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伝えるって、大事。私の小説と、自著が療育先で話題になっていた

5歳の娘は未だに言葉を話せず、発達も他の子より少しゆっくりだ。そんな娘と、週に一度、療育に通っている。

昨日も、いつものように娘を連れて療育へ向かった。すると、療育のK先生が、弾んだ声で私を呼び止めた。先生はショートカットの黒髪で、大きな瞳をきらきらと輝かせている。

「みくさん、小説読みましたよ!」

先生から声をかけられるなり、心臓がどくんと跳ねた。先生には、小説を書いていることなんて一度も話していないはずなのに。えっ、どういうこと?

「……なんの、小説ですか?」

「みくさんがtalesで執筆されている『すべては、嘘から始まった』です。すごく面白くて、一気読みしちゃいました!」

そのタイトルを聞いた瞬間、一年前の「中間選考通過発表」の時の記憶が鮮明に蘇った。

***

あの日も、私はこの療育施設にいた。

スマホに届いたXの通知に、目を丸くする。なんと、フォロワーのみねのもみぢばさんから「みくまゆたんさん、中間選考通過おめでとうございます!」という投稿が届いたのだ。

みねのもみぢばさんといえば、創作大賞2024で受賞された実力派noterである。

これまで、創作大賞のオールカテゴリ部門には協賛メディアが入っていなかったものの、今年から企業が参加するという嬉しい動きもある。そんな中、みねのさんは今年も「ガラスペンへの情熱」を込めた、こちらの作品を応募されるとのこと。

特筆すべきは、この記事の「はてしなき、ガラスペンへの深掘り具合」である。ガラスペンで文字をなぞるという一点に対し、狂気ともいうべきか。徹底的に向き合い、な……なんと「ペン先と紙が作る角度」まで研究されている。もはや新たなガラスペンを生み出してしまいそうな勢いである。

今年こそ、協賛メディアの目にとまり、何らかの形でメディア化されてほしいと強く願っている。

さて、話を私のエピソードに戻そう。

「えっ、中間選考? 今日が発表なの?」

動揺しながら確認すると、ミステリー小説部門の『すべては、嘘から始まった』と、エンタメ原作部門の『あなたの懸賞金を決めて下さい』の二作品が、創作大賞の中間選考を突破していた。

こちらの作品は、今年修正してもう一度応募する予定

あまりの衝撃に、療育で半泣きになり、狼狽える私。そんな私に「どうしたんですか?」と優しく声をかけてくれたのが、療育の先生たちだった。

あの時、舞い上がっていた私は、今まで隠し通してきた事実「私が、noter兼ライターである、みくまゆたん」であることを、つい口走ってしまったのだ。

それから一年。今日声をかけてくれた先生は、あの時いなかった。つまり、その場にいた他の先生が、K先生に私の作品を紹介してくれたのだ。

K先生は、どうも普段から小説をよく読むらしい。だからこそ、伝えてくれた感想は、驚くほど熱のこもったものだった。

「テンポが良くて一気に読んじゃいました」
「登場人物の背景にある闇や社会風刺がリアルで、他人事とは思えなくて……」
「結末を知った後、もう一度最初から読み返したくなりました」
「映像が浮かびやすくて、まるで映画を見ているようでした」

本が大好きな、いわゆる「読書ガチ勢」である先生からの言葉は、どこか興奮気味にも見えて、ストーリーが本当に面白かったんだろうなというのが伝わり、とても嬉しくなった。

さらに驚いたことに、私の著書『書く人生のはじめかた』を、職場の課長が購入し、先生たちの間で回し読みまでされているという。

1,000部の壁も、もうすぐかも……?

「ああ、あの本ですよね〜」

他の先生からも、まるで「さっき大根を買ってきた」くらいの気軽なテンションで話しかけられる。なんだか、鼻の奥が妙にくすぐったくなる。

先生たちからは、「書く人生のはじめかた、面白かったです。家族にも薦めますね」とまで言ってくれた。とにかく、本が異様にぶ厚かったので、

「どれくらい時間がかかったんですか?」
「何万文字ですか?」
「どういうプロセスを踏んで、本ってできるんですか?」
「編集は入っているんですか?どんな風に指摘されたりするんですか?」

と……とにかく質問攻めで、まるで記者に囲まれてインタビューを受けているみたいだった。

その瞬間、私は「一人の母親」から、無意識に「みくまゆたん」の顔になっていた。

実は、療育の場で正体を明かすつもりはなかった。ここでは「普通のお母さん」という役を演じているつもりだったし、ネットの海で明るく狂気を振る舞う「みくまゆたん」とは、住む世界を切り離していたかった。

けれど。正体がバレてしまった後の世界は、想像していたよりもずっと温かくて、肩の力がすっと抜けていくのを感じた。

自分の居場所を分けて守ることも大切だけれど、勇気を出して「書いています」「本を出しました」と伝えてみる。その一歩が、思わぬ場所で誰かと深く繋がるきっかけになるのかも。

娘の手を引きながら帰る道すがら、私は少しだけ誇らしい気持ちで、宙を仰いだ。

【完】

コッシ―さんと共同運営「チャレがや」のテーマが「女優」なので、「日常から、みくまゆたんを演じる瞬間」を書いてみました。

しれっと、創作大賞感想にも応募しています。

お題:【女優】
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