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窓と心の温度【創作】

冬の朝、結衣はいつものようにカーテンを開けた。窓の外は、一面の霧。白くぼやけた世界に、街の輪郭は見えない。 

窓ガラスには、指先ほどの曇りがぽつぽつとついていた。それを、ゆっくりと袖でぬぐう。曇りを取った向こう側に、薄く日が差し始めているのが見えた。 

心の中も、こんなふうに曇っていたら拭き取れたらいいのに──ふと、そんなことを思う。 

引っ越してから3か月。隣の部屋の人の顔も知らず、職場では誰とも雑談が弾まない。寂しいと口にするほど弱くはないつもりだったけれど、夜になると、テレビの音だけが部屋に響くのが妙に虚しかった。

結衣は、もう一度窓に目をやった。拭き取られた曇りガラスの向こうに、ベランダの手すりが見えた。そこには、霧の中から現れたように、二羽のスズメが並んで寄り添っていた。

その姿を見たとき、不意に胸の奥がきゅっと締めつけられた。
寒さの中、あんなふうに誰かと身を寄せ合える存在がいることが、ただまぶしく思えた。

私はあんなふうにはなれない──そう思い、視線をそらしかけたが、なぜか目が離せなかった。
孤独に身を寄せ合うようなその姿に、まるで、自分の心が見透かされたような気がしていた。

二羽のスズメは、静かに並んだまま、霧の朝をじっと見つめている。
言葉を交わすこともなく、互いを見つめることもなく、ただそこに「いる」だけ。
それでも、その距離感の中に確かなあたたかさがあるように感じられた。

孤独に閉じ込められているのは、自分ひとりじゃないのかもしれない。

誰もが、それぞれの静かな朝のなかで、目には見えない何かとつながりながら、こうして寒さをやり過ごしているのかもしれない。

そう思ったとき、ふと、雪の上に残された野良猫の足跡が頭に浮かぶ。
朝の郵便受けに触れたとき感じた、投函されたばかりの紙にまだ残るぬくもりも。
昨日、冷蔵庫の奥から見つけたミカンの、思いがけない甘さも。

それらすべてが、たしかに自分を世界へつなぎとめている気がした。

寒さは相変わらずだったけれど、今、胸の奥はほんのりと温かい。

窓ガラスの端に、薄く霜がついていた。
その白い結晶が、朝の光に照らされて、プリズムみたいにきらめいていた。

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財布野紐ゆるみ 書いてる人も偉い。書いてないけど考えてる人も偉い。まぶしい。