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衣装ケースの贈り物【創作】

「うわっ。」

目視できるほどの粉塵に、ごほごほと咳き込む。

祖母が亡くなってから開けられていなかった押し入れだ。ほこりっぽいのも無理はない。

義父母の家の片付けの任務を黙々とこなしていた私だが、夫からの依頼を安請け合いしたことを今さら後悔していた。

換気のため窓を全開にすると、見慣れない景色が広がる。解放感とともに涼しい空気が流れ込み、私は少し息をついた。

旦那と両親の不仲ゆえ、そんなには距離がないものの、この家へは頻繁には訪れていなかった。義父が早くに他界してからはたまに義母の顔を見にくる程度で、会うたびに小言や小さな衝突もあった。

義母の入院の手続きから、体調悪化、亡くなるまでがあまりに急だったことは……正直申し訳ないが、心の内でほっとしていた。

葬儀などの手伝いも淡々とこなし、私は薄情な女だと思う。

部屋から出てくるのは、写真一杯のアルバム、テレホンカード、アクセサリー。……そして、とにかく大量の衣類。

物珍しいものも一部あるにはあったが、物量で溢れかえっており、そろそろ嫌気がさしていた。

そんな時、押し入れの隅で見覚えのあるものが視界に入ってくる。

私がホームセンターで買って贈った衣装ケースだった。

やれやれ、ここも服の山か。

他の押し入れと同様、似たような地味な色味の衣類がたくさん出てくることを想像し、ため息をつく。

しかし、私があげた衣装ケースから顔を出すのは、少し豪華な、よそ行きの服やポーチ、小綺麗なハンカチだった。他とは明らかに毛色が違う。

よくよく見返してみると、すべて何かの記念やお土産に、私から贈ったものだった。

単純に、もらいものと自分で買ったものを分けて保管していただけのことかもしれない。

しかし衣装ケースに、文字通り普段着以外の「衣装」を入れて大事にしまっているのを見て、思わず笑ってしまった。

ケースの奥の小箱を手に取り開けると、年賀状や、記念日の手書きのカードが詰まっている。これも、私が贈ったものだ。

会えばきつい言葉もあったし、疎まれてもいたけど。ちょっとは大事にされていたのかもしれない。

見慣れているはずの自分の字が、なぜか胸に迫る。そこに紡いだ文字を、贈った相手はもういない。

視界が一瞬ぼやける。

今や、誰も住む人のいなくなったこの家で。
一粒、頬を伝う涙だけが、確かにここに残った。


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財布野紐ゆるみ 書いてる人も偉い。書いてないけど考えてる人も偉い。まぶしい。