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製造業向け|なぜ安全ルールは守られないのか|面倒ではなく守れない作業設計の問題

「保護メガネ、ちゃんと着けてください」

朝礼で言う。
安全掲示板にも貼ってある。
巡回の時にも注意する。

それでも現場に行くと、保護メガネを頭に上げたまま作業している人がいる。
手袋を外して細かい加工をしている人もいる。
防じんマスクをずらして話して、そのまま作業に戻る人もいる。

現場では、こういうことが普通に起きます。

もちろん、良いことではありません。
危険な作業で保護具を外すのは、本来あってはいけないことです。

ただ、ここで「意識が低い」「安全への考えが甘い」とだけ言って終わらせると、たぶん何も変わりません。

なぜなら、現場には現場なりの理由があるからです。

保護メガネをすると曇る。
手袋をすると指先の感覚が鈍る。
マスクをすると暑いし、息苦しい。
安全カバーがあると段取りが悪くなる。
耳栓をすると周囲の声が聞き取りにくい。

作業者からすれば、外した方が早い。
外した方が見える。
外した方がやりやすい。

この感覚は、現場に立っている人なら分かるはずです。

安全を守ると、作業しづらくなることはある

安全ルールを語る時、ここをきれいごとにしてはいけないと思います。

安全を優先すれば、作業性が落ちることはあります。
保護具を着ければ視界が変わる。
手先の感覚も変わる。
体の動きも少し制限される。

だから、忙しい時ほど外したくなる。
急ぎの仕事ほど手順を飛ばしたくなる。
「今回だけ」「少しだけ」「すぐ終わるから」と思ってしまう。

現場では、危険な行動が悪意から生まれるとは限りません。

むしろ多いのは、作業を早く進めたい、精度を出したい、納期に間に合わせたいという気持ちからです。

ここが難しいところです。

本人はサボっているわけではない。
仕事を進めようとしている。
でも、その判断が危険側に寄っている。

だから安全は、ただ注意するだけでは足りません。

「守れ」と言うだけでは、現場は元に戻る

安全ルールが守られない時、よくある対応があります。

朝礼で注意する。
貼り紙を増やす。
チェック表を作る。
再教育する。
管理者が巡回する。

もちろん、必要なことです。
言わなくていいという話ではありません。

ただ、それだけで変わるなら、たぶん最初から崩れていません。

問題は、ルールを守った状態で作業が成立するようになっているかです。

保護具は、使う場所の近くにあるのか。
曇りにくいものを選んでいるのか。
細かい作業に合う手袋を用意しているのか。
安全カバーを使っても段取りできる治具になっているのか。
通路に物を置かなくても済む置き場があるのか。
急ぎ案件でも守れる手順になっているのか。

ここを見ないまま「守れ」と言っても、現場は忙しくなった瞬間に元へ戻ります。

人は、やりやすい方へ流れます。
それが危険な方向なら、作業者だけでなく、作業の作り方にも問題があります。

危険な作業は、本人だけの問題では終わらない

保護具を外した方が作業しやすい。
それは分かります。

でも、だからといって危険な状態を放置していいわけではありません。

一度事故が起きれば、損失はケガをした本人だけでは終わりません。

作業は止まる。
周囲の人も動揺する。
報告書を書く。
原因を調べる。
再発防止策を考える。
場合によっては、工程も納期も組み直しになる。

さらに、労働災害が発生すれば、事案によっては労働基準監督署による立入調査や監督指導の対象になることがあります。

機械や設備、作業方法、帳簿、教育記録などを確認され、法令違反や危険な状態が認められれば、是正勧告や改善指導を受ける場合もあります。

危険性の高い機械や設備については、労働安全衛生法に基づき、使用停止命令等の行政処分が行われることもあります。

つまり、安全を軽く見るということは、単に「危ないことをした」という話では済みません。

設備が止まる。
工程が止まる。
出荷が止まる。
信用も落ちる。

最悪の場合、工場の生産そのものに影響します。

「少しやりづらいから外した」
「急いでいたから省いた」

その判断が、会社全体を止める可能性まで持っている。
ここは現場も管理側も、一度きちんと考える必要があります。

安全と効率を対立させてはいけない

現場で一番まずいのは、こういう空気です。

安全を守ると遅くなる。
効率を上げるなら少し危なくても仕方ない。
忙しい時は安全より納期が優先される。

この考え方になると、ルールはだんだん形だけになります。

見られている時だけ守る。
監査前だけ整える。
事故が起きた時だけ騒ぐ。

これでは、安全管理とは言えません。

本来、安全と効率は対立させるものではないはずです。

安全に作業できるように置き場を決める。
無理な姿勢にならないように作業台を見直す。
保護具を着けても見えるように照明を変える。
細かい作業に合う道具を選ぶ。
安全装置を使っても段取りできる治具を考える。

そうやって、危険な動きをしなくても仕事が進む状態にする。

安全を守るほど作業が遅くなるなら、現場は守らなくなります。
安全を守るほど作業が安定するなら、ルールは自然に残ります。

この差は大きいです。

安全は意識ではなく、作業設計で守る

もちろん、作業者の意識は必要です。
危険を感じる力も必要です。
ルールを守る姿勢も欠かせません。

ただ、それを個人任せにしすぎると限界があります。

毎日忙しい。
納期に追われる。
人も足りない。
急ぎ案件も入る。

その中で、毎回「気をつけろ」だけで安全を守るのは無理があります。

だから、見るべきなのは作業設計です。

保護具を着けたまま作業できるか。
危険な姿勢にならないか。
一人で無理な重量物を扱っていないか。
通路をふさがずに仮置きできるか。
安全装置を外さなくても段取りできるか。
急ぎの時でも省略しなくて済む流れになっているか。

安全ルールが守られない時、最初に責めるべきは人ではありません。

そのルールは本当に守れる形になっているのか。
守った状態で仕事が回るようになっているのか。

ここを見ないと、現場はまた作業しやすい方へ戻ります。

まとめ

保護具を外す。
手順を省く。
安全カバーを使わない。
通路に物を置く。

こうした行動は、確かに危険です。
放置していいものではありません。

ただし、現場をよく見ると、その背景には「作業しづらい」という現実があります。

だからこそ、管理側は「なぜ守らないんだ」で止まってはいけない。

守らない人を責める前に、守れる作業になっているかを見る。
作業しやすさと安全がぶつかっているなら、そこを設計し直す。

安全は、注意喚起だけでは守れません。
貼り紙だけでも続きません。
朝礼で何度言っても、作業そのものが守りにくければ、現場は崩れます。

作業しやすさを優先して危険を放置すれば、最後は本人のケガだけでは済まない。
工程が止まり、設備が止まり、工場全体の損失になることもある。

事故が起きてから止められるより、事故が起きる前に見直した方がいい。

安全とは、作業者に我慢させることではありません。
危ない動きをしなくても仕事が進むように、現場を作り替えることだと思います。

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