【ショートショート】文鳥の夢(#せりふ三題噺)
「おかしいな、さっきそこに出したはずなのに」
「えー、なくなっちゃったの?」
「お皿出してる間になくなることはないでしょ」
うるさいな、せっかくいい気分で寝てたのに。
「あった、これだ!」
「よかったー。真っ白できれいだね」
「あれ、いちごが乗ってたはずなんだけど」
「あ、これじゃない? 埋もれてる」
ちょっと、痛いんだけど!
そんなにグイグイ引っ張らないで!
「ぴよぴよ! ぴぴぴ!」
⋯⋯あれ?
「待って、これケーキじゃなくて文鳥だよ」
「あれ、本当だ! かわいい!」
「こんな所に文鳥? あんたどこから来たの?」
いやいやいや。
普通、ケーキと文鳥は間違えないよね!
たしかに、クチバシがいちごみたいに見えるかもしれないけどさ!
⋯⋯ではなくて。
「かわいいな」
「ほんと。真っ白でふわふわ」
「癒されるー」
ちょっと、撫で回さないで!
ハゲたらどうすんのよ!
⋯⋯でもなくて。
「ぴょ!?」
私、文鳥になってる!
なんで? 何が起こった?
「それはそうとさ、ケーキはどこなの?」
「愛実もいないし。⋯⋯え、まさか愛実がもう食べちゃったとか?」
「あり得る。あいつ食いしん坊だし、いちご好きだもんな」
本人がいないと思って好き勝手なこと言って!
私、ここにいますけど。文鳥姿でちゃんといますー。そして、ケーキなんて食べてないです!
だめだ、届かないツッコミを入れていても埒が明かない。状況を整理しよう。
昨日の夜、お気に入りのパジャマを着て、ソファで漫画読みながら寝落ちしたんだよね。⋯⋯待って、そのパジャマの柄、文鳥だったわ。原因、それか?
「でも、さすがに自分用だって気づくでしょ。だって今日、愛実の誕生日だもん」
⋯⋯。
そうだった。今日、私の誕生日だった。
どうりで、同棲中の彼氏と、私の飲み仲間二人が集まっているわけだ。
「ねぇねぇ、今日、いよいよなんでしょ?」
「とうとうこの日が、って感じだね」
飲み仲間の景子と沙織がニヤニヤしている。
「まあな。なぁ、二人ともどう思う? こう、膝をついてパカっと⋯⋯」
「うわー、それはベタ過ぎるんじゃない?」
「いやでも、愛実は案外そういうの好きかもよ」
待って、何の話?
まさか。まさか。
「愛実、プロポーズ受けてくれるかな」
「当たり前じゃない!」
「あの子、ずっと待ってたんだから!」
文鳥なんかになってる場合じゃない!
何とか人間の姿に戻らないと!
「あ、そうだこれ。バースデーカードを用意したの」
景子がバースデーカードを取り出してそっと開く。すると、電子音が曲を奏で始めた。
「ハッピバースデートゥーユー、ハッピバースデートゥーユー⋯⋯」
なんだか悲しくなってきた。
このまま人間に戻れなかったら、どうしよう。
「ぴよぴよぴー、ぴよぴよぴー」
悲しげにハッピバースデーのメロディを口ずさんだとき。
「おめでとう!」
という声と共に大きなクラッカーの音が聞こえ、びっくりして目を開ける。
「愛実、なにをぼんやりしてるの? 早くキャンドルの火を消して」
声のする方を見ると、景子と沙織がクラッカー片手に笑っていた。はっと我に返り自分の姿を確かめると。
「よかった! 人間に戻れた!」
拳を突き上げ喜んでいると、彼氏が両手を背後に隠して近づいてきた。
「愛実、どうか受け取ってくれ」
パカリと開いたそのケースの中には⋯⋯。
「いちご?」
唖然としていると、彼氏が満面の笑みのまま飛び上がり、ピョンピョンとジャンプし始めた。その様子はさながら⋯⋯。
「文鳥の求愛ダンス?」
気づくと、彼氏が文鳥になっていた。慌てて辺りを見回すと、景子と沙織がいたはずのところにも、なぜか文鳥が二羽いる。
そこで、私は我に返った。
「私には、彼氏も飲み仲間もいないじゃない」
いるのは、ペットとして飼っている三羽の文鳥だけ。
「さっきのは私の夢? それとも⋯⋯」
この文鳥たちの夢?
こわごわ見下ろすと、三羽の文鳥がつぶらな黒い瞳でじっとこちらを見つめていた。
寝落ちして、文鳥になってケーキを食べてたら、日付が変わってました。無念。
寝起きに書いた訳わからん文章ですが、供養させてください。
こちらのお題で書かせていただきました。
画像は、みんなのフォトギャラリーよりお借りしました。
