ディズニーで中華を味わう。ミラコスタの「シルクロードガーデン」で特別な体験を
人生長く生きていると、固定概念をぶち壊されるシーンに数多く遭遇する。その出会いを活かすも殺すも自分次第。
予測外の出来事に出会ったら、それをチャンスと捉えるか。それとも固定概念を捨てられず、好機を逃すのか。人生はその連続だ。
夢の国、東京ディズニーリゾートといえば——大きな耳をしたミッキーマウスと愉快な仲間たちと出会えるスポット。
高くそびえるシンデレラ城を筆頭に、ピーターパンや白雪姫など、名作に登場するキャラクターたちと触れ合える場所でもある。
近年ではベイマックス、アナと雪の女王、映画「パイレーツオブカリビアン」に登場するジャックスパロウ(ジョニーデップ)などなど。人気映画のキャラクターと出会えるアトラクションも多いというイメージもある。
そんなファンタジーな夢の国で、高級中華料理を食べる。それも、テーマパーク内のレストランではなく、ホテルで。45年生きてきて、その発想はなかった。そもそもディズニーリゾート内には、中華に関するアトラクションは今のところない。
上海にもディズニーはあるし、むしろそちらの方がアジア最大規模なのだけれども。中国に行ったことがないので、どんなテーマパークかなのさえわからない。
中華とディズニー。どうしてもピンと来ない。シンデレラ、白雪姫、海賊。どの作品も西洋寄りだからなのかもしれない。
仮にディズニーで中華系のアトラクションを作るとしたら「ミッキーと万里の頂上コースター」だろうか。となると、まずゴールまでの距離が実に長そう。景色は雄大だが、終始単調な気もするし。
中盤でミッキーから「みんな!シルクロードを渡って頂上を目指しチャイナYO!」と声をかけられても、はたして喜べるだろうか。心に余裕がないと難しそうだ。中盤で黄砂に吹かれたらどうしよう。中国の歴史、壮大な風景からすると、夢の国とはほど遠い印象がある。
ディズニーと中国の結びつき、今まで考えたこともなかった。だから、そこで中華料理を食べようという概念はなかった。そして、その固定概念を打ち破ったのが、我が夫だ。
「シルクロードガーデンの予約、取れた!」
それはとある日の、深夜1時のことだ。私は既に爆睡していた。何事だろうか。眠い目をこすり、夫の表情を見る。目が爛々としている。夫によると、どうやら東京ディズニーリゾートにあるホテル「ミラコスタ」内にあるレストランの予約が取れたらしい。
東京ディズニーリゾートの人気レストランは、事前に携帯アプリで予約をしないと入れない。予約日は、利用日1カ月前同日10:00から、利用前日の20:59まで。
ディズニーホテル内のレストランは、利用日3カ月前同日10:00より、利用時間の60分前まで予約できる。(※シェフ・ミッキーは利用日の1カ月前同日10:00より)
東京ディズニーリゾートの鬼門。それはレストランの予約が、なかなか取れない点である。もっとも予約が取れる瞬間が、予約開始日の「利用日の1カ月前同日10:00になった瞬間」なのだが、人気レストランは一瞬で予約が埋まってしまう。そこで予約が取れなかった場合、キャンセル待ちを狙うしかない。
夫のリサーチによると、利用日の前日くらいに「キャンセルが増える」らしい。そこでキャンセル待ちを狙い、寝る間も惜しんで携帯の画面とにらめっこをしていたらしい。凄い執念である。
その結果、やっとの思いで取れたのが東京ディズニーシー・ホテルミラコスタ内にあるシルクロードガーデンだった。
◇
ホテルミラコスタ内にある中国料理レストラン「シルクロードガーデン」では、本格的な広東料理を提供しているらしい。


古城に佇む門を模したエントランスに一歩足を踏み入れると、スタッフの方が笑顔で「お待ちしておりました」と出迎えてくれる。
室内には、琥珀、黄緑、群青など。さまざまな彩りをした煌びやかなシャンデリアが犇めき合っている。照明から放たれた光は天井、壁、そして柱を穏やかに照らしていく。空間全体が優しい光に抱かれたその場所は、実に神秘的な空間だった。

テーブルに着席するなり、スタッフからメニューを渡される。人気メニューは期間限定のスペシャルメニュー「ダッフィー&フレンズ・ワンダフルキッチン カントニーズランチ」。(期間:2025年1月15日 ~ 2025年3月31日)料金は7,000円(税込)。
私は人気メニュー、そして期間限定という言葉に弱い。そもそも未知の領域=初めて足を運ぶレストランの場合、何を選べばいいのかさえわからない。脳が右往左往する。だから私は、いつも素直に「店員のおすすめ」を確認して、それに応じるようにしている。
メニューを注文すると、ダッフィーのイラストが描かれた可愛らしいランチョンマットが配布される。

ランチョンマットにはダッフィーや、ジェラトーニなどの仲間たちのイラストがキュートに描かれている。
ランチョンマットはシートタイプで簡単に剥がせるので、お土産としてお持ち帰りすることもできる。この「持ち帰ることができる」というのは、我々夫婦からすれば喜びでもあり……鬼門でもあるのだ。
「使わず、持って帰る?どうする?」
夫がそう言って、あたりをキョロキョロと見渡す。他の人がどうしているのか、気になるらしい。周りの人を見ると、使う人。持ち帰る人。半々といった様子だ。
確かに。あまりにキュートなイラストだったので、正直使うのが惜しい。けれど、このシートを家に持って帰ったところで、どこで使うのか。
「折角の機会だし、使っちゃいましょうよ」
「えー、でも……やっぱりもったいなくない?」
「もう、こんな機会は二度とないかもしれないし。体験を買う、という意味で」
「確かに」
夫婦で相談し合った結果……メニューを置くシートとして使うことになった。こんな時、何の躊躇もなく堂々とシートを使えたらいいのに。私の根底に宿る「ケチの性」が実に憎い。
◇
最初に運ばれてきたのは、前菜の盛り合わせ。

それぞれの小皿にはカラフルな色どりをした野菜、魚料理などが美しく盛り付けられていた。
両左端下の料理には、千切りされた人参の上にゆでたイカが添えられている。

イカは柔らかくて、歯ごたえもいい。両端のグラスには、海老とヤングコーン、ブロッコリーが盛り付けられている。

エビはぷりぷりで、優しい味。揚げ餃子もパリパリとした食感で、歯ごたえも最高である。

小さなチーズ風味のクラッカーには「Wonderful Kitchen」とローマ字で書かれているのも、大変キュート。

クラッカーを一口入れると、ほんのり優しいチーズの味が口いっぱいに広がるが、正直食べるのがもったいなくなるくらい。味も素晴らしいが、それ以上に料理のデザイン性も大変優れていると感じた。
中国蒸しパン・揚げパンはおかわり自由。

ケース側面には、ダッフィーのイラストが小さく描かれている。細かい部分にもディズニー要素を盛り込んでくるところ、流石である。


メイン料理は、ラム肉と野菜のクミン炒め、阿波尾鶏のスパイシー黒酢ソース、真鯛の唐揚げ雪菜ソースの3点。

この中でも、とくに驚いたのが真鯛の唐揚げの柔らかさ。口に入れた瞬間、ふわっとした真鯛と、雪菜ソースが絶妙に絡み合い━━。
「美味しい!」
と、私たち夫婦は目を合わせて呟いた。塩ベースの餡はとろみがあり、真鯛との相性も抜群。
ラム肉はサーロインで柔らかめ。野菜は百合根、蓮根、ピーマン。いずれも炒め具合が絶妙で、ちょうどいい柔らかさで食べやすい味だった。
娘がこのお肉を食べた瞬間、目と口をぎゅっと閉じて、嬉しそうに頬をほころばせた。

娘のこんな表情、いままで見たことがない。よっぽど美味しかったのだろうか。普段行かない店にいくと、家族の新たな一面を知るきっかけも芽生えるのかもしれない。
阿波尾鶏には、黒酢に豆板醤、自家製のラー油を加えたソースがかけられている。

鶏肉はジューシーで、口に入れると肉の脂身、旨味を堪能できてとても美味しい。ただ「やや辛め」なので、小さな子どもが食べる時は注意した方が良さそう。
デザートは、蜂蜜とチーズのシブースト。

ダッフィーとフレンズたちのイラストが描かれたマジパンプレートのdecoration、フルーツや杏仁豆腐のアイス付きで、インスタ映えもしそうな予感。蜂蜜はお好みで量を調整できる。
蜂蜜をかける瞬間は「写真で映えそう」と感じたので、思わずパチリ。

娘にとって、この瞬間が——いつかいい思い出になるといいなぁ。そんな思いも込めて、私はそっとシャッターを押す。
——旅は記憶に繋がる。そして写真は、過去の記憶へアクセスできる扉だ。
何年か経ち、写真を振り返る瞬間。私たちはまた、この至福の時間を思い出すのだろうか。その時味わった味も、記憶も。パパと一緒に手を手を取り合いながら、蜂蜜をかけた瞬間も。そしてその頃には、当時4歳の娘はいくつになっているのだろう。パパの手は、もう離れているだろうか。
脳裏に蘇る記憶と思い出を増やすべく。私たちはこれからも旅をしながら、シャッターを押しつづけるのかもしれない。
【完】
