トートタロット誕生の物語
トート・タロットは、アレイスター・クロウリーの指導のもと、フリーダ・ハリスが約5年をかけて制作したタロットです。(1938〜1943年)
クロウリーは、「時代はすでに変わった。新しい時代には、新しいタロットが必要だ」という考えを持っていました。
当初は数か月ほどで完成する予定だったそうですが、ハリスは予想をはるかに超える情熱で制作に取り組みます。
二人は妥協することなく、一枚一枚を磨き上げ、結果として約5年もの歳月を費やして完成させました。
しかし、完成したにもかかわらず、当時の印刷技術では繊細な色彩を十分に再現することができませんでした。
さらに時代は第二次世界大戦。
さまざまな事情が重なり、カードは出版されることなく、25年以上もの間「幻のタロット」として眠り続けることになります。
そして1969年、ようやくトート・タロットは世に送り出されました。
しかし、その時にはクロウリーは1947年、ハリスは1962年にすでに亡くなっており、二人とも完成したカードが出版される姿を見ることはできませんでした。
この事実を知ると、二人の無念さと、それでも作品を未来へ託した想いが伝わってくるような気がします。
実は、クロウリー自身はトート・タロットを「占い」のための道具として使っていたわけではありません。
トート・タロットは未来を当てるためというよりも、自分自身を深く見つめ、意識を探究するための道具として非常に優れていると言われています。
カードに描かれた色彩、形、象徴、配置──。
そのすべてが、見る人の無意識に働きかけるよう緻密に設計されているのです。
20世紀の魔術師が生み出したトート・タロット。
次回は、クロウリーが語る「魔術」とは何なのか、その考え方の一つを見ていきたいと思います。
