私もこんな体験してみたいと思った作品を紹介【創作大賞感想】
本やエッセイ、小説の魅力は、自分の人生以外の体験を擬似的に得られるところや、「私もこんな体験してみたい」と、好奇心を刺激されるところかもしれない。
本日の創作大賞感想文は、私もこんな体験してみたいと思った作品を紹介する。
30代女ひとり、初めてバーへ行った話 in神保町/千羽はる(ChibaHaru)さん
私はバーに行ったことはある。
ただ、1人では行ったことがない。基本的に、その時は2人か数人で行くことが多かった(昔の話です)
えっ。2人で誰と行ったかって?
婚前の話なので、そのあたりはご想像にお任せします。
独身の頃に、1人でバーに行ったらどうなるんだろうって思ったことは何度もある。
えっ、もしかしてイケメンにナンパされちゃうとか?それとも、バーのマスターと仲良くなれちゃう?怪しげな男女がいて、気になって観察とかしちゃう?みたいな。
そんな私の好奇心をもう一度蘇らせてくれたのが、今回紹介する千羽はるさんが、女1人でバーにいった体験談のエッセイだ。
カウンターの椅子に座る時の緊張感から、心理描写がとても丁寧に書かれていて、まるで私も1人でバーに行った気分になって楽しい。
個人的に面白かったのが、バーに行く前に神保町でスマトラカレー共栄堂でスパイシーなカレーを食し、お腹を満たしてから向かっていること。うん、わかる。バーのお菓子やおつまみって高いよね。
結婚して子どもができてからは、夜のお出かけはなかなかできない。行くとしても家族で鳥貴族だ。

その時しかできないことってある。やりたいことはやりたいうちに、とことん楽しんでおくって大事。
おひとり様行動は、ファミレスなら何度かあるけど、1人体験を経験するからこそ、誰かといる時間への有り難みが感じられる気がする。
きっとこれから先の人生、おひとり様体験を充実させることで、もっともっと美味しくお酒を飲めたり、1対1のトークだって楽しめるようになるのかも。
これからどんなお酒を楽しむのかなぁと、はるさんの今後も思わず追いかけたくなるような、素敵なエッセイだった。
だんな様はタニシ様/はそやmさん
ストーリーは、人との間に壁を作りがちな25歳の恵理乃が、お話ができるタニシの篤徳さんに心惹かれていくというお話。
私は人間の男性にしか恋をしたことがないけれども、物語に登場するタニシの篤徳さんがとにかく性格イケメン。
おはようからおやすみ、その日にあった出来事もなんでも聞いてくれる。
独身時代に、色んな男子と話してきたからかもしれないけど、男子って私のイメージで、基本面倒くさがりという感覚がある。逆に女は自分の面倒なところをみせて、試し行為に出るケースが多い。
それを男子が面倒くさがるみたいな構図を、婚活時代はなんかもうお腹いっぱいになるくらい腐るほど見てきた。そんなシチュエーションを何度も見てきた私は、先回りしてしまうというか。男子に遠慮して話せなかった。
そもそも、男子の遠慮しなくていいからなんでも話してね、というのも「実は昔、こんな酷い目にあって〜」っていうのをツラツラと話せばなんでも受け止めてくれるとかじゃなかったりもする。
その「なんでも」というのも、実は人それぞれのキャパがあるというか。私はだから、いつもこの人のキャパはどこまでなんだろうとか、コミュニケーションする前に考えてしまう。これも心の壁なのかな……。
でも、タニシ君なら自分のペースで「おい、大丈夫か?」って、サラッと聞いてくれそう。だから、なんかそういう関係っていいなぁと思う。
同時に、相手の姿がタニシだったからこそ、心に壁を作りがちな彼女も心を開けたのかなぁと思った。
タニシはパッとみてどこに目があって、口があるんだろうという生き物だ。
人間も面と向かって話すより、電話の方が本音を話せることもある。それって良くも悪くも、顔が見えないからってのもあるのかもしれない。
もちろん、ただ話を聞くだけのメンズではなく
「……彼氏はいつこの部屋に来るんだ?」
と、タニシ君はぶっきらぼうな嫉妬を見せたりもする。ちょっと不器用✖️俺様的なセリフが、たまらなく可愛い。
また、恵理乃の「タニシ君との生活が楽しくて私、明るくなったんだから!勘違いしないでよ!」という切り返しも、何気にモテ女子の回答だ。
2人の可愛いやり取りは、なんだかずっと見ていたくなる。
ストーリーとは関係ないが、私は面食いだ。今も、王道ではあるがケンティーや山崎賢人が好きだ。変化球だと、粗品も好き。粗品というか、あのちゃんと粗品の関係が好き。
そして婚活時代の20代は、相手の仕事や収入だったり、条件的なものに目を向けていたりもした。自分も妙に若さという武器をもち、高飛車だった気がする。
当時は仕事辞めたいなぁとか思ってた。専業主婦になるには、相手のスペックも大事だなと血眼の目をしていた。けれども、悲しいことにそんな時ほど、いい人は寄ってこない。
30過ぎたころから、自分も仕事続けるにはどうしたらいいかなと考え始めた。すると、相手のスペックとかあまり気にならなくなり、それからだろうか。ちゃんと目の前の人と、向き合えるようになってから少しずつ声もかけられるようになった。
今、ふと思う。
最終的に結婚して子どもができたとはいえ、最初から相手の条件ではなく、「心」でやり取りできたら、もっと早いうちに素敵な縁に恵まれていたのかなぁと。
そして、私もお二人のような恋というよりも、「心と心を通わせていく関係」に憧れる。
そういえば、夫に最近何を話したっけ。逆に話さなくても伝わるからまあいいかーで済ませてる気がする。
コミュニケーションは諦めたら、そこで終わる。
もし自分が相手を理解できていないと感じるなら、相手を知るための努力や歩み寄ること、会話していくことも大事なのだと。このストーリーは改めて気づかせてくれた。
自分ばかりが辛い目に遭っていると感じていたのは、相手への理解が足りなかったせいなのだろう。
そういえば、結婚してからだろうか。変に「結婚するには〜」とか考えない分、打算や計算を人間関係に持ち込まなくなった。だからかどうかはわからないけど、逆に色んな人と仲良くなれた気がする。
自分でいうのもアレだけど、仕事もそれなりにキャリアを少しずつ構築できたのもあってか「仕事のために○○さんと繋がろう」みたいな計算も、駆け出し時代と比べると、ほとんどない。本も出したしね。
逆にそういう思いって、玄人ほど見透せてしまう。だから、計算が見えちゃうと足を引っ張る人に捕まったり、利用されかけたりもすることがあるので、みなさんもぜひ気をつけてほしい。
えっ、そうなると……どんな人が近づいてくるって?とりあえず、Netflixの細木数子さんのドラマをみよう。
人間関係、今は純粋に楽しみたいかな。そこで最終的に辿り着いていくのが、相手の条件云々よりも一緒に過ごしていて肩に力が入らなくて、この人といるとなんかいいなぁとか。そんな感じの、ちょっと緩い感覚だったりもする。
そういう縁が、今私の周りにはたくさんある。
恵まれているとつくづく感じるし、これから先もそういった縁を大事にしたいと思う。
もう一度、人と向き合う時は心同士の関係を築きたいと思える素敵な作品だった。
【完】
