vol.25 アニッシュ・カプーア | 東京国際フォーラムARTIST

粉末ぽいが、強烈な青と言うのを見たことがあるだろうか。青と言えば、信号の青や、空や海の青を思い浮かべる人もいて、まちまちである。だが「強烈な青」と言うのはありそうもない。
インドだったら、ありえるのではないか。インドの女性たちが身にまとっているサリーには、強烈な青の柄がありそうだ。
インド生まれのイギリスの彫刻家カプーアを一躍有名にしたのは、この青の神秘だった。カプーアは口が円形の浅い鉢の全面を、この青の顔料で覆ったのである。
手を円形の鉢に入れても、どこが底だか分からない。私が美術館やギャラリーで見たカプーアの青の作品は、まさに神秘的な体験と呼べる対象だった。さまざまな文化には、さまざまな神秘があるのだろう。
カプーアをコレクションに欲しいと思った。文化の多様性を具現している。国際フォーラムに入れたのは、青の鉢状の作品ではなく、白の山状の作品。カプーアを最初に有名にした青の作品ではなく、次に有名にした白い山の作品である。こちらの方が優れていると判断した。
青い鉢状の作品がインドの女性たちが身にまとうサリーを連想させるとすれば、白い山状の作品は男性たちが頭にかぶるターバンの連想がある。
だが白い山の作品は地図の等高線を立体的にしたようであり、しかも極端に尖っている。
「インドにはこういう輝く山があるのだろうな」
と思わず神秘的な気分にさせられてしまう。造形的という意味で、青い鉢状の作品より優れていると考えた。造形を造形だけで判断するのでなく、持っている力や文化を総合的に判断するのである。
非・西欧化の波はいたるところに及んでいる。美術も20世紀の最後の15年間ぐらいが特に華々しかった。カプーアはその代表的 なアーティストだろう。

