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lazy_planet
本能的に旅人 第十六話
しあわせチョコ
潮の香りに包まれた船に戻ってきて、あたりまえのように大好きな仲間たちを見てほっとした。
帰る場所があるということは大きな安心。その安心感があるからこそ、旅ができる。
この船ではじめて会った人たちばかりだけど、貴重な時間を共にしてきた全員が愛おしい。
何かひとつの大きなことを成し遂げ終えようとしている、澄んだ目をしているみんなが。
船の上ではどこで誰と会っても挨拶をしたり、会話が始まったりしていた。帰国後にはまた周りが知らない人ばかりになり、人と人の間を黙って素通りしなければならない状況に耐えられるのか心配になってくる。
でもそれは古い考え方で、目に映すものを選んでいるのが紛れもなく私であるなら、選び映しているものと自分の間に明確な境界線は、本当はいらないのかもしれない。
部屋にいつの間にか戻ってきていたサアヤが、今夜もまた大好きなチョコレートを大口でかじっていた。
誰かと一緒の部屋に住むというのは、血がつながっていなくとも家族になっていくような感覚がある。
お風呂上りの裸を見たり、変な寝言を聞いたりするだけでなく、寝る前に行う習慣を頭じゃなく感覚で知っているからそれを見ると安心したり。
相手の気配があることが当たり前だから、夜中に目が覚めたとき居ないと心配になったり。
狭い部屋はチョコレートの香りでいっぱいになって、脳にまで甘さが伝わってきた。
私はあまりの平和さに、単純にそれだけでなんだか嬉しい気分になっていた。
しあわせって、ことのほか簡単なことなのだな。
誰かとの「つながり感」があると自然と成り立っていて、ふと、しんみりと感じるもの。
