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【ピーター・ティールという「陰の設計者」】パランティア・ペイパル・テックエリートの「司令塔」の正体〜「競争は敗者のすること」と言い切った男の世界支配哲学〜

■ 名前を知らない人が多いほど、影響力は深い

この連載で何度か名前が登場しながら、ずっと「影」にいた男がいる。

エリソン 名前を知っている。
孫正義 知っている。
黄仁勲 最近有名になった。
マスク 知らない人はいない。

では、ピーター・ティールは?

おそらく多くの人が「聞いたことはある」「でも何をした人かよくわからない」と感じるのではないか?

それが彼の「強さ」だ。

「影の米大統領」とも呼ばれることがある。

マスクが「見せながら支配する」なら、 ティールは「見せずに設計する」

PayPalを作り、Facebookに最初に投資し、パランティアでCIAとFBIの情報分析を担い、トランプ政権の政策顧問を務め、ビルダーバーグ会議の運営委員として世界の権力者と密室で議論する。

それでいて、多くの人は彼の名前を知らない。

この記事を読み終えた後、おそらくあなたは過去に見聞きした多くの「謎」の答えがこの男の周辺にあったことに気づくはずだ。

■ 「制服で手を叩かれた」少年の反乱

  ドイツ→アメリカ→アフリカ→アメリカ

西ドイツのフランクフルトに生まれる。1歳のときに家族とともにアメリカに移住。その後の少年時代には、南アフリカと南西アフリカ(現在のナミビア)で過ごしていたこともある。
1977年にアメリカに戻り中高生時代を過ごした。

幼少期に複数の国を転々とした少年。

前回取り上げたマスクも南アフリカで育ち、暴力に満ちた環境で生き延びた。

二人はともに「アフリカという周縁」から「シリコンバレーという中枢」へと向かった移民の子だ。

  「答えを間違えたら手を叩かれる学校」への嫌悪

ティールはドイツで生まれ、米国に移住したのちに、アフリカの小さな港湾都市に移り住んだ。そこでティールは規則に縛られた、厳格な学校へ通うことになる。生徒に制服を着用させ、答えをまちがえた生徒の手の甲を定規で叩くような学校だ。みずからの意思に反して、画一性と規則のなかにムリやり押しこめられることに、ティールは嫌悪感を覚えたという。

「正しい答えを出せなければ罰せられる」

この体験が、ティールの中に「既存のルールへの根本的な反発心」を植え付けた。

しかし、マスクの「怒り」が外に向かう爆発的なエネルギーだとすれば、 ティールの「反発」は、内側に深く沈んで「哲学」に変換された。

  チェスの神童が「競争の無意味さ」を悟った瞬間

10代のティールは全米ランキングの上位7位に入るほどのチェスの達人だった。
だが、ある時こんなことに気づいた。
チェスで腕を上げることだけにひたすら多くの時間を費やしてきた。
しかし、どれほどチェスが強くなっても、現実の世界では何の役にも立たない。

チェスの達人が「チェスは無意味」と悟る。

この逆説から、ティールの世界観が生まれた。

「ゲームのルールを疑わず、ゲームの中で一番になろうとすること自体が罠だ」

この哲学が、後に世界を揺るがす「独占の思想」へと結実していく。

■ スタンフォードで出会った「危険な哲学者」

  ルネ・ジラールという「師」

スタンフォード大学で哲学を学んだティールは、一人の思想家と出会う。

ルネ・ジラール——フランスの文学批評家・人類学者。

ティールは「人間の欲望は他者の欲望を模倣(ミメーシス)するという性格を持っており、こうした模倣は無意味な競争を引き起こす。また、競争はいったんそれ自体が目的となると進歩を抑制してしまう」というジラールの考えを、自身のビジネスと私生活に応用している。「競争すること自体に気を取られてしまう結果、我々は、世界で重要な、超越的な、あるいは本当に意味のあるものを見失ってしまう」とティールは述べている。

「人間の欲望は模倣から生まれる」

誰かが欲しがるから、自分も欲しくなる。 誰かが目指すから、自分も同じものを目指す。 そして全員が同じものを追いかけ、競争し、消耗する。

ジラールはこれを「模倣的欲望(ミメーシス)」と呼んだ。

ティールはこの哲学から、一つの結論を引き出した。

「競争するな。他の誰もいない場所を作れ。」

  「競争は敗者のすること」という宣言

「競争は敗者のすることだ」この言葉に、違和感を覚える人も多いと思う。努力し、改善し、ライバルに勝ち続けることこそが正しい。私たちはそう教えられてきた。しかし、現実を見渡すと競争が激しい市場ほど利益は薄く働く人は疲弊している。例えば、航空業界社会にとって不可欠な価値を提供してきたにもかかわらず、100年以上の歴史の中で、ほとんど利益を残していない。

航空会社は毎年、血みどろの競争を繰り広げる。 しかし、Googleは誰とも競争しない領域で「独占」を作り上げ、莫大な利益を得る。

既存市場で他社としのぎを削るより、競争のない独自領域で「良い意味での独占」を築くべきだというのが彼の信条だ。独占とは決して違法な寡占ではなく、「誰とも直接競合しない唯一無二の価値を提供すること」だとティールは強調している。

「唯一無二の価値」

この哲学がティールのすべての投資判断・事業判断の根底にある。

そしてこれは単なるビジネス論ではない。

「誰も気づかない場所で独占的権力を作れ」

世界支配の設計図として読むと、非常に「実用的」な哲学だ。

■ ペイパルという「最初の帝国」とマフィアの誕生

  「国家なき通貨」を作ろうとした男

1998年にはコンフィニティ(後のPayPal)を共同設立し、2002年に15億ドルでeBayに売却するまで最高経営責任者を務めた。

PayPalを創設した時、ティールが語った野望は衝撃的だった。

「政府の干渉を受けない、世界共通の通貨を作る」

これはビットコインの哲学の先駆けだ。

インターネット上で国境を超えて流通し、いかなる政府にも制御されない。

ティールはその夢を1998年に持っていた。 サトシ・ナカモトがビットコインのホワイトペーパーを公開する10年前に

PayPalはその夢の「最初の形」だった。 しかし、eBayへの売却により夢は「既存金融システムへの統合」という形で終わった。

 ペイパル・マフィアという「人材の種」

PayPalが15億ドルでeBayに売却された後、

その創業メンバーたちは、それぞれ「次の世界を変える企業」を作った。

ティールは「ペイパル・マフィア」シリコンバレーで最も成功した企業のいくつかを設立することになった初期のペイパルの従業員グループ(テスラ、LinkedIn、YouTube含む)を使って、強力なチーム作りの重要性を説明している。

テスラ(イーロン・マスク)、LinkedIn(リード・ホフマン)、YouTube(チャド・ハーリー)

世界を変えた企業の多くが「ペイパルの卒業生」によって作られた。

そして、その「マフィア」の中で「ドン」と呼ばれるのがティールだ。

「ペイパルマフィア」の中では「ドン」と呼ばれ、Paypal時代からの友人であるイーロン・マスクとは過去関係が深かった。

マスクはペイパル時代のティールの「同志」だ。
その後それぞれが別の帝国を築き今は複雑な協力と競争の関係にある。

 Facebookへの「50万ドルの賭け」

2004年、ハーバードの学生が作ったSNSにティールは50万ドルを投じた。

その学生の名は、マーク・ザッカーバーグ。

「製品の良し悪しではない。フェイスブックは、SNSの世界で独占事業を構築する潜在性があった。」

クライムキャピタルは、2004年にフェイスブックへ50万ドルの出資を行い、フェイスブックにとって初の大型外部投資家となった。フェイスブックが新規株式公開した2012年5月の3カ月後には、ほとんどの株式を約10億ドルで売却している。

50万ドルが約1,000億円に

ティールが見たのは「製品の品質」ではなく「独占の可能性」だった。

SNSは一つが勝てば他は消える。 「人々が使う場所」は一か所に収束する。

その「独占の未来」を、誰よりも早く見抜いた。

■ パランティア 「神の目」の本当の設計者

  社名が示す「世界観」

ティールが2003年に創設した企業パランティア(Palantir Technologies)

この名前を聞いて、何かを思い出す人はいるか?

「パランティア」 J・R・R・トールキンの『指輪物語』に登場する「見通す石」のことだ。

物語の中でパランティアは、遠く離れた場所を「見通す」魔法の水晶球。
その石を持つ者は世界の隅々まで見ることができる。

しかし、その石は「支配者サウロンに繋がっていた」

覗いた者は知らずして、暗黒の主に情報を渡していた。

ティールがこの名前を選んだのは偶然だろうか?

 CIAの「資金」で育った企業

パランティアは創業当初は資金集めに苦労したものの、CIAのベンチャーキャピタル部門であるIn-Q-Telからの200万ドルと、ティール自身と彼のベンチャーキャピタル会社ファウンダーズ・ファンドからの3,000万ドルのみであった。

パランティアの最初の資金の一つはCIAから来た。

この連載の第一回で、エリソンのオラクルもCIAのプロジェクトから生まれたと述べた。

「CIAの資金→民間企業の設立→世界の情報インフラを掌握」

このパターンが、ここでも繰り返されている。

 CIA・FBI・NSA・軍が「頼る」システム

パランティア・テクノロジーズは、CIA出資を受けて設立され、米軍や連邦政府の諜報・監視システムを支える企業だ。近年はイスラエルとの協力やAI技術の軍事利用で存在感を強め、米国防産業の勢力図を変える存在となっている。

パランティアの顧客には、NSA、FBI、CIAだけでなく、ニューヨーク市警などの名も挙がる。

NSA(国家安全保障局)
FBI(連邦捜査局)
CIA(中央情報局)

アメリカの「目と耳」のすべてが、ティールの会社のソフトウェアで動いている。

CIAやFBIなどの米国のスパイ機関は、以前はデータベースが「サイロ化(情報共有が円滑に行われない状態)」されていたため、パランティアのソフトウェアと初めて連携した。

かつて、CIAとFBIは「別々のデータベース」を持っていた。
情報共有がされない「サイロ状態」これが911テロを見逃した一因とも言われる。

そのサイロを「統合したのがパランティア」だ。

ティールは、アメリカの情報機関の「神経系の統合」を成し遂げた。

  「ゴッサム」と「ファウンドリー」

パランティアの主力製品は二つある。

「ゴッサム」 政府・軍事機関向け。テロリストの追跡、犯罪パターンの分析、戦場の情報処理。

「ファウンドリー」 民間企業向け。製造、医療、金融のデータ統合と意思決定支援。

政府の「目」と企業の「頭脳」 どちらもパランティアのソフトウェアで動く社会

これはエリソンの「データを保管する」機能と、ほぼ同じ構造だ。

前回の連載第一回で、「パランティアとオラクルは役割分担している可能性がある」と述べた。

データを「保管」するオラクル。 データを「分析・活用」するパランティア

二社は「車の両輪」のように、世界の情報支配を分担しているのかもしれない。

■ 「ビルダーバーグ」という密室

  毎年開かれる「世界の密室会議」

ビルダーバーグ会議運営委員メンバー

「ビルダーバーグ会議」

毎年ヨーロッパのどこかで開かれる100〜150人の招待制会議。

参加者は、欧米の首相・大統領経験者、中央銀行総裁、大手メディアオーナー、多国籍企業のCEO、軍の幹部

議事録は公開されない。 参加者は取材に応じない。 「そういった会議が存在する」こと自体、長年否定されてきた。

この会議の運営委員会のメンバーがティールだ。

都市伝説の世界では、ビルダーバーグは「世界政府の準備委員会」とも「シャドウ・エリートの年次総会」とも呼ばれる。

事実として言えるのは「世界に影響を持つ人々が、非公開で話し合う場」に、ティールは組織の内側として参加している。

■ 「陰の設計者」の世界観

  「ゼロ・トゥ・ワン」という支配の哲学書

ティールの著書『ゼロ・トゥ・ワン』は、世界中のビジネスパーソンに「バイブル」として読まれている。

しかし、この本は都市伝説的な視点で読むと、「支配の設計マニュアル」に見える。

「最後の一社になりたい。つまり、特定の市場で持続可能なビジネスを創造できる最後の企業になりたいのです。」

「最後の一社」

競争に勝つのではなく、競争が起きない状態を作る。

Googleは「最初の検索エンジン」ではなかった。
しかし、「最後の検索エンジン」になった。 Facebookは「最初のSNS」ではなかった。
しかし、「最後のSNS」になった。

「二番手が現れない独占状態」これがティールの目標だ。

この哲学をテクノロジーだけでなく「権力」に応用したら?

「競争相手が現れない権力の独占」

それが、テックエリートたちが目指す「世界の設計図」の本質なのかもしれない。

▶ この連載に登場したすべての人物を「繋ぐ」存在

改めて、この連載で登場した人物とティールの関係を整理してみよう。

エリソン——CIAとの関係(オラクルもパランティアも同じ構造)
マスク——ペイパル時代からの「戦友」(現在は複雑な協力関係)
アルトマン——OpenAIの共同創業者でもある。
トランプ——政策顧問として政権に関与
ビルダーバーグ——世界の権力者との密室の繋がり

ティールはこの連載に登場したほぼすべての「権力の結節点」に、深く関与している。

「陰の設計者」という呼び名は、比喩ではないかもしれない。

■ まとめ:「見通す石」は誰のものか?

指輪物語の「パランティア」は

遠くを見通す力を持つが、 覗き込んだ者を「サウロンの影響下」に置く

ティールはその名を自分の会社に付けた。

CIA・FBI・NSAのデータを統合し、 軍の情報処理を担い、 世界の首脳と非公開で議論し、 「競争のない独占」を哲学として説き、 「影の大統領」と呼ばれながら表舞台には立たない。

彼は「世界を見通す石」を自分の手の中に持っている。

問いたい。

その「石」を覗き込んだ者は、誰の影響下に入るのか?

私たちが日々使うGoogleのデータは、 Facebookの投稿は、 PayPalの送金履歴は、 どこへ流れ、誰が「見ている」のか?

信じるか信じないかは、あなた次第。

次回予告▶「テックエリートの「世界設計図」は完成するのか〜エリソン・孫・マスク・ティール、四人の「神」が描く人類の未来〜」

この長い連載を通じて追ってきた「強制リセット」の全貌が、ついに一枚の地図として浮かび上がる。チップ・データ・AI・通貨・監視・言論すべてのピースが揃った時、見えてくる「世界の設計図」とは何か?そして私たち一般市民は、この「リセット」の中で何ができるのか?
次回、この連載の総決算として、すべての線を一本に繋げます。

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