【総務の翻訳室】副業収入、会社にバレる仕組みとバレない方法
こんにちは。縁の下の総務担当です。
ある5月の朝のことです。
市区町村から届いた
「住民税の特別徴収税額の決定通知書」
を1枚ずつ処理していると、
ふと手が止まりました。
昨年度まで毎月1万円ちょうどだった天引き額が、
今年は1万4,000円になっている社員のデータが
目に入ったのです。
「あれ。増えてる。」
特に何か調べようとしたわけでも、
疑ってかかったわけでもありません。
ただ、書類を処理していたら、気がついた。
それだけの話です。
「副業がバレる」という言葉には、
どこかスパイ映画的なニュアンスがありますよね。
会社が密かに調査していて、
ある日突然呼び出されて……みたいな。
でも実際のところ、
バレる経路のほとんどはもっと地味です。
書類を処理しているうちに、
なんとなく、気づかれています。
この記事では、副業が会社に知られる仕組みを
「気づく側」の立場から説明します。
脱法の推奨でも、告発の煽りでもありません。
仕組みがわかれば、自分で判断できる。
その材料を提供するだけです。
① 「副業がバレる」の9割は、この経路です

まず、よくある誤解から整理しましょう。
「副業の給与明細が会社に届く」とか、
「副業先から情報が漏れる」とか、
そういうルートを想像している方が
多いようですが、それは基本的には起きません。
会社が把握するのは「給与の額そのもの」ではなく、
「住民税の額のズレ」です。
住民税は、前年の所得合計をもとに計算されます。
給与だけでなく、副業で得た収入も
対象に含まれます。
そして、会社員の場合は
「特別徴収」という仕組みによって、
毎月の給与から会社が天引きし、
まとめて市区町村に納める形になっています。
毎年5〜6月ごろ、市区町村から会社宛てに
「今年度の住民税額通知書」が届きます。
総務や経理はそれをもとに、
各社員の給与から引く金額を設定し直します。
これは毎年行われる、ごく普通の事務処理です。
副業をしていると、
副業分の収入も前年の所得に加算されますから、
住民税の計算のベースが大きくなります。
結果として、
「この人の住民税、去年より増えてるな」
という変化が数字の上に現れます。
仕組みとしては以上です。
華々しくもなければ、
意図的な調査でもありません。
書類を処理していたら、目に入ってしまう。
それだけです。
総務や経理の担当者からすると、
「あ、なんか増えてる」と思う程度のことで、
スパイ映画とは程遠い、地味な発見です。
② 「普通徴収に切り替えると隠せる」は本当か
住民税の話をすると、必ず出てくるのが
「普通徴収に切り替えればいい」
という情報です。
これ自体は事実に基づいた話なのですが、
少し整理が必要です。
住民税の納め方には、
会社が代わりに天引きして納める「特別徴収」と、
自分で納付書を使って支払う「普通徴収」の
2種類があります。
確定申告の際に、
「給与所得以外の住民税の納付方法」
という欄があり、
そこで「自分で納付」を選ぶと、
副業分の住民税については
自分で直接納める普通徴収に
切り替えられる場合があります。
これが
「会社への通知に副業分が含まれにくくなる」
という仕組みの根拠です。
ただし、「完全に防げる」というものではない
という話も聞きます。
市区町村の処理によっては
合算されてしまうケースがある
とも言われていますし、
自治体によって対応が違う場合もある、
という情報もあります。
これは実務の現場でもよく話題になる点で、
「やってみたけど合算されていた」
という体験談を見聞きすることもあります。
もう一点、注意が必要な話があります。
副業収入が年間20万円以下であれば、
確定申告が不要というルールがあります。
これは広く知られています。
ただし、このルールは
「所得税の確定申告が不要」というものであって、
住民税については別途申告が
必要なケースがあります。
「確定申告しなかったから大丈夫」
と思っていたら、住民税の申告が漏れていた、
という話はそれなりに聞きます。
この「20万円ルール」の誤解については、
国税庁のウェブサイトや各自治体の案内でも
確認できます。
仕組みを正確に理解しておくことが大切です。
普通徴収への切り替えは
「絶対に防ぐ手段」ではなく、
「バレにくくなる可能性がある選択肢のひとつ」
くらいの位置づけで理解しておくのが、
実態に近いと思います。
③ それでもバレるケース、バレにくいケース

仕組みを理解した上で、
「実際はどうなのか」
の現実感を少し補足します。
バレにくいと言われるケースとして聞くのは、
副業収入が少額で住民税の変動が
目立たない場合です。
月数千円程度の収入で住民税が
数百円増えた程度では、
担当者が気づかないこともあるでしょう。
フリマアプリでの出品や
単発のスポット作業など、
雑所得の扱いになるものが
小さな範囲に収まっているケースも、
相対的にリスクが低いと言われています。
バレやすいと言われるケースとして聞くのは、
まず収入の増加幅が大きくて
住民税の変動が明らかな場合。
次に、副業先の会社が社会保険に
加入させている場合です。
これは住民税とはまた別の経路で、
社会保険の加入記録という形で、
在籍している会社と副業先の両方に
掛け持ちの事実が現れることがあります。
そして、実は件数が多いのではないか
と思っているのが
「本人が話してしまった」ケースです。
仲のいい同僚に「実は最近副業やってて」と話す。
飲み会の席でちょっと自慢する。
SNSに副業アカウントを作って、
顔は出していないけれど職場が
特定できる情報を書いている……。
どんな税務上の対策を講じても、
口から出た情報は防げません。
住民税の仕組みとは全く関係のない経路で、
一番シンプルに伝わっていくのが「雑談」です。
「いちばんバレやすいのは、じつは自分の口」
という話は、笑えないけれどよく聞く話です。
④ そもそも「副業禁止」の会社と「そうでない会社」の違い

「バレたらどうなるか」を考える前に、
実は確認しておくべきことがあります。
「自分の会社は、そもそも副業を
禁止しているのか」という点です。
意外と、ここを曖昧にしたまま
不安だけ抱えている方が多い印象があります。
会社によって、就業規則に副業・兼業を禁止
または制限する条項がある場合と、
特に規定がない場合があります。
また、許可制(事前に届け出れば可)という形を
とっている会社もあります。
国の方向性としては、
厚生労働省が「副業・兼業の促進に関する
ガイドライン」を策定・改定しており
【公的データ:厚生労働省「副業・兼業の促進に関するガイドライン」(令和2年9月改定)】、
副業・兼業を認める方向での
環境整備を促しています。
ただし、このガイドラインはあくまで指針であり、
会社が独自に就業規則で制限することを
完全に否定するものではない、
という解釈も聞きます。
法律的な結論は状況によって異なりますので、
詳しくは専門家への相談をおすすめします。
就業規則は、社員から申請すれば閲覧できます。
労働基準法上、会社には就業規則を社員に周知する義務があります。
【公的データ:労働基準法第106条】
「自分の会社の就業規則が
どうなっているか知らない」
という方は、まずここから確認するのが
最初の一歩です。
副業に関するリスクを正確に理解するためには、
「住民税の仕組み」と同時に「就業規則の中身」を
把握しておく必要があります。
この2つがセットで初めて、
「自分の状況」が見えてきます。
⑤ 総務から見た「バレたときどうなるか」の実態
「副業がバレたら即クビ」
というイメージを持っている方も多いようですが、
見聞きした範囲では、
それはかなりレアなケースのようです。
解雇というのは法的にハードルが高く、
「副業がバレた」というだけでは
不十分なことが多いという話を聞きます。
重い対応になるとしたら、
業務への明らかな支障が出ている場合、
競業避止義務に抵触する副業
(同業他社での就業など)が発覚した場合、
あるいは会社への届け出に関して
虚偽の申告があった場合、
……といった条件が重なったときのようです。
一方で、
「注意・指導にとどまった」
「今後は事前に届け出るよう
言われただけで終わった」
という話も見聞きします。
会社の方針、
規模、
担当者の判断、
発覚したタイミング、
そして副業の内容によって、
かなりバラつきがあるようです。
総務の立場から正直に言うと、
住民税の変動に気づいたとしても、
「追及する」のが仕事ではなく
「処理する」のが仕事です。
気づきながらも特に何もしない、
という結果になることもゼロではない
という感覚があります。
ただし、これは会社によって全然違います。
身も蓋もない結論を言うと、
「バレたらどうなるか」は
会社次第、
担当者次第、
タイミング次第、
内容次第、
という話になります。
「絶対に大丈夫」も「絶対にアウト」もなく、
確率と状況の話をしているにすぎません。
⑥ 結局、この記事で伝えたかったこと
最後に、この記事で伝えたかったことを
3点に整理します。
ひとつ目は、
副業が会社に知られる主な経路は
「住民税の金額変動」であるという
仕組みの理解です。
スパイ映画的な調査ではなく、
毎年の書類処理の中で自然に
浮かび上がるものです。
ふたつ目は、
「普通徴収への切り替えで完全に防げる」
というのは過信で、状況と自治体によって
結果が変わるという点です。
手段として知っておく価値はありますが、
万能策ではありません。
みっつ目は、
まず自分の会社の就業規則を確認することが、
最初にやるべき具体的アクションである
という点です。
リスクの大きさは
「住民税の仕組み」と
「就業規則の内容」の
2つがわかって初めて、
自分ごととして判断できます。
この記事は、脱法の推奨でも、
副業を煽るものでもありません。
仕組みを知っていれば、自分で考えて判断できる。
その材料として使っていただければ十分です。
「総務の翻訳室」は、
会社の中の仕組みや制度を、
社員目線にわかりやすく翻訳するシリーズです。
就業規則、給与明細、社会保険、有給休暇……
「なんとなくわかったふりをしていた」ことを、
少しずつ一緒に整理していきます。
次回もよければお付き合いください。

