ラブレター、三通【創作】
普通は嫌だと思っていた。
同じ言葉を、自分以外にも向けて書いてたら。
誰からでもいいからとにかく返事がほしいだけの手紙なんか。
もらっても、うれしくない。
自分を選択した事実。
書くために差し出した時間。
心ごと向き合ってくれた気持ち。
全部が少しずつあるから、届く。
下書きを見つけた。
誰かに出す手紙の。
読んだことがある内容だった。
見たことのある筆跡だった。
自分が受け取ったものと、同じ。
宛先の名前が違うだけ。
似たようなことは前にもあった。
誰かにあげたプレゼントだ。
欲しいというから、家からわざわざ持ってきたストラップ。
正直自分ではいらないものだった。
でも持ち出すとき、じっくりと見てからバッグにしまった。
それをあの子は、渡したあと。
すぐに飽きて、他の子にあげちゃった。
私はすごく嫌だった。
せっかく持ってきたのに。
喜んで大事にしてくれると思ったのにって。
でも、隣にいた子は、「あげたんなら好きにさせたらいいじゃん」と軽く言う。
その言い分も、今となったらわかる。でも私は、嫌だった。その嫌な気持ちを、忘れたくなかった。
それで今、また似たような場面に遭遇している。なにかの作品募集の企画だった。企画にはいくつかの種類があって、それぞれに別の主催者がいる。
選ばれた応募作品には、賞金が出た。
受賞すれば、目立つし、きっとちやほやされるだろう。
主催者は、自分の企画に素敵な応募があるのを待っていると思う。自分が用意した場所に飾られるのはどんな作品だろうって、楽しみにすると思う。
企画によって、募集されている内容が少しずつ違った。
きれいなものを送ってください。楽しいと思うものを集めます。好きなものを教えてください。そんな風に、企画ごとに色が違う。
でも今回、違う三人の主催者のところに、同じ内容の応募作品があった。
要項では、重複内容での応募は、禁止されていない。応募する方もいちいち「同じ内容で出していいか」なんて、各主催者に確認しない。
出す方からすれば時短になる。同じ封筒を、宛名だけ変えて出すみたいなもの。手間も思いも、安上がりだ。
でもその分、主催者が受けとる大切なものは、たぶん三分の一になる。
隣の子は、「たくさんの要項を見て、三つも応募をして、すごいね!」と言う。
その言い分はわかる。昔も今も。
でも、そうかしら、とも思う。
私はその気持ちを、いつまでも捨てたくない。
あの下書きの紙を思い出すと、今でも心が少し冷たくなる。
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書いてる人も偉い。書いてないけど考えてる人も偉い。まぶしい。