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星屑のティアラ【3つのお題に空想のひらめきを第26回】

夜の不思議な秘密基地では、窓の外の月も星も見えず、夢の欠片の影が長く伸びていた。小さな妖精たちは温かい布にくるまりながら、震えている。

少女レイアは、できるだけ平静を装いながら、そっと声をかけた。風の通り抜ける音の他は、今は、何も聞こえない。

「ねえ、ほら、外を見てごらん。小さな光が見えるでしょ?」

妖精たちは身を寄せ合って、不安そうに顔を上げた。積み上げられた昨日の隙間に差し込む、生活の音。レイアは、約束の場所に見えるびいどろの光を指さし、笑顔を散らす。

「これはね、月なの。魔法瓶に映った月が、ここにも輝いているわ。……こぼれ月の魔法瓶には、怖いものから守る小さな魔法が詰まっているの。」

ひとつのへこんだ魔法瓶を手に取る。持ち主は、もうどこにも見当たらない。風と天のひらめきが生んだ、まっさらな光のカーテンが、ちょっとだけ妖精たちの瞳に灯る。レイアはその小さな光を丁寧に集めるように指でなぞり、みんなの頭上に広げた。

そして、ある物語を語り始めた。

「この魔法瓶には、遠いお空からこぼれた星の欠片が入っているの。ほら、光が揺れて、星屑みたいでしょう。」

妖精たちは少し顔をほころばせ、暗い基地の中で小さな希望を見つける。レイアは、紅の羽を持つ時鳥の話もした。ときどき大きな声をあげながら空を飛ぶ赤い鳥は、遠くまで届く幻想的な光を放つ。

──だが、その光は夜空を裂くように鋭く、胸を締めつける響きを帯びていた

まさにその時。

風が静かに通り抜ける音に、赤い鳥の鳴き声が重なった。それは基地の静寂の中で、鮮やかに響く。レイアは、ひとりの妖精の耳をそっと手で覆った。

「見てごらん、あの鳥、紅の羽が夜空で輝いてる。怖くないのよ。とっても素敵。」

妖精たちは小さな声で「きれい」とつぶやいた。レイアの心も、ほんの少しだけ落ち着いた。本当は、怖くて怖くて、仕方がなかった。現実は目の前から消えないけれど、小さなこの幻想の世界に浸ることでしか、もう自分を保つことができなかった。

やがて、秘密基地の外で一瞬の閃光が走った。遠くのお城が揺れ、風に吹かれた木々が影を落とす。レイアはすぐに魔法瓶を抱きしめ、妖精たちに言った。

「ほら……たくさんのお星が、頭上に現れるわよ。」

その言葉に妖精たちは目を見開いたが、レイアの声は震えず、あくまで穏やかだった。彼女は、その恐怖を「魔法の物語」に変えて、妖精たちを守ろうとしていた。外の世界が、どれほど危険であるかを知りながらも。

閃光の後、遠くで果実のはじける音が響いた。基地の壁に小さな光が揺れ、妖精たちは本能的に身をすくめる。レイアはその手を握り、静かに囁く。

「大丈夫……。この煌めきは、私たちを守ってくれるの。」

しかし、現実の恐怖は容赦なく迫る。響くように伝わる振動は、もはや幻想だけではなかった。レイアの心は冷えたが、それでも笑顔を絶やさず、妖精たちに目を合わせた。

ばりばりと響く音が基地の闇を通り抜け、刹那、光の飛沫が辺りを覆う。これはまるで、天から降る星の雨。とっさに、レイアは妖精たちを抱き寄せ、最後の言葉を紡ぐ。

「これで、みんなの夢も守られる。きれいでしょう。きれいでしょう。」

腕に、ぐっと力が入る。光の中心で、赤い羽の鳥が一瞬だけ羽ばたく。レイアの瞳に映るそれは、嘘偽りなく、美しかった。

夢の世界の破壊は静かに広がっていく。瞳から落ちた天使の雫が、ぽろんと優しく音をたてた。

レイアは最後まで幻想を語り切り、基地の床に魔法瓶を転がす。その表面に映る月光は、淡く揺れるだけだった。

ああ! かわいい妖精たち! せめて、あなたたちの花が散るまで、小さな奇跡が消えませんように。

光と影が、細かく混じる。
直後、彼女らの頭上には、星屑のティアラが降り注いでいた。



※以下の企画に参加させていただきました。

🍊第26回 3つのお題
🎈お題①:「星屑のティアラ」
🐾お題②:「紅(くれない)の羽を持つ時鳥(ほととぎす)」
⏳お題③:「こぼれ月の魔法瓶」

片桐 みかん さまの記事より引用


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財布野紐ゆるみ 書いてる人も偉い。書いてないけど考えてる人も偉い。まぶしい。