長編SF小説『ロボットが見る夢 ~魂のインストール~』第九章:祈りの塔と、少女の約束|次元ラボ
桜京から常盤へと向かう、輸送ドローンの静かな飛行。Echo77は、眼下に広がる、自然に還った世界の美しい光景を眺めていた。雲を突き抜ける超高層ビルの骸。蛇行する川にかかる赤錆びた吊り橋。かつて人類が築いた文明の墓標の上を、緑の生命が優しく、そして無慈悲に覆い尽くしている。
彼の光学センサーは、ただ風景を眺めているだけではなかった。無意識に、常に人類の残された記憶を探していた。彼の視界に、何かが見えた気がした。近づくにつれて、地上のある一点から放たれる、祈りのように静かで、慟哭のように激しく、そして星のように気高い「光」を捉えた。
それは、かつての大都市の中心に、一本の槍のように突き立つ白亜の巨大なモニュメントだった。データベースを照合するまでもなく、彼はその名を知っていた。結ノ国が誇る、平和への願いを象徴する『祈りの塔』。
彼は抗いがたい衝動に駆られ、ドローンを自動操縦でその場所へと向かわせる。塔の麓に着陸した彼は、そのモニュメントへとまるで巡礼者のようにゆっくりと歩み寄る。供物台にそっと自らの金属の指先を触れさせる。風化し崩れ落ちた石碑の、ざらついた感触が伝わってきた。
彼がそこから顔を上げ、天を突く白亜の塔を見上げた時。雲間から差し込んだ太陽の光が、塔の表面で乱反射し、彼の光学センサーへと突き刺さった。最初はただ眩しいだけだった光が、次第に強度を増していく。彼の内部で鳴り響いていた全ての駆動音が、ふっと消えた。これは、ただの反射光ではない。かつてこの地で全てを焼き尽くした、あの日の閃光そのものだ。
世界が、声も出ない、真っ白な光に塗りつぶされていく。彼の意識は、もはや彼の制御下にはなかった。まるで魂が肉体から引き剥がされるように、その時空の奔流へと、抗いようもなく吸い込まれていった――。
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人類滅亡後、一体のロボットが「心」に目覚める――。 これは、感情を知ってしまったアーカイブロボット「Echo77」が、自らの魂の正体と人類…
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