ショートケーキ、二個入り【創作】
近所のスーパーでは、ケーキが二個入りで売ってる。
スーパーに置いてるものだから、味はそれなり。でも、それなりに美味しいのが私にとっては大事なんだ。身の丈にあってるというか。
別に、その日特別いいことがあったわけじゃなくて、ふと見かけて、美味しそうだなと思っただけ。買う必要は、無いと言えばなかった。
夕飯の準備はもう済んじゃってるし、出かけたのはドラッグストアで無添加のラップを買うことだけが目当てだったから。セルフレジを通った時、スーパーのかごにはそのケーキだけが入っていたの。
クリスマスと誕生日しか食べちゃいけないルールはないでしょ。
でも、ケーキは二個入でしか売ってなかった。ショートケーキとチーズスフレと、チョコケーキ。どれも同じものが二個ずつ入っていた。
別々の種類が混ざっていれば、そんなに悩まなかったかもしれない。だって今は、ひとりだから。どちらを先に食べるかの違いでしかない。
でも、ふたりで食べる場合。種類が違う二個入りなら、選んだあとで相手の方を一口ほしくなってしまうかも。
どれもよかったけれど、私はショートにした。
上にのってるイチゴは半カットだけ。スポンジの間は、ジャムみたいなのでお茶を濁されている感じ。
フォークは洗うのが大変だから、アイスのスプーンでいい。コーヒーも紅茶も淹れなくていい。
フィルムをはがして、クリームのついた面を内側に折るという儀式は、小さいけれど大事だった。ぴたっとくっついて、周りをクリームで汚さなくなる。
食べ始めるとき、手がベタつかなければグッド。重なったフィルムをそばに置いたとき、指に少しだけ甘い匂いが残る。
ケーキは口の中に入れると、甘い風味が広がって、それなりの幸せを私にくれる。形が小さくなっていって、やがてきれいになくなった。
四角い容器の中には、三角のケーキがもう一つ。でも、一個食べるくらいがちょうどよかった。
二個食べたら、幸せ過ぎて身の丈にあってないと思ったから、明日にする。
土曜の夜。明日も仕事はまだない。
カレンダーの日付を一応確認。彼が戻るのは、まだ少し先だ。だから、たぶん残りもひとりで食べる。
冷蔵庫に残りのケーキを入れ、その扉を閉めたとき。ぱたりと閉じた音が、ほんの少しだけ、私に眠気を連れてくる。
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書いてる人も偉い。書いてないけど考えてる人も偉い。まぶしい。