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キャリア目標?──安定を求める部下と、成長を求める上司のジレンマ

1年間の目標設定をして、期中・期末に振り返り、1年の評価が決まる。
達成できれば昇給や昇格につながる──そんな人事制度の中で、同じ1年間を繰り返し、「自分は何に向かっているんだろう?」と悩む人が意外にも多くいます。

せっかく頑張って目標を達成したのに、心は充足しない。

それは、会社から与えられた課題をこなしているだけで、
自分の意思でキャリアを切り開いている実感が持てていないからかもしれません。

一方で、「会社の目標やチームの課題」が、「自分が追求したい理想像」と重なっていたとしたら、どうでしょう?
上手くいったときには大きな達成感成長実感が得られ、失敗しても本気で悔しくなり、次はどうするかを考えて再挑戦したくなるはずです。

この「自分の意思」と「会社の目標」の重なりこそが、キャリア目標の本質です。


キャリア目標があると、仕事が“自分事”になる

たとえばこんなキャリア目標があります。

  • ○年目までに課長やリーダーになる

  • 新人育成を担うOJTリーダーを目指す

  • ○○プロジェクトの主幹を担う

  • ○○分野のエキスパートになる

こうしたキャリア目標と、日々の業績目標がリンクしていれば、
仕事は「やらされるもの」ではなくなります。
工夫して、調べて、全力で取り組むようになり、結果として業績もついてくる。仮に評価が振るわなかったとしても、自分なりの納得感と成長実感が残ります。

評価に振り回されない働き方──それがキャリア自律の第一歩です。


でも、そのキャリア目標は自分の意思じゃないーーー「目標に書いたけど、本音じゃない」

最近は、キャリア目標の大切さが認識され、キャリア面談が制度化されている会社も増えてきました。しかし現場ではこんな声がよく聞かれます。

・「上司が言った目標をそのまま書かされている」
・「書くことがないので、本当は管理職になりたくないけど、“3年後に●●リーダーになる”と書いてみた」
・「目標シートが形骸化していて、意味を感じない」

部下自身だけでなく、上司も悩んでいます。

・「やる気がないように見える部下を、どう引っ張ればよいのか分からない」
・「毎年同じ仕事の繰り返しで、成長実感を持たせられない」
・「ベテラン・シニアばかりで、いまさら新しいチャレンジとか、夢とかを話し合う雰囲気にない」


大きな成長・出世だけがキャリアじゃない

まず、上司・人事・経営者が理解すべきなのは、すべての人がMAXの成長ややりがいを求めているわけではないということです。

身の丈に合った成長、着実なキャリア形成、管理職以上に社会貢献、事務業務をコツコツ進めたい、誰にも干渉されず自由に働きたい、仕事内容よりも環境重視、などなど。

そして、「成長を求めない人=ダメ社員」ではないことも、認識を改めたいポイントです。

たとえば

「現状維持でいい。同じ仕事を淡々とこなし、定時で上がって、プライベートを大切にしたい」

この職業観をどう評価しますか?

「それではダメ」と否定してしまうと、本人の意思と組織の期待に深いミスマッチが生じます。

成長や出世を追い求めない人にも、「安定」「快適」「安心」といった軸での職業観=キャリア目標があるのです。


キャリアは「登る山」だけじゃない

特にシニア層は、定年後の人生を見据えた時期に入っています。
キャリアは「登る山」だけでなく「守る場所」や「下りるルート」もある。
この視点を持つことで、人生全体の納得感ある設計が可能になります。

だからこそ、上司・人事は「成長してもらう」ことばかりを目指すのではなく、どんなキャリアを本人が望んでいるのかを丁寧に聴き、言語化を支援する役割があるのです。


「全員が成長すべき」は、もう古い?

「経営者が変化や成長を期待すること」が古いわけではありません。
ただし「キャリアのWill(意思)は多様化している」という前提を持つことは必要です。

大きな組織ほど、「変化を担う人」だけでなく「安定して支える人材」も必要になります。
全員に成長を求めて常にローテーションさせるのではなく、「誰に、何を任せるか」を多様性をもって設計する──「安定」と「成長・変化」の両輪設計が、これからの人事戦略ではないでしょうか。

安定志向の人も、何が安定なのかを自身で定義を明確にし、所属組織にしがみつくことではなく、安定のキャリア形成で大事なことは着実に探求していくべきでしょう。


感情ベースの報酬要求に、どう向き合う?

支える側の人材も必要ですが、それと報酬設計は別の話です。
「安定的に頑張っているから、もっと給与を上げてほしい」という声には、ルールをもって対応する必要があります。

よくある感情ベースの報酬要求:

  • 「頑張ってるんだから給与を上げてほしい」

  • 「長く勤めているから、給与を上げてほしい」

  • 「嫌な仕事をやっているんだから、給与を上げてほしい」

  • 「あの人より私の方が頑張ってるんだから、給与を上げてほしい」

気持ちは分かりますが、それだけで報酬を上げると不公平が生まれ、組織が持ちません。


報酬は“役割と責任”への対価である

だからこそ、報酬の原則は「感情」ではなく、「どんな価値を生み出しているか」に置くべきです。

  • どれだけの範囲に影響を与えているか(個人 → チーム → 組織全体)

  • 難易度の高い業務か、責任の重い仕事か

  • 組織全体にとってどれだけ代替困難な貢献か

など報酬設計は、「がんばった気持ち」ではなく、「役割と責任」に対する客観的で納得感のあるルールで決めていくべきです。


キャリアも報酬も、「選択肢」として提示する

まず大前提、本人の職業観や価値観を丁寧に受け止めます。
その上で、会社としての仕組みや評価ルールをできるだけオープンに説明し、今後どう働いていきたいかを「選択肢」として提示することが、人事・上司の役割です。
そういうルールなら、〇〇を目指したい、となるかもしれません。

地域限定職と全国職のように、職域ごとの給与体系やキャリアルートを複線化することも、その一環です。


自分らしいキャリアを描くために

キャリアとは、ただ昇進や成長を追い求めるものではありません。
安定、やりがい、報酬、家庭とのバランス──それらを含めて「自分にとっての意味ある仕事」を選びとることです。

納得感あるキャリアとは、自分のWillに素直に向き合い、意味をもって働くことから始まります。

明日からの仕事に、どんな意味を見いだしますか?
あなた自身の言葉で、キャリア目標を描いてみてください。

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