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hiroshi1031616
【毎週ショートショートnote】曼珠沙華と龍
天界の白く可憐な曼珠沙華は、人の世で一瞬目が合った、権現堂川を司る龍に恋をした。
「あの龍は凶暴らしいわよ」
「私たちは瑞相として、人の世にふる花」
「あの悪龍とは、結ばれない」
姉たちにそう言われた曼珠沙華は、けれど諦めきれなかった。
彼のもとへ行きたい。
忘れられない。
あの、深い苦しみを湛えた瞳を。
龍は人々を愛し、暮らしを守っていた。しかし押し寄せる洪水に持ちこたえられず、川を暴れさせてしまう。ゆえに彼は「悪龍」だった。
天界から龍と人々を見守る曼珠沙華のなかで、恋情と執着が徐々に育っていく。
川の氾濫を鎮めるため、母娘が人柱となったとき、曼珠沙華は絶叫した。
彼を苦しめないで。
彼に苦しめられないで。
どうか、どうか!
白く咲いていた彼女は、その想いと迸る叫びによって紅に染まり、地に降り注いだ――。
曼珠沙華は人の身となった。彼と共に在るために。彼女は今、かつて自分がふらせた花々が、敷き詰められた赤い絨毯のように咲き乱れる公園を通り抜けている。
弾む足取り、躍る胸の鼓動。少しの緊張。
愛しい川のほとりまで辿り着き、そっとのぞき込んだ水面で、忘れ得ぬあの日の龍が微笑んでいた。
少し字数が多くなりました。
法華経に出てくる天界の幻の花・曼珠沙華が、権現堂川(龍)に恋する話です。権現堂堤の歴史を下敷きに書いてみました。
桜の名所として有名な権現堂堤ですが、桜の季節が終わっても四季の花を楽しめるように、曼珠沙華などが植えられたようです。
こちらの企画に参加しております。
画像は、みんなのフォトギャラリーよりお借りしました。
