師さん」とも表記させていただきます。「イラストレーターさん」を何度も書くとくどくなるので……)です。
絵に関しては、まったく詳しくない私が、どうやって希望する絵師さんを見つければいいのでしょうか……?
意外な難題が降ってきました。
>8に続きます
