グミの国(#せりふ三題噺)
太陽が地平線へと沈みゆくその刹那を、じっと見守る影が二つ。
「あの地平線の彼方にさ、グミの国を作ったんだ」
「グミの国?」
「そう。君、ずっと前に言ってたよね。グミが大好きで、一日中グミを食べていたいって」
「⋯⋯言った、かも」
「ぼくがその夢、叶えてあげるよ」
彼は彼女の肩をそっと抱き寄せた。
「グミの国には、これで飛んで行けば辿り着く」
彼は肩に回した方とは反対の手で一本の傘を取り出し、バサッと広げた。カラフルなグミの絵が描かれた傘だ。
「飛ぶ!?」
「そう。さあ、しっかり掴まって!」
傘がくるくると回転する。二人は、宵の明星がまたたく夜空に向かって、ぐんぐんと昇っていった。
「ほら、あれがグミの国だよ」
きっと君も気にいると思うんだ、後で感想を聞かせてね、と彼は言った。
大きな門は、色とりどりのグミでできていた。そこに立つ門番も、グミでできている。ソフト系のグミなのか、手足をグニャグニャさせながら、何とか二人に向かって敬礼をした。
「さあ、中を案内しよう」
彼は彼女に手を差し伸べた。彼女は少しためらった後、その手をそっと握る。二人はグミの国へと足を踏み入れた。
どこもかしこも、大小さまざま、色とりどりのグミでできていた。形も、丸っこいもの、平べったく細長いもの、動物の形をしたものなど、多くの種類があった。
「君のための国だからね。好きにしていいんだよ」
彼女が木になったクマの形のグミを見つめていると、彼がその中の一つをもぎ取り、彼女の唇にそっと近づける。彼女はまた少しためらい、それからぱくりと食べた。
「どう、おいしい?」
もぐもぐする彼女が頷くと、彼はにこりと微笑んで、彼女の手を引いてまた歩き出した。
グミの家、グミの教会、グミの風車にグミの橋⋯⋯。
「ここには、他の人はいないの?」
すれ違うのは全て、グミでできた動く人形ばかり。彼女が尋ねると、彼は目をぱちくりとさせた。
「君のための国だもの。君と僕以外、この国にはいらないだろう?」
「⋯⋯」
「それで、感想は? この国はどうだった?」
にこにこする彼に、彼女はためらいながらそっと告げた。
「実は私が好きなのは、お菓子のグミじゃなくて、グミの木になる、グミの実の方なの」
彼のにこにこ顔が、がちんと固まった。
それは、言ってくれなきゃわからないよ⋯⋯。
と、彼の気持ちを代弁してみました。しかし、彼の彼女に対する気持ちも、かなりの重さですね。ところで彼は、何者なのでしょう。
こちらのお題で書かせていただきました。
画像は、みんなのフォトギャラリーよりお借りしました。(クマさんのグミ、かわいい!)
