ぼくの、おばけパーティ【創作】
ハロウィンの夜に、児童会館でここ数年行われている「おばけパーティ」。去年はなかったようだけど、今年は無事開催された。
ぼくも、この日をずっと楽しみにしていた。ちょっとボロだけど、お母さんに作ってもらったコウモリ男の衣装で仮装して。あれを着るのは久しぶりだ。──えっと、いつぶりだったっけ。
ぼくが参加した部屋では、同じ藤ノ宮小学校のメンバーが数名いた。みんなでお菓子を分け合ったり、写真を撮ったり。
集まったメンバーもちょっとした仮装をしていて、お互い照れながら感想を言い合う。部屋の中は、カボチャランタンのオレンジの光と、笑い声で溢れていた。
「もうちょっと暗い方が雰囲気でるかも。」
ぼくがそう言うと、たまたま窓のそばにいた男の子がカーテンを閉めてくれる。いつもの児童館が、幻想的な光と飾り付けで、まったく違う建物みたいに見えた。
学校のことをみんなで話すのも、なんだか妙になつかしく心地よい。ランタンの光で、仮装したみんなの影が五つ、壁にゆらゆらと浮かんでいた。
「こんな夜遅くに、外にいられることって普段ないよね。」
「ジュースも飲めるし、最高だね。」
それぞれの子供たちの目の前にはオレンジジュースの注がれた紙コップがある。
あっという間に、時刻は夜の七時頃。
もうすぐ、みんなの親が迎えに来る時間だ。
そのとき誰かが、こんなことを言い出した。
「知ってる? ハロウィンって、ワイワイ騒ぐお祭りじゃなくて、元々は日本でいう『お盆』みたいなもんなんだって。」
少し、背中が寒くなるようだった。怖い話は、あまり好きではない。
「えー、なにそれ。聞きたくないよ。」
不安がるぼくの声をよそに、得意気になって男の子は続ける。
「あの世とこの世の境界があやふやになるから、こうやって仮装をして、あの世から来るものを追い払うんだってさ。」
「こわーい。」
冗談っぽく、女の子が言った。
「これでお化けが出たら、本物のハロウィンじゃん。」
笑いが起きて、空気が少しだけ軽くなる。けれど、ぼくの胸にはぞわぞわした感覚が残った。
ふと気づく。去年のこの部屋には、誰もいなかったはずだ。
「去年はなかったようだけど」──その理由を、誰も話さない。
けれど、ぼくは知っている気がする。
なんとなく、遠い記憶を思い出す。
児童会館に行くまでの道で、赤いパトカーの光を見たこと。
お母さんが、泣きながらぼくの名前を呼んでいたこと。
また、誰かが言った。
「……ねえ、最初、何人だったっけ?」
ぼくは口を開こうとした。
たしか、六人だったよって教えてあげようとしただけなんだけど。なぜか、喉がつかえて言葉が出てこない。
ぼくの声だけが、風に溶けて消えてしまうみたいだ。
女の子がおそるおそる言った。
「五人しか、いないよね。……紙コップ、どうして六つあるんだろう?」
ふと見ると、ぼくのコウモリ男の影は、壁に映っていなかった。
みんなの笑い声が、遠くなる。
ぼくは手を伸ばした。その指先は、冷たい空気をすり抜けていった。
もう、自分の座っていた席も見えなくなっていた。
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書いてる人も偉い。書いてないけど考えてる人も偉い。まぶしい。