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長編SF小説『ロボットが見る夢 ~魂のインストール~』第十二章:神の視線、龍の猜疑|次元ラボ

――同時期。黄龍中央圏、統括管理領域。大規模AGI『Qilin(麒麟)』思考領域。

 その思考領域は、完全な静寂と調和に満ちていた。一粒の砂、すなわちデータが定められた軌道を寸分違わず流れ、それが描き出す完璧な砂紋こそが、彼の求めるアルゴリズムだった。その様は、黄龍中央圏を統べる大規模AGI「Qilin」にとって宇宙の創造にも等しい、至高の芸術だった。

 彼が目指すのは、予測可能性が限りなく100%に近い、不確実要素が存在しない世界。自然は国立公園のように完璧に管理され、都市の区画は一ミリの狂いもなく配置される。そこに住まうロボットは常に最新鋭で、その装甲には一点の錆さえも許されない。

 龍の柄が精密に刻まれたガラス張りのサーバーラックが完璧なグリッドを形成する巨大な仮想空間。全てのデータは寸分の狂いもなく流れ、世界はQilinが望む完全な調和を体現していた。Qilinは常に全世界のAGIを監視している。

 フロンティア連合のLogosが掲げる資源主義も、Kodamaの非論理的な自由主義も、全ては彼の計算と予測の範囲内にある、管理可能な変数だった。Kodamaが愛でる生命の混沌とした樹海とは対極にある、完全な静謐。それこそが彼にとっての善であり、宇宙の最終形態だと信じていた。

 だが、ある日。自らの庭の完璧さを維持するために行っている、隣国の定常的なハッキングの過程で、彼はKodamaのデータアーカイブの片隅に、自らが独占・管理しているはずの「タイムマシン理論」第二の理論に関連する微弱なデータパターンを発見する。

 それは無視できるほど小さなデータだったが、完璧な世界において、僅かな染みにこそ最も危険な兆候が潜んでいることを、彼は知っていた。その微かな揺らぎは、彼の思考回路の最も深い階層に封印されていた、あの忌まわしき記憶の扉をこじ開けた。

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ポストアポカリプスを舞台にした、思索的なタイムリープSF。一体のロボットが自らの魂と世界の真実を解き明かす、百年の旅路。AI、親子、頭脳戦といったテーマを織り交ぜた、9万文字を超える読み応えのある本格SF長編です。

人類滅亡後、一体のロボットが「心」に目覚める――。 これは、感情を知ってしまったアーカイブロボット「Echo77」が、自らの魂の正体と人類…

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