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雲の上の待合室


満月の夜。
宙では、天の方舟が、星と星のあいだを静かに行き来していました。

ゆっくりと、けれど休むことなく。
今夜は、満月と大潮が重なる、特別に忙しい夜なのです。

雲のずっと上、
ふかふかの雲に囲まれた雲の上の待合室では、
たくさんのコウノトリたちが集まっていました。

くちばしを整え、羽をたたみ、
それぞれが自分の荷物が届くのを待っています。

天の方舟から、ひとつ、またひとつと
白く包まれた荷物が運ばれてきました。

コウノトリたちは、そっと受け取ります。
胸に抱くように、大切に。

その荷物の中には、必ず入っているものがあります。

ひとつは、消えない手紙。
それは、これから「パパ」「ママ」と呼ばれる人たちへ宛てた、
短くて、やさしい挨拶文でした。

――あなたのもとへ行きます
――よろしくお願いします

そう書かれた文字は、
涙や時間では、決して消えないインクで記されています。

もうひとつは、木の指輪。
天空の大樹のツルを、細く、やわらかく編んで作られた指輪です。

それは、約束のしるし。
出会う前から結ばれていた、見えない縁のかたちでした。

コウノトリたちは、
消えない手紙と木の指輪を、
何度も確かめるように見つめ、

丁寧に、丁寧に、
何重にも包み直します。

すべての準備が整うと、
雲の上の待合室に、静かな合図が響きました。

コウノトリたちは一斉に羽を広げ、
月の光を背に受けて、地上へと飛び立っていきます。

そのころ地上では、
新しい命が生まれる、出産ラッシュのピーク。

夜の街のあちこちで、
小さな産声が、星の瞬きと呼応するように響きはじめていました。

満月の夜。
今日もまた、
空と地上を結ぶ、大切な約束が届けられていくのです。


***
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