美人百花は、私の婚活指南だった
美人百花は、私にとって婚活指南書だった。ページを開けば、パステルピンクのトップスに、オフホワイトにフリフリのスカートがひらり。
男性受けのいい甘々ゆるふわファッションを、ここまで展開している雑誌はない。
女性たちの婚活とファッションを応援してきた女性ファッション誌「美人百花(発行:株式会社 角川春樹事務所)」が、8月8日発売の9月号をもって休刊することが発表された。
数年前、私は美人百花を読み漁っていた。美人百花は私の師匠でもあり、婚活アドバイザーだった。
推しは推せるうちに推せ。いつまでも、いると思うなアドバイザー。そうは言っても、親身になってアドバイスをしてくれる人が周りにいると、これから先もずっとサポートをしてくれると錯覚してしまう。
雑誌もサービスも、永遠ではない。わかっているけど、いざなくなってしまうととても寂しいものだ。
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数年前、美人百花はファッションだけではなく「スピリチュアル方面」においても、女性の婚活を全面に支援する特集を組んでいた。
今は時代の流れもあり、「これをしたら○○できた」という企画を紹介しづらいという背景から、スピリチュアル特集もなくなってしまった。
けれども、このスピリチュアル企画が実に面白かったのである。主な企画の見出しは、以下の通りである。
・本当に効いた婚活開運テク大公開!!
・2013年 叶いましておめでとう!開運デラックス
・「こうしたら結婚できました!」婚活開運大報告会
・本当に結果の出た開運法スペシャル!!
とにかく、企画タイトルがおめでた過ぎる。その企画では、著名人たちが「このパワーストーンブレスを身につけたら、結婚できました!」と笑顔で成功体験を報告していた。みんな笑顔で、メッセージも力強い。そのページは読んでるだけで、何もしてないのに願いが叶ってしまうほどの強力なパワーに溢れていた。
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時代は婚活ブーム。
雑誌では「頑張っているのに結婚できない」という方向けに、巷で有名な開運法を実施して本当に結婚できた著名人・読者モデルに取材して、風水テクニックやおすすめのパワースポット・天然石を紹介するといったものだった。
なぜ、私は特集の内容を事細かく覚えているのか。実は、私がすべて切り抜きをファイリングしており、それを確認しながら今記事を書いているからである。
私が美人百花で真似をした開運テクニックは、以下のとおりである。
・メロメロ石を買う
・ピンキーリングをつける
・東京大神宮・鈴虫寺・安井金比羅にお参り
・エスティーローダーの婚活リップを塗る
・クロエのボディークリーム
・猿田彦神社でお参りすると、夢の中で運命の人と出会える(アンミカ談。私は見れなかった)
「これを試せば成功できる」
心に僅かでも迷いがあり、なおかつ「あと一歩手を伸ばせば、掴めるのに」とそう思っている人間は、この言葉に弱い。
10年前の私は、5年前の自分「自分が1番、男性から声をかけられていた全盛期」を捨てきれないまま婚活を重ねていた。自分の1番良い時期は、永遠に続くものではない。
自分を今より「少し盛って評価する」状態で生きると辛いのはなぜなのか。それは理想と現実の違いを目の当たりにするからである。
婚活というものは、出会いという名の市場に出て異性から容姿・年齢・性格の他にも、相手が願う条件(家を守ってくれそう?・子育てや家事は任せられるか・俺の稼ぎじゃ足りないから、働いてくれないかなぁ・将来、親の面倒を見てくれるか)まで吟味される。
相手も本音を正直には言わないものの、言葉の随所に真意が滲み出る。
「得意料理は何ですか?」
「朝は味噌汁を食べるって、絶対に決めてるんだよねぇ」
「家に両親がいて、二世帯住宅なんだけどぉ(もう建ててあるんかい)」
「俺の家、田畑も山も持っているからさぁ」
(※すべて、婚活の場で本当にあった台詞です)
いい相手に恵まれない。なのに白馬の王子様がいつか自分には訪れると思っている。思い通りの運命を引き寄せたい。
そんな時、人はスピリチュアルにハマるのである。私はどっぷり浸かったし、なんならスピリチュアルどころか前世療法、瞑想も試したりした。もちろんケチなので、本を購入してセルフで試している。
前世療法は、本に付属しているCD、またはドリーンバーチュの「前世のカルマを浄化する」というCDを聴きながら、前世の記憶を浄化し、現世の幸運を引き寄せるというものだ。
瞑想は、坐禅を組んで蝋燭を見つめながら、体の深部に意識を集中させていく。瞑想では、白檀の香りがするお香、蝋燭などを灯す。目を閉じると眠くなる人は、火事対策のために火をつける時は注意して欲しい。
瞑想は、1日ではダメで毎日続けなければならない。続けることで、やっと煩悩と前世のカルマを消し去ることができる……というより、「私は一体、何をやっているのか」と我に返る。そして、その時にやっと気づくのだ。
今上手くいかないことを、前世や現世のせいにしてる場合ではない。現状は、すべて自分が導いてきた結果だ。
運命を切り開くのは、いつだって自分だと——。それを私に気づかせてくれたのは、美人百花……あなただった。
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美人百花は、「男受けとはこうあるべき」をとことん煮詰めた雑誌だった。
独身の頃から、家族を持つイメージを用意して食器を用意しておくといいですよと。雑誌の中で、女優の遠藤久美子さんが紹介しているのを見るなり
「へぇ、なるほど。食器を揃えると結婚できるのか(単純)」
と思った私は、本当にパートナーができた時を想像して2人分の食器を購入し、段ボールに詰めていた。
食器を選ぶ瞬間は、脳裏に千秋先輩風玉木宏似のイケメンがニッコリ笑みを浮かべている姿を想像する。
ああ、妄想楽しい。食器揃えるのも面白い。
ニヤニヤしながら食器を段ボールに詰め込む独身女性の様子は、不気味だったのか。母が随時、心配そうに私の様子を眺めていた。
この努力は無駄にならなかった。本当に一年後に私は運命の伴侶を見つけ、結婚した時には皿を用意しなくて済んだのだから。
そして、あの頃瞑想、前世療法を行って自分を見つめ直し、開運行動を片っ端から試していた私は無敵だった。
絶対に結婚できる。今、こんなに婚活が上手くいかなくても。だって、異性をメロメロにさせるメロメロ石を通販で購入したじゃない。東京大神宮でおみくじを引いて「大吉」だったじゃない。
できる。できる。君なら、絶対できる。
私の心に、いつの頃からか「リトル松岡修造」が宿っていた。そう信じて婚活できたのも、美人百花のお陰である。
もうすぐ、雑誌が休刊してしまう。本来なら、雑誌のお問い合わせからお礼を伝えるべきだろうか。でも、今は編集部もバタバタかもしれない。
「どうして辞めるんですかぁぁ」というお問い合わせも殺到しているはずだ。だから私は、感謝とお礼の気持ちをnoteに記し、漂流する。いつか、この想いが美人百花のスタッフに届くことを信じて。
【完】
