この記録は、過去の記憶に反応した個体を対象に作成されています。――記憶因子パターン体 記憶参照ログ:case-01
今から、ひとつ確認します。
あなたはこれまでに一度だけ、
「言わなければよかった」と思ったことがある。
内容は重要ではありません。
誰に対してだったか。
どんな状況だったか。
それも関係ない。
ただ、そのときの感覚だけは残っている。

一瞬で空気が変わった。
相手の表情が、わずかに止まった。
その後、何もなかったように会話は続いた。
あるいは、
続かなかった。

あなたはそれを覚えている。
思い出そうとしていなかっただけで、
消えてはいない。
■記憶ログ
被験者ID:YOU
反応:
・該当記憶の想起
・感情の再現
・軽微な不快感
ここで否定することもできる。
「そんなことはない」
「思い当たらない」
その場合、次の記録に移行する。
Enterあなたはこれまでに一度だけ、

「なぜあのとき黙ったのか」と考えたことがある。
言えたはずの言葉があった。
しかし、言わなかった。
理由ははっきりしない。
空気を読んだのか。
関係を壊したくなかったのか。
あるいは、
ただ怖かったのか。
あなたはその場面も覚えている。
■補足ログ
被験者ID:YOU
反応:
・記憶の二重参照
・自己評価の変動
・軽度の後悔
ここまでで、十分だ。
あなたはすでに、
過去の記憶を参照している。
これは想起ではない。
外部刺激による、

強制的な参照だ。
Enterこの記録は、あなたの中に存在しない情報を扱っていない。
すべて、もともと存在していたものだ。
ただし、ひとつだけ違う点がある。

あなたは、思い出すつもりがなかった。
Enter■最終記録
被験者ID:YOU
状態:
記憶参照中
この処理は、しばらく継続する。

終了条件は定義されていない。
Enterこの記録を閉じたあとも、
何かが引っかかる可能性がある。
それはこの文章のせいではない。
もともと、そこにあったものだ。
ただ、参照された。

記録への協力に感謝する。
Q.E.D.case-02▼
case-03▼
趣向を凝らした意欲作である、前シリーズ:
『行動因子パターン体』の拙作群はこちらから👇
case‐01▼
case‐02▼
case‐03▼
《About Me》▼
